他人に対してもっと無関心になろう

黒坂岳央です。

それなりの期間を生きてきて感じることの一つに、「相手の嫌なところが目に付き、争いが起こるようになるのは、距離が近づきすぎてパーソナルスペースを侵しているから」というものである。

このパターンにほぼ例外を見たことがない。つまるところ、人は近づきすぎる時に争うのだ。この場合の「近づく」とは物理的距離だけでなく、心理的距離も含まれる。快適に生きていくためには、距離はある程度空け、お互いに快適な距離で接するべきである。今はリアルもネットも過密気味であり、息苦しさはここから生まれているのではないだろうか?

もう少しお互いに他人に無関心になった方が、人生は生きやすくなるように思う。

Pict Rider/iStock

芸能人の不倫に怒る人たち

Yahooニュースでコメントランキングを開くと、芸能人の不倫などの不祥事がランクインしていることが多い。自分は昔から芸能人にほぼ興味がなく、誰一人名前も顔も知らないが多くのコメントが寄せられている事実に関心を持ってページを開くことがある。そこには「信じていたのに!」「裏切られた」といった趣旨の書き込みを見ることがある。

気持ちは分からなくもないし、それらの行為を否定するつもりはなく、不祥事を肯定する意図もまったくない。あくまでフラットかつ客観的に言わせてもらうと、「コメント主は一体、相手の何を知って言っているのか?」と思う。

芸能人といってもしょせん同じ人間であり、自分たちとは別個体の存在にすぎない。異なる価値観、主義主張がある。「10年、20年追いかけてます!」みたいな熱狂的なファンがいても、相手の真の理解の1%にも及ばないだろう。

パブリックなふるまいと、プライベートなふるまいは全然違う。公共の場での振る舞いばかりを何十年見ても、相手の真の価値観など絶対に分からないのだ。それなのに「裏切った」といわれては、言われた側は「いやいや、あなたは自分の何を知っているんだ!」と言いたくなってしまうのではないかと思う。

さらに暴露された不倫や薬物使用、暴力沙汰といった不祥事なんて、氷山の一角にすぎないだろう。たまたま運悪く暴露されただけに過ぎず、知られざる爆弾を抱えた人は実際にはたくさんいるはずだ。人間である以上、何が出てきても不思議ではない。あまり神格化しすぎるのも良くないのではないだろうか。

もっと自分の人生に集中しよう

ネットで他人をずっと批判するような人たちからは、すごい熱量を感じることがある。持ち時間を使って相手の出すコンテンツを見た上で、必死に批判の文章を作成することに使う。ある意味、アンチはファンより熱心だ。建設的な提言がなされる時は、親切心からなわけで受け取る側からも感謝の気持ちを持って迎えられるだろう。しかし、大抵の場合は「相手を自分の思い通り動かしたい」「誰からも相手にされない自分に注目してほしい」というエゴによるものである。

批判ばかりする人たちは、もっと自分の人生に集中した方が良い。他人と過去は変えられない。この絶対的真理を動かそうと、他人の過去の行いに怒りというエネルギーを出力するのは明らかなムダだ。そのエネルギーを自分のために使えば、これまでできなかったことができるはずである。

若い頃はまだいい。誰しも好きな歌手や芸能人を追いかけたくなる時期があるだろう。年上はみんな立派な大人に見えてしまうものである。問題はある程度年をとった人がこれをやってしまうケースだ。

限られた余暇時間を他人の批判に使うのは、自分の人生の限りある時間、もとい命を削って決して変えられないものを変えようとしているだけである。つまり、その行為は徹底的にムダで無価値だ。もう自分の人生を生きることを諦めていなければできない行為だが、そういう人も一部存在する可能性は否定できない。

親戚、友達、ビジネスの関係者同士でも近づきすぎるのは毒だと思っている。「無関心なんて、お前は冷たいやつだ!」と勘違いされてしまいそうだが、自分自身は趣味や共通の関心のある話題で気の合う人とワイワイコミュニケーションを取るのは好きだし、コメントを受け取るといつも嬉しいと感じる。気の合う人同士は楽しくやりたい主義だ。

自分がいっているのは「人と一切関わるな」という二元論の極論ではなく、あまりに近づきすぎて息苦しいなら、少し距離を離してはどうか?というものである。他人を見る時間が減れば、必然的に時間は自分のために使うことになる。そうなればよりよい人生を開けて行くことになるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。