「政治的公平に関する放送法の解釈について」という総務省の「行政文書」が公開されたが、そこに度々、名前が挙がってくるのが、礒崎陽輔総理補佐官(当時)である。この「行政文書」は平成26年(2014年)11月26日から始まっているのだが、その最初の文章は「磯崎総理補佐官付から放送政策課に電話で連絡」があったというものだ。その連絡内容は「放送法に規定する政治的公平について局長からレクしてほしい」というものであった。
礒崎補佐官は、同文書によると「コメンテーター全員が同じ主張の番組(TBSサンデーモーニング)は偏っているのではないかという問題意識」を持っていたようである。
サンデーモーニングとは、1987年から毎週日曜日に放送されている報道番組だ。司会は関口宏さん。私も同番組を何度も見たことがあるが、確かに、同じような思想的傾向の人をコメンテーターに呼んで、喋らせるイメージが強い。
礒崎補佐官は「サンデーモーニングは番組の路線と合わないゲストを呼ばない。 あんなのが(番組として)成り立つのはおかしい」「古館は番組(筆者註・報道ステーション)には出演させる。総理が呼ばれれば総理はけんかするだろう。その意味でもサンデーモーニングは構造的におかしいのではないかということ」(行政文書・平成27年3月6日)と立腹しているのだが、しかし、私はそうした番組があること自体、全然良いと思っている。
例えば、保守系の番組にしても、保守系の言論人ばかりを呼んで喋らせるということも、これまであったはずだ。私はそれも大いに結構だと考えている(礒崎補佐官の考え方を厳格に適用するならば、そうした番組もけしからんという話になってしまうのではないか。しかし、補佐官はそのことに付いては触れていない)。
もちろん、異なる見解の持ち主を呼んで、議論を闘わせる番組もあっても良いし、そちらの方が本当は面白いだろう。それはさておき「行政文書」によると礒崎補佐官は「(究極は)けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」(同前)と述べたというが、私はそのような考え方には反対である。
礒崎補佐官の言う「けしからん番組」とは、単に政権批判をしているから「けしからん」と主張しているように聞こえるからだ。コメンテーター全員が同じ主張の番組は、政権批判をしようがしまいが、保守系でもリベラル系でも「けしからん番組だ。取り締まるべき」というなら、まだ話の筋が通るのだが・・・。
とにかく私は「けしからん番組は取り締まる」という考え方自体に反対である。