本も旅も人生もいつかは終わる:沢木耕太郎『天路の旅人』

僕は大学生の頃(いまから35年も前のこと)、初めての海外旅行で香港から広州、西安、ウルムチと蒸気機関車を乗り継ぎ、タクラマカン砂漠の縁をバスで数日かけて中国の西の果ての街カシュガルまで旅行しました。

そして帰国後に「深夜特急」を読んで、沢木耕太郎さんと同じく香港でチョンキンマンションから僕の旅が始まったことに驚き、そして中国の内陸を旅した時のあのバックパック旅行独特の気持ちが蘇ってきたことを思い出し、一気に沢木耕太郎さんのファンになりました。

「深夜特急」は沢木耕太郎さんが自らの旅行で感じた記録だけど、この「天路の旅人」は沢木さんの旅よりも30年近く前の戦中戦後の日本人密偵、西川一三さんとそのご家族、西川一三さんの著作「秘境西域八年の潜行」を発行した出版社の方々を25年にわたってインタビュー・取材して完成されたルポルタージュです。

時代は30年の違いはあるけど、西川さんと同じような旅を経験した沢木さんだからこそ描ける世界観の本だと思います。最終章で沢木さんも「鳥肌が立つような感覚を覚えた」ブッタガヤで沢木さん見かけたブッタが悟りを開いた樹の下で太鼓を叩いていた男は、その30年前に西川さんが見かけた男と同一人物かもしれません。

かなり長編のルポでしたが、久しぶりに読み終えるのがもったいないと思った本です。でも本も旅も人生もいつかは終わる・・・と、今年57歳になる僕は、いつになく感傷的になってしまいました。そして、またふと旅に出たくなってしまいました。