「職場環境がホワイトすぎて新人が離職するケースがある」という話がちょっと前に話題になりましたが、新人の5割が入社した段階で既に転職を視野に入れているとの調査結果も出てきました。
若手の意識変化のスピードは想像以上ですね!
【参考リンク】就活生調査、半数が転職視野 「終身雇用信頼できず」
一方で既存組織の中からは「いくらなんでも腰が軽すぎる」「そんな新人ばかり採って会社は大丈夫なのか」といったレスも聞こえてきます。
なぜ新人の意識は急激に変わっているのか。そしてそんな新人の変化は今後会社組織にどういう影響をもたらすのか。
いい機会なのでまとめておきましょう。
「年功序列では必要な人材は育たない」という点で企業はほぼ一致している
仮に、企業がいっぱしのビジネスパーソンとして求める人材レベルを10としましょう。
どういうレベルかというと、なにがしかの職種で高い専門性を持ち、その分野で常に最新の情報にアップデートができて、さらなる高みを見据えて研鑽できる人材です。
そして何より重要なのは、それらのアクションを「会社から言われなくても」自分できっちり行えることです。要はプロフェッショナルということですね。
従来の年功序列制度では、せいぜいレベル5か6、下手をすると4くらいの人材しか育成できませんでした。そのレベルの人材は以下のような人達で、年齢で言うと40~50代が中心です。
・処遇に不満はあっても転職する気はない
・新しいことに対してはとりあえず「やらなくていい理由」を探す
・課題を見つけても見て見ないふりをすることが多い
たぶんどこの職場にも該当する人は複数いるはずです。
今の職場で活躍しているわけではない。かといって新しいことに挑戦するでもなく、転職もしない。まさに“煮ても焼いても食えない”とはこういう人達のことですね。
実は今、こうした人材をどう処遇してゆくかが日本企業最大の課題だったりします。
フォローしておくと、別にそうした人たちの資質に問題があったわけではなく、純粋に制度の副産物なんですね。
ジョブローテーションでいくつもの職を担当させつつ、細かい専門性は求めず年功序列で一律に処遇
→ 結果、すり合わせ調整は得意だが特に専門性は無く、本人にもプロの自覚はない
年功序列で自動的に上がるのはおよそ40歳くらいまで(そこから上は要管理職ポスト)
→ 上がり目が無いのだから現状維持が合理的
そういう“レベル5”くらいの中高年をどうリブートしていくかは別にしても、とりあえず企業としては今までのやり方を見直すしかありません。
ではどうするか。年功序列で自動的に上げるのではなく、より付加価値の高い業務をこなす意欲、能力のある人材だけを上にあげていく仕組み、つまりジョブ型へのシフトですね。
これなら現状維持したい人は賃金もずっと現状維持なので企業からしても特に問題ないわけです(本人の人生上は問題かも、ですが)。
そういう観点から見ると、先にあげた“腰の据わっていない新人”はどう映るでしょうか。
「負担の重さより成長重視」しつつ転職も辞さないスタンスは、まさにジョブの時代にフィットしたものなのは明らかでしょう。
「うちの新人たち、普通にそのうち転職するって言ってるんだけど」という会社の人は、会社の採用戦略が順調に進んでいると思って安心してください。
逆に「この会社には入れたことだけで満足です。やりたいことは特に無いですが言われたことは何でもやります」みたいな20世紀風の新人しかいないという人は、会社の10年後を心配したほうがいいですね。
以降、
日本企業がGAFA予備校を卒業するために必要なこと
“離職率”という言葉がもうすぐ死語になるわけ
Q:「転職面談でお金の話をするなという人をどう思いますか?」
→A:「じゃ何の話すればいいんですかね(笑)」
Q:「組合の上部団体に加入するメリットとは?」
→A:「まあまとまって大所帯になった方が要求が通りやすくはなりますね」
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