日本の卵が海外でヒット!6個1000円で売れる理由

黒坂岳央です。

「Unique in the world, Japanese eggs can be eaten raw(世界でも珍しく、日本の卵は生で食べられます)」

日本畜産物輸出促進協議会のサイトに掲載されている一文である。我々、日本人にとっては当たり前のことでも海外ではGreat! と受け入れられるものの1つが「卵」だ。

朝日新聞の記事によると、日本の卵が海外で人気を博しており、6個1000円でも良く売れているのだという。シンガポールの経済力の象徴の一つ、マリーナベイ・サンズ内のミシュラン二つ星レストランなどからも指名買いをされ、輸出額は10年で5倍に増えたとされる。

先日書いた卵業者へ値上げを叩く人達に伝えたいことの記事では、国産の卵が危機的状況に陥っている内容を取り上げた。今回は、海外で成功している事例である。日本の卵を取り巻く状況は大きく変化している。

simarik/iStock

日本の卵は何がスゴイのか?

日本の卵は海外では評価が高い。同記事内では、「殻付き鶏卵の輸出量は昨年は3万トンで前年比で4割増加、8年前比較で20倍」とある。輸出先は香港やシンガポールなど近隣アジアが中心だ。そのわかりやすい特異性の1つが「生で食べられる」ということだろう。

アメリカやニュージーランドでは生卵は積極的に推奨されていない。USDA(アメリカ合衆国農務省)では「Do not recommend that people eat raw, unpasteurized eggs, but state that people can eat in-shell pasteurized eggs without cooking them.(生食は推奨しないが、殻付き低温殺菌卵は加熱せずに食べられる)」と条件付きのOKを出している。

だが、日本では生卵を食す時にイチイチ買ってきた卵の状態を確認する人はほとんどいない。賞味期限内なら誰しも気にせず卵かけご飯を楽しむのが普通である。だが、この「普通」が海外では「Great」ということで、この輸出増加につながっているのだろう。

海外輸出で卵は品薄、割高になる?

しかし、この報道に対してSNSでの反響はイマイチだ。昨今、卵の高騰で消費者の反応が悪い中で出たニュースのため、「海外でビジネスの旨味があるなら、卵は国内でより割高になるのでは?」「品薄が心配」といった声も見られるからだ。

結論から言えば、直ちにそうなってしまう心配はないと考える。理由として潤沢な流通量があげられるだろう。現時点で日本の卵における深刻な供給不足には陥っておらず、一部海外で売れても国内で不足する事態にはならない。だが、長期的に今の状況が変われば話は別だ。

お隣台湾では、Forcus TaiwanではEgg prices in Taiwan to rise again as shortage continues(台湾で卵の価格が再び上昇、品薄状態が続く)というタイトルで卵危機についての記事が出ている。その原因は多面的であり、high number of molting hens, avian flu epidemics, and higher costs associated with feed(脱皮鶏の多発、鳥インフルエンザの流行、飼料コストアップなど)としており、中には行列を作って卵を買い付ける家庭もあるようだ。

個人的には日本の卵がヒットすることは喜ばしいことだと思っている。日本の食は日本人が考えている以上にグローバルではハイクオリティであり、国際的なプレゼンス及び国内経済の活性化に一役買ってくれるだろう。

問題は日本の高級フルーツのように種子が不当に流出し、勝手に海外で栽培されてしまうような事態が起きてしまうことだ。日本人が長年に渡って育ててきた畜産の種やノウハウはしっかり守っていかなければいけないだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。