人生から苦痛をなくすために必要な金額

黒坂岳央です。

昨今、「とにかく稼げりゃ正義!」といった風潮であり、とにかくお金があれば幸せになれると言わんばかりの意見をよく見る。しかし、億万長者になっても天涯孤独で、誰からも必要とされない人生は幸せとはいえないのではないだろうか? 個人的にお金で直接的な幸福をそのまま買うことは難しいと思っている。だが、その一方で苦痛を消し去る力は明確にあると考える。

今回はあまり語られることがない、「人生から苦痛をなくすのに必要な金額」について筆者の視点で考察したい。

AaronAmat/iStock

生きる上で苦痛を感じる要素

人生を生きる上で苦痛を感じる要素はいくつかある。それは何か? を俯瞰したい。

まずは衣・食・住があげられる。ここをうまく管理しなければ、生きていく上で苦痛を感じることになる要素だからだ。まずは衣、夏は涼しく、冬は温かい衣服でなければ苦痛を伴うのは明らかだ。だが最近はユニクロやワークマンなど、高品質なファストファッションが比較的手頃な価格で手に入る時代になったので衣服については巨費を必要としない要素だろう。

次に食。食については過去記事で論考したことがあるが、少食を心がけ生鮮食品を調理することで低コストで高栄養の食事を実現できる。高級食材ばかりを使った食事は逆に糖質、脂質過多になりやすい傾向がある。筆者は若い時期に経済的に貧しかったが、食は充実していたし健康だった。栄養は知識だ。知識があれば食の健康は低コストで調達することができるのだ。

そして住だ。衣食住の中で最も高コストとなる。住居は難易度が高い。職場が東京都心にあるなら、ロケーションと機能性と時間のトレードオフの中で悩むことになるからである。ロケーションに優れた都心は住居で価格を犠牲にして築古物件に住むと狭く、音の問題に直面する。広くて防音に優れた物件は高い。このバランスはかなりテクニカルであり、難しい。

一方で、地方リモートワーカーになれば住居は極端に安くなる。そのため、住居コストは働く場所、会社員・フリーランスなどの立場、職種などによってコストは大幅に変動する。ここでは比較的母数の多い東京都内のサラリーマン一人暮らしを想定すると、住居は最低でも8万円、そこそこの物件では10万円くらいのオーダーになるだろう。

筆者は昔、足立区で築40年以上の物件に住んでいたが、日当たりが悪くてカビが生えやすかったり、壁の中をねずみが走り回るので睡眠も取れなかった。住居にはある程度投資しないとQOLは著しく低下する。

最後に一番大きい苦痛を感じる要素は「人間関係」である。サラリーマン、経営者、フリーランスなど働き方に関わらず、ほとんどの人は仕事をする。そしてどの職種においても、どの年代でも最も多くの悩みが「人間関係」だ。仕事が嫌いでなくても人間関係が悪い理由で退職する人はいるし、その逆に仕事はあまり好きでなくても人間関係が充実しているという理由で、転職せずに留まる人は多い。

つまるところ、仕事で人間関係に苦労しなければ収入を得ることにそれほどの苦痛を伴うことはないし、そうなれば衣食住もなんとかなる。結論、人間関係が人生の苦痛を決める最大のファクターと考えられる。

その他には病苦などもあるが、先天的要素まで考慮すると収集がつかなくなるため、今回はシンプルに生活維持コストだけを取り上げることにする。

人間関係の苦痛を取り払うのに必要な金額

さて、人間関係の苦痛が生きる上での最大の苦痛になり得ると話した。次はこれを取り払うために必要な金額を考えたい。

まず人間関係の苦痛の出どころは仕事や学校関係など、逃げ場がないことがほとんどだ。友達付き合いとか、近所の人間関係に悩んでもその気になれば終わらせることは可能だ。友達なら連絡を切るとか、近所の人間関係は引っ越しすれば解決できる。子供の通う学校とか、自分が学生でクラスメートに嫌なやつがいるという場合でも卒業まで耐えれば逃げ切れる。

だが、仕事となると難しい。会社員の立場で職場に嫌なやつが上司で頻繁にストレスを感じるという場合は最悪である。自分の収入源の生殺与奪を握られており、しかもこちらは基本的に満期がない。だから根本解決が必要になる。

仕事での人間関係の悩みから解放されるには、自分がお客さんや付き合う相手を選べる立場の事業主か、専業の個人投資家、もしくはサラリーマンでも良質な人間関係に恵まれる職場に当たる運が必要だ。

さらにその上で経済的に困窮することがない収入を得ていることである。収入が心許ないと、せっかく自由を求めて事業主になっても、お金のためにクライアントワークや取引先で嫌な相手に我慢をすることになる。そうなれば結局、これまでと状況は変わらないからだ。

結論、東京在住者で独り身なら利益ベースで月50万円とか、家族を抱えているなら月100万円といった数字だろう。「多すぎるのでは?」と反論があるかもしれないが、サラリーマンと事業主は安定性や社会保険負担額などが違うため、立場の違いを考慮しての価格差である。このくらい収入があれば、衣食住もストレスを感じるラインを割ることはない。そしてこの売上は1つの取引先ではなく、分散していることが理想的だ。相手に生殺与奪を握られてしまうと、主従関係が生まれて生きづらくなるからだ。

広くお客さんが分散して、毎月このくらいのコストがあれば仮に付き合うとものすごくストレスを感じてしまうような相手は仕事を断ればいい。その分、売上は減っても気持ちよく付き合える相手と仕事をした方がトータルでは生産性も高まる。結果、自分に合う顧客とだけ仕事をすれば人間関係の苦痛から解放されるのだ。

衣食住が快適で、人間関係に問題を抱えていない。この状態は人生を生きていく上での苦痛がない状態だ。残念ながらこれは「イコール幸せ」という状態とはいえない。あくまで苦痛がないというフラットな状態にすぎない。

幸せを実感するには、自分の仕事が社会的に認められたり、他人から感謝を集めたり、愛する人と時間を過ごしたり、さらに人によってはたまの贅沢を過ごすことで初めて幸せは実感できる。それには自己肯定感を実感できる経験や実績、プラスアルファのコストが必要だ。しかし、とりあえずの苦痛を追い払うことができればそれだけで人生はとても生きやすくなるのは間違いない。まずは人生から苦痛を取り払う、本来の人生はそこから始まるだろう。

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