防衛大学任官拒否者の卒業式出席に関して

先日大臣会見で、防大の卒業式に任官拒否者をださせない、というのはいじめや差別ではないかと大臣に質しました。その日の夕方の朝日新聞では今年は任官拒否者の卒業式参加が可能となりました。

防衛大臣会見令和5年3月3日(金)における私の質問です。

なぜ午前中の会見で大臣がこのことを知らなかったのか、報道室に問い合わせました。

これを防衛大学校が決定したのは令和5年2月3日(金)だそうです。大臣等への報告は3月3日の会見よりも前には行われていなかった。

そもそも任官辞退者の出席を含む卒業式の内容については、式典を主催する防衛大学校において決定するものである。なお、大臣に対しては、3月26日に実施予定の式典の準備の一環として、適切なタイミングで報告される予定だった。

つまりこの時点では大臣は知らなかった、ということです。

無論、大臣は多くの式典に出席するわけで、すべての式典について知っている必要はないでしょう。ですが防衛費大幅増額という方針が決まっても、隊員が集まらず、入った隊員もすぐにやめてしまう現状があるわけです。いくら予算を増やしても隊員を確保できれば軍拡は砂上の楼閣です。

そして防衛大学校の任官拒否も非常に高いレートで推移しています。

防衛大、自衛官任官辞退でも卒業式への出席可 見せしめ批判から転換

防衛大、自衛官任官辞退でも卒業式への出席可 見せしめ批判から転換:朝日新聞デジタル
 防衛大学校(神奈川県横須賀市)は今月26日に行われる卒業式に、自衛官への任官辞退者が出席することを認めることを決めた。2013~21年度は出席を認めていなかったが、方針を転換する。同校が朝日新聞の取…

「見せしめではないか」との批判もあったが、政府は17年4月に閣議決定した答弁書で、「同校では、同校の設置目的に鑑みて、自衛官への任官の意思のない者を卒業式典に参加させることは適当ではないとの考えから、参加させていない」としていた。

昨年度の任官辞退者は過去2番目に多い72人で、本科卒業生の15%だった。

これは第二次安倍政権が行った、底意地の悪い露骨ないじめといっていいでしょう。このような嫌がらせをやる最高指揮官を頂き、それを当然と思う防衛省、自衛隊という組織にはいっても自分の志を全う的ないと考えた学生も少なからずいたのではないでしょうか。

仮に普通の大学が防衛省や自衛隊に就職が決まった卒業生の卒業式への参加を禁止にしたら安倍政権は差別だと烈火の如く怒ったのではないでしょうか。

防大の任官拒否者の卒業式からの排除の停止は、単に防衛大という学校の式典のプロトコルの問題ではなく、自衛隊の幹部の確保という人事の問題です。そのように防衛大が認識していれば、もっと早く大臣官房に連絡していたでしょう。

そうであれば私の質問や朝日の記事がでる前に大臣が、アナウンスできたはずです。そうすれば防衛省の改革としてアピールでき、また多少なりとも岸田内閣の印象をよくできたのではないでしょうか。

卒業式当時に取ってつけて報道されてもそのような効果は期待できないでしょう。

山下裕貴元陸将(幕僚副長)はTwitterで「中途退職とハラスメントは因果関係は無いと思います」と投稿して、私を含めて多くの人から批判されて、該当ツイートを削除しております。みっともないたらありゃしない。

こういう人物が組織の中枢にいたわけです。そりゃ、いじめやセクハラ、パワハラは減らずに、中途退職者は増えるはずです。そういう情報はSNSで拡散されますから、隊員志願者も減って当然です。

「自衛隊は常に正しい、なにか批判をされるのであれば、内部にしろ外部にしろ、それは批判する奴らがサタンだからだ」とまるで統一協会のようなメンタリティが自衛隊にはあります。

自分たちは無謬だと自己洗脳するわけですから、まともな隊員は退職して当たり前です。今回の任官拒否者の卒業式参加が多少なりともこのような歪んだカルト文化の是正につながればいいと思います。

【本日の市ヶ谷の噂】
防衛省の防大学校(防大に非ず)では、会議でパワハラやセクハラなど首脳部への批判と取れる発言を議事録から抹殺して「消毒」し、あわせて録音も廃棄してパワハラ、セクハラの証拠隠滅に励んている、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。