6万人いるとされている若者の犯罪組織
中米のエルサルバドルの狂暴な若者の犯罪組織の組員が次々とラテンアメリカで最大規模の新しい刑務所に移されている。今年2月に組員2000人、3月にも2000人が首都サンサルバドルから70キロ余り離れたところに建設された新しい刑務所に移された。この新しい刑務所にこの犯罪組織の組員4万人を収監させる予定になっているという。
現在まで既に6万人以上の組員が従来の刑務所に収監されている。この犯罪組織は若者によって構成されており、体の全身に入れ墨を入れ、頭は丸坊主のように剃っているのが特徴だ。
3つのグループに分かれている
この組織には3つのグループが存在している。「マラ・サルバトゥルチャ(MS13)」、「バリオ18・レボルシオナリオス(B18)」、「バリオ18・スレーニョス(B18)」の3つだ。彼らはおよそ10万人いると推測されている。そして彼らに協力している市民がおよそ100万人。人口750万人のエルサルバドルで平和に暮らしたい市民の脅威になっているのはこの数字だけ見ても一目瞭然だ。
この犯罪組織が誕生したのは米国だ。内戦下にあった中米3カ国エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラから米国に難民として受け入れたのがこの組織が生まれた要因となった。彼ら難民の家庭は貧困で米国社会でも差別的な境遇に置かれていた。
そのような環境の中で育った若者は自分たちを米国の差別社会から守るために団結し始めたのである。そして彼らが幼少の頃に内戦で見たゲリラ兵の残虐行為を実際に彼らが真似るようになったというわけである。それは1960年代後半から発生した。それに手を焼いた米国は1990年代後半に彼らの出身国に送還することにしたのである。
その中心になった国がエルサルバドルであった。MS13が最初に出来て、それに対抗する意味でB18が誕生。そしてB18はその後2つのグループに分かれた。
政府は犯罪組織と裏交渉で市街の犯罪を減少させた
2019年から大統領に就任したブケレ氏はこの犯罪組織による犯罪を撲滅させることを選挙スローガンに挙げていた。そして彼が次第に政権を掌握して行くにつれてその実行に動いたのである。ブケレ大統領が行ったのはこの犯罪組織との裏交渉であった。彼らが犯罪行為を減らす代わりに、刑務所で彼らを優遇する策を取ったのである。
例えば、刑務所にいる彼らの幹部が携帯電話で外で活動している部下に容易に指示ができるようにさせたのである。当初はこの携帯電話の使用も徹底して取り締まっていた。米国から送還要請を受けている幹部らの送還を政府が阻止することも条件とした。また、犯罪グループ別に独房を割り当てた。当初は同じ独房に異なったグループが雑居していた。そうなると、ライバル同士で秘密が容易に暴露されるようになるということで、グループごとに独房を分けるように彼らが要求したのである。
このようにして、政府は市街における彼らの恐喝や殺人を減少させることに成功した。ところが、独裁色が次第に強くなっていくブケレ大統領が彼らへの取り締まりをより厳しくするために逮捕の対象を16歳から12歳に下げると言ったことを法制化させた。
12歳と言えばまだ子供である。刑務所での彼らは家族とはまったく交信も出来なくさせたり、拷問を強化するといった手段が取られている。それに対して彼らの家族が不満を表明。ヒューマン・ライツ・ウォッチも彼らが犯罪者であるとはいえ人権を無視した政府の活動を訴えるようになった。実際、昨年3月から8月までに32人の囚人が刑務所内で死亡しているというのだ。(2023年3月16日付「エル・パイス」参照)。
刑務所には6万人が収容されている
現在までエルサルバドルの刑務所には6万人の彼ら犯罪組織の部員が収監されているという。その内の4000人が新しい刑務所に移されたことになる。これからさらにその数は増えて行くことになる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチからの批判を受けても、実際に犯罪件数が減少してことからブケレ大統領への支持率は70%台にある。
囚人の家族には政府から毎月170ドルの支払いが要求されている。これは食事、衣類、衛生、清掃、雑貨などの費用が集計されたものである。(2023年2月25西付「インフォバエ」から引用)。