ChatGPTに奪われない仕事とスキル

黒坂岳央です。

ChatGPTをはじめ、AIの進化がすさまじすぎてあちこちで歓喜と絶望の悲鳴が起きている。使い方を工夫することで、これまで人力でやっていた業務の多くをAIが代替できることが分かってきたからだ。

筆者もすでに、これまでクラウドソーシングサイト経由で制作を依頼していたExcelのマクロ制作やHTMLやCSSの制作はAIにしてもらうようになるなど、業務によってはアウトソーシングをやめた。コスト節約になるという以上に、AIの方がトータルで仕事が速いためだ。ChatGPTはじめ、AIの進歩で仕事に打撃を受けるのは肉体労働者ではなく、どうやらホワイトカラーの方だということがわかってきて、「技術職をやっている自分は大丈夫か?」と不安になっている人も多いかと思う。

あくまでコンピューターサイエンスの門外漢の筆者の視点で、思うところを書いてみたい。

Ekkasit919/iStock

作業レベルの仕事の生き残りは難しい

正直、作業レベルで仕事をこなす人は今後の生き残りはかなり厳しいかもしれない。端的にいえば、派遣や契約社員として任せられることが多い、事務職などがこれにあたる。

たとえばコールセンターの受信スタッフは、長期的に見てAIに代替される可能性は高い。100以上の言語に対応したビジネス用音声アシスタントのPolyAIを用いた動画が公開されている。これを見る限り、すでにかなりのレベルに到達している。

自分自身が昔はコールセンターに勤務していたのでよく理解できるが、コールセンターは途方もないコストセンターであり規模が大きくなればなるほどそれは顕著だ。企業側もAIに任せられるなら喜んでそうするだろう。企業のコストインセンティブを考えると、コールセンターのAI化の流れは時間の問題でしかない。

また、ビジネスミーティングにおける議事録作成や、簡単なビジネス文書や資料作成もAIが代替するだろう。MicrosoftのOfficeは近く、AIが導入されることでこれまでは人力で作成していた資料も担当してくれる。昨今は動画編集が活況だが、AI化のメスが入るかもしれない。

こうしたAIの進歩の流れは確実に雇用に影響する。自分自身がアウトソーシングをする上ですでに大きな変化の肌感覚がある。今後、長い目で見て作業者レベルの事務職は厳しくなると考え、AIによる代替が難しい仕事を考える必要性に迫られるのではないだろうか。

AIに仕事を奪われない技術職

その一方で、AIに仕事を奪われない技術職もあると思っている。技術職の中には、プログラミングや英語の通訳・翻訳がある。こうした技術職についている人の中には「AIに奪い取られるなら、この分野を選んだのは間違いだった」と後悔する声も見られるが、あまり悲観する必要はないと思っている。その理由を述べたい。

まず、技術職については高度なものであればあるほど、すぐさまAIに奪い取られるリスクは低いと考える。なぜなら現時点でAIは相当に高い水準に達しているとはいえ、どうしても間違いや人間でなければ真偽を判断できない部分は必ず残るからだ。英語の翻訳や通訳についても、数多く検証してみたが確かに90%は正しくても残りの10%未満の誤りや修正は絶対に残る。それは内容の専門性が高まれば顕著だ。

英語の翻訳やプログラミングについていえば、90%はAIに任せられても残りの10%の手直しは人間でやるべきだし、その判断にこそ人がやる必然性と付加価値になる。簡単な話、高い英語力や異文化理解力、全体を通じての文脈理解や適切なワーディングチョイスができる国語力がなければ、翻訳の仕事の完成度を90%から100%へと引き上げることは不可能だからである。

翻訳について言えば、デバイスの取扱説明書はAI翻訳で対応できても、異文化理解力が必要な文学作品やアニメ、ゲームの翻訳はしばらくは難しいだろう。プログラミングも同様で、プログラマーでなければ最終形への完成度へ高めることもできない。

AIに仕事を奪われないためには、専門スキルを高めることである。少なくともしばらくの間はAIの完成度は最大でも99%までしか高められないだろう。残り1%の穴を埋められる力量の技術者を目指すべきなのだ。

AIに仕事を奪われるかどうかは人生戦略に直結するので、戦々恐々としてしまう話題だろう。だが、世の中すべての仕事がAI化されてしまうわけではない。重要なのは冷静にそれを見極め、人間にしかできない仕事を意識して必要なスキルを磨くことではないだろうか。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。