なぜ金融資産だけで資産形成しようとするのか?

SvetaZi/iStock

資産運用に興味を持つ人が増えてきています。自分が稼ぐだけでは安定した収入を確保できず、将来に不安を持っている人が増えているからだと思います。また、インフレ懸念が高まって、預貯金では実質的な資産価値が目減りすることも要因です。

不思議なのは、日本経済新聞を始めとする投資情報を提供している国内メディアで報じられる投資対象は株式、投資信託、FXといった金融資産が圧倒的で、不動産やそれ以外の実物資産が取り上げられることは稀なことです。

実は私自身も10年ほど前までは実物資産に投資をしたことはありませんでした。9年前に生まれて初めてお金を借りて、国内不動産を購入する「人体実験」を始めて実感したのは、金融資産と実物資産を組み合わせて投資することの有効性でした。

国内不動産はお金を借りることによって、少ない自己資本で投資が可能です。自分の信用力を活用して低金利で資金調達できれば、賃貸利回りとの金利差から収益を得ることができます(写真は私の保有する神楽坂の投資物件)。

また、ローンの返済が終われば、毎月の安定した家賃収入(インカムゲイン)が得られます。低金利下で金融商品からは家賃のような高い定期収入は得られません。株式の配当も企業業績に左右されるリスクがあります。

更に減価償却を利用した節税メリットも存在します。

金融商品よりも流動性は劣り、取引コストは高くなりますが、それを補って余りある上記のようなメリットも存在するのです。

にもかかわらず、なぜ国内不動産投資はあまり取り上げられることが無いのか?その理由について仮説を立ててみました。

【仮説1】「借金=悪」という固定観念がある
国内不動産はお金を借りて投資をするのが通常です。この借金に対するネガティブな感情が原因かもしれません。私は、消費のための借金はすべきではないと思いますが、投資のための借金はインフレ対策にもなりますから、むしろポジティブです。

【仮説2】実物資産のことをよく知らない
国内不動産投資は、金融資産とは随分異なります。価格や品質にバラツキがあって「歪み」があることから「誰から買うか」が重要になります。また、ローンのアレンジも金融資産には無い要素になります。このような実物資産の知識や情報が、実際に投資をしていない人たちには充分に知られていないのが現状です。

また不動産を取り扱っている人たちは「業者」と呼ばれ、金融機関の担当者よりも胡散臭く見られ、イメージがあまりよくないという偏見もあります。

【仮説3】投資家層が狭い
実物資産の中でもお金を借りて購入する国内不動産は、投資できる人が限られています。年収が低かったり、安定した仕事をしていない人は「お金を借りる力」が無いので借り入れができないのです。金融資産よりも投資家の数が少なく、マス媒体で取り上げにくいという制約が存在します。

いずれの理由にしても、日本の個人投資家はもっと実物資産、その中でも国内不動産への投資の情報収集をすべきです。

資産デザイン研究所では、個人投資家向コミュニティ「資産設計実践会」を通じ、実物資産のインナーサークル情報を提供しています。

また、リスクの抑えられた不動産投資として、都心中古ワンルームマンションの投資セミナーも定期的に開催しています(次回のセミナー開催は4月6日です)。

これからも地道に実物資産投資の普及活動を続けていこうと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年3月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。