改善に向かう日韓関係:久々の黄金時代がやってくると予想できる理由

岡本 裕明

日本人の韓国アレルギーは相当なものですが、同じように韓国人の日本アレルギーも相当なものだとされています。一方で年齢層で見れば明白な違いがあります。例えば少し古いですが、2019年の産経新聞の調査では日本から見た韓国への親近感は20代は57.4%に対して60代は31.3%となっています。しかもその頃は日韓関係は政治的にも厳しい中での状況でした。

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このギャップは韓国の酷い日本バッシングと双方の一定年齢の方に強く植え付けられた印象もあり、一旦こびりついたイメージがなかなか改変しないことが原因です。若い人には戦前や戦時中の話である徴用工や慰安婦の問題は聞かされてはいるけれどそれを深堀することはあまりありません。そういう事実があったという歴史の教科書の1ページに留まっています。

韓国では例えば慰安婦像問題の時は若い人が多く「動員」されたのですが、その背景は徹底した反日教育でありました。学校で「日本はこういう国だ、だからよくないのだ」とマインドコントロール的に教え込まれたため、嫌な国だと思い込ませようとしたわけです。ところが、若者の行動はそれと背反することも多く、学校教育を真に受ける人もいるし、臨機応変に対応する人もいるし、日本ファンが多く育ったのも事実です。

また、文化面からはNHKの紅白歌合戦がKポップを押し出しているし、韓国ドラマは未だに中高年の女性には根強い人気があります。韓国人でも南の方に住んでいる方には韓国国内より九州などの方が旅行目的地としてはお手軽で楽しいところと認識されており、好きな人は何十回と日本にきて楽しんでいるし、九州一泊ゴルフ旅行などは我々が温泉一泊旅行に行くぐらいの手軽さとなっています。

産経は「日本映画2作、韓国で大人気 反日映画は不振、その理由は?」と報じ、「The First Slam Dunk」が日本アニメ映画としては2017年の「君の名は」に次ぐ大ヒットで観客動員数は300万人を超えているそうです。実写部門では「今夜、世界からこの恋が消えても」が100万人越えとなり、こちらも大ヒットとなっているようです。この流れは韓国内の世代間ギャップを更に修正させ、「反日」は古い、あるいは日韓関係をもっと冷静になって捉えるという動きが背景にあるようです。

コロナ規制が緩和されつつある今、人の往来も今後、大幅に増えていくはずで私は日韓関係は久々の黄金時代がやってくると予想しています。これは右とか左といった思想の話ではなく、事実としての流れであり、誰も止められないし、時代の移り変わりの中で受け止めるべきものは受け止めざるを得ないと思っています。

産経にはもう一つ、興味深い記事があり、「韓国、日本を格上げ『近しい隣国』 国防白書公表、北の核物質は20キロ増」と報じています。「近しい(ちかしい)」とは「親密な」という意味ですから政治的に日本と接近することを望んでいるとも言えます。半年ぐらい前のこのブログで地政学的に中国の脅威と台湾の将来のリスクを考えれば日本は韓国と手を組まざるを得ない、と申し上げたことがあります。その時も読者の皆様からは厳しいコメントを頂いていますが、ロシア、北朝鮮、中国、そして仮に中国が台湾と協調関係となった場合、日本と韓国は太平洋のはるか向こうのアメリカ以外、三面楚歌になるのです。これは紛れもない事実で国防という点からは好む好まざるにかかわらず、いざという時の下地作りは必要なのであります。

興味深いのは産経と共に右寄りの新聞である読売も「韓国政府、元徴用工側と面会急ぐ…日韓は解決後の『ぶり返し』防止措置も協議か」と報じている点でしょう。産経、読売両紙とも数年前までの報道姿勢から明らかに転じて風の吹き方が変わりつつあることをいち早く報道姿勢に表しています。このきっかけは尹錫悦大統領の韓国国内での反日の封じ込めと日本が懸念している徴用工問題への対応と努力、更には岸田首相のオープンマインドの姿勢が大きく影響しています。また、台湾問題もありますし、ウクライナの置かれている状況に77年も続いた平和な時代の終焉を感じさせたこともあるでしょう。北朝鮮が敵意をあらわにし、ミサイルを見境なく飛ばしていることもあります。

韓国人は日本旅行も日本食も温泉も大好きなのですが、嫌いなものは、と聞けば「日本の政治」と言います。多分、日本人も韓国の文化はさほど嫌じゃないはずでその証拠にKポップに韓国映画、焼き肉は大好きなわけです。(これを言うと日本の焼肉は韓国のそれと別物だと指摘されるかもしれませんが、それは詭弁というものです。)

とすれば両国の政治家が歴史をネタに時の政権のプロパガンダとして利用しているともいえるわけで、特に韓国側にその傾向は非常に強かったわけです。が、コロナ期を経て過去最悪の日韓関係とされた中で「最悪より悪くなることはない」という論理展開なら今後、良くなるしかない、というのが冷静な目線で見た日韓関係ではないかと考えます。

韓国は触りたくないという人は触らないで放置していてよいと思います。ただ、ここは冷静に様子を見て頂く時が来たのではないでしょうか?尹錫悦大統領の独立記念日の演説もある意味、意を決したとも思える内容で評価したいと思います。韓国の姿勢をムービングゴールポストと称しますが、少なくとも今はこっちに寄ってきているとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月2日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。