アフターコロナにおける地域経済・地域活動の活力向上

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コロナによる在宅率の増加、低下する地域力、この二つを好循環モデルとして結び付けられるのではないかと仮説を立てました。

以下の図は、私が考えるアフターコロナの地域経済・コミュニティの好循環モデルです。

詳細については後述させていただきます。

図 アフターコロナの地域経済・コミュニティの好循環モデル

新型コロナウイル感染症の発生から3年余りが経ち、政府は新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類を5月8日から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げると決めました。

コロナ禍で日常の生活状況が大きく変化し、在宅勤務、リモートワークが普及しました。

私が区議会議員を務める中野に関していえば、昼間人口が増加したため、この現象をしっかりと分析し、地域活性のために活かすべきと考えます。

まず事実として、JR東日本公表の中野駅の1日の平均乗車人員は、新型コロナウイルス発生前の2019年度において15万907人が、コロナ発生後の2020年度は10万3,284人、2021年度は10万8,524人となりました。

また東京メトロ公表の中野駅の1日の平均乗降人員は、2019年度は16万3,466人、2020年度は、10万9,528人、2021年度は11万3,089人となり、3分の1程度乗降人員が減少しました。

また「特別区たばこ税」のコロナ前後の2019年度と2020年度で比較すると、東京都23区全体で90.6%と減少する中、都心の自治体では、千代田区67.4%、中央区74.6%、港区74.8%、新宿区84.7%と激減となりました。

しかし中野区においては99.6%でほぼ変わらず、全体が減少する中では相対的に増加しております。

つまり都心に出勤する人が減り、中野区内における昼間人口が増えている証左です。

在宅時間の増加により、自宅とその周辺の飲食店における飲食がコロナ前より増えている可能性があります。

株式会社リクルートの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」は、コロナ禍前後における「なじみの外食店」について、数や立地の変化、業態ごとの割合等についてアンケートを実施しました。

コロナ禍前後「なじみの外食店」の変化に関する消費者調査 | ホットペッパーグルメ外食総研「すべての人に、食で笑顔を。」
コロナ禍で「なじみの外食店」が減った人37.6%。「外出・外食控え」が最大要因。新たにできた「なじみの外食店」の立地は「自宅や最寄り駅周辺」が圧倒的多数。■調査時期:2021年8月2日(月)~2021年8月11日(水)■調査対象:首都圏・関西圏・東海圏在住の20~69歳の男女(株式会社マクロミルの登録モニター)■有効回...

1万2,305件にランダムでメール配信し、9,564件回収した「なじみの外食店」についてのアンケートで、コロナ以降、新たな「なじみの外食店」ができた人は57.5%、新たにできた「なじみの外食店」の立地は「自宅や最寄り駅の周辺」が74.8%という結果が示されております。

令和4年度、中野区はPayPayを活用した生活応援事業、ポイント還元事業を2回行ったところ、大手チェーン店等を除く区内中小加盟店を対象とした第1回目において利用が多かった業種は1位「飲食店・喫茶店」、2位「居酒屋・パブ・バー」、3位「理容・美容」となりました。

また、コンビニエンスストアを除く大手チェーン店等も対象とした第2回目の実施においては、1位「食品スーパー」、2位「飲食店・喫茶店」、3位「医薬品・化粧品・ドラックストア」でした。

事業を行えば確実に地域の飲食店に効果をもたらします。

一方、町会・自治会などの地域活動はコロナ禍においても少しずつ復活したとはいえ、4年ぶりの本格実施が見込まれる来年度、高齢化が進む地域活動において、例えば祭礼の神輿が挙げられるのかなど非常に不安な状況であります。

向こう三軒両隣といった時代から、生活様式の多様化により、ご近所づきあいが面倒くさいという方が特に若い方々に増えつつあります。

しかし災害時に町会・自治会はその中心となります。中野区も例外ではなく、中野区地域防災計画の「地域の防災行動力の向上」の方向性として、「地域防災会を中心とした共助の取組みの推進地震による被害を軽減し、その後の救援活動を実施していくためには、発災直後から地域住民が主体となって「自分たちのまちは自分たちで守る」活動を展開していくことが必要である。特に、初期消火や発災直後からの72時間以内の救助活動等では、共助の取組みが重要であることから、区では、「地域防災会を中心とした、地域一体となった共助の取組みを推進し地域の防災行動力の向上を図る」とされております。

地域防災会は基本的には町会・自治会からなる組織です。

私は2019年の台風15号で被災した館山市に災害ボランティアとして伺い、電気が通らず、役所の職員が膨大な業務で身動きが取れない無政府状態の中、住民の生活の復旧、復興の指揮を執っていたのは、いわゆる町会・自治体でした。

台風19号襲来の前に ~ 15号に伴う館山市災害ボランティア所感

台風19号襲来の前に ~ 15号に伴う館山市災害ボランティア所感
(台風19号の襲来が予測され、先の台風被害の報告をすることで何かの一助になればと筆を執りました。) 9月8日からの台風15号の影響で、中野区との連携自治体「千葉県館山市」は甚大なる被害を受けた。 中野区の支援としては、9月13日...

日頃からの町会・自治会による地域活動が災害時に大きな寄与をします。

そして話を冒頭に戻しますが、コロナによる在宅率の増加、低下する地域力を好循環モデルとして結び付ける試みがあってもいいのではと仮説を立てました。

図 アフターコロナの地域経済・コミュニティの好循環モデル(再掲)

左上の「コロナによる在宅勤務・早期帰宅の増加」により、地元飲食店に行く機会と自宅における飲食の機会が増えます。

それに伴い地域商店街の売り上げも上昇する可能性があります。

この地域経済における好循環の流れを地域コミュニティにも拡大できれば、コロナによって低下した地域力の復活、むしろコロナ以前よりも活気が出せるのではないかと考えます。

ここでポイントは地元飲食店に地元の方々の出会いの場を創出してもらうことです。

飲食店の協力により、地元同士の人付き合いを増加させ、地域・町会の活力向上までをターゲットにします。

ここで飲食店にやる気を出してもらうためにインセンティブが必要となります。

図の中で太い矢印で示すのは地域ペイ活用が考えられる接点です。

地域ペイというのは例えば中野区内でしか使えないキャッシュレス決済アプリをイメージしております。

現在、渋谷区「ハチペイ」世田谷区「せたがやPay」などの事例があります。

そして太い矢印のところには区からの支援として補助金が充てるべきです。

地域の活動と地元商店街の売り上げを連動させる仕組みとしてのアプリと、その後押しのための補助金制度を創設します。

地域の飲食店にポイント還元事業で誘導できれば、在宅ワークの方々が、今まで接触がなかった地域の方々と飲食店を中心につながり、広がっていく可能性があります。

私の経験ですが、昔、職場の人と飲みに行って、「会社をやめたい」というと、会社全体のことを考える同僚・上司は「今が踏ん張りどころだよ」というわけで、苦しい状況から全く抜け出せないことがありました。

しかし地域コミュニティで飲める環境を得たとき「そんなに辛いなら、やめちゃえ」といわれ、一気に選択肢が増えた気がして気が楽になったことを覚えております。

仕事と関係ない人との交流は、孤独・孤立を防ぐために必要な環境のひとつと考えます。

自治体はコロナ禍をネガティブだけに捉えるのではなく、新たなフェイズに入れるチャンスと捉え、挑戦をすべきタイミングであると考えます。