統一地方選の論点①:この「まち」は消滅するの?

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統一地方選が始まった。皆さんの周りにいる市議、町議、市長、町長、都議、県議、知事などなど選挙がおこなわれる。この選挙、国政と違って政党の勝ち負けの問題ではなく、民主主義の学校である「地域」で自分の代理人をどう選ぶかが問われる。

数回にわたって公共政策と人事評価の専門家として問題提起をしていきたいが、まず何が問われるべきかを正しく理解する必要がある。そもそも地方自治とは何かを「構造」として概観しよう。

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簡単に言うと、皆さんの税金(国を通してくるものも)を使用して、都道府県庁、市役所、町役場、村役場が職員に働いてもらって、住民向けの行政サービスを提供しているというわけだ。それをマネジメントする人、我々の代理人を選ぶことが選挙の目的。

行政のおかげで、図書館に通えたり、道路で安全に歩けたり、公立学校や保育園・幼稚園などでおいしい給食を味わえたり、しっかり学ぶことができたり、教育の場で活動を通じて成長していく機会を我々は得られる。

ゴミを出しても、排泄物を出しても、ゴミ収集や下水道がしっかりしているので、対応してもらえるし、清潔な街が保たれる。そして、おいしい水を飲める。年金がもらえたり、困った時は生活保護をうけたり、生活を支えてもらえる。

地域社会にルールを設定し、規制してくれているおかげで隣の家がいきなり高層マンションになることはそうそうない。時には、地域を盛り上げるイベントを開催したり、商業のために地元業者に補助金を出したりもする。色々な声を吸い上げ、政府と交渉したり・・・・簡単に言えば、そんなことをしている。

「安心安全安定」な地域社会を支えている行政に対して、まずは選挙の前に感謝したほうがよさそうだ。

日本経済・社会における地域

さて、失われた30年の日本経済である。1人あたりGDP、平均賃金、労働生産性、色々な数字が示すように日本はOECDの中でも優れた国とは言えなくなった。企業の競争力もかなりお寒い状況である。

人的資本だけをまとめていても(以下図)、平均賃金や労働生産性は低く、仕事への満足度も低く、仕事にやりがいも感じられず、キャリアも見いだせなく、だから、学ぼうとしない。結果として相対的に幸福度が低いという現状である。

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その影響は地域にも様々な形で現れている。関東圏や関西圏の一部、県庁所在地や企業城下町などは比較的良いといってもいい経済状況だが、それ以外は「地域経済衰退」「急激な人口減少」の真っただ中であり、経済予測は暗い見通しが充満する。そもそも若者にとってマッチする魅力的な仕事がみつかりにくいので転出超過の波は止まらない。

その意味で、地方の問題は仕事づくりにつきるだろう。経済がうまくいかないと全てに影響が出る。「事業仕分け」やら税金をどこに使うかについての「再配分の問題」はあくまで調整、交渉、妥協、合意、納得の問題である。

税金を配分する中で、誰かが得をしたり、誰かが損をしたりする「政治」。しかし、経済問題は政治の前提であり、うまくいかないと共通して「損」をする。

経済政策・予算の使い方

それでは、主権者としてはどういった行動を取るべきか。候補者に、まずは質問しよう。

自分たちのまちはどうなるのでしょうか?本当に消滅するのですか?
役所や役場はその中で何ができるのですか?
抱えている問題はなんでしょうか?
私のような人にとってどういったサービスが提供されるのでしょうか?
税金で無駄遣いや利益団体や特定の既得権益者に払われたりしているのでは?
税金の使い道は公平ですか?

これくらい聞きましょう。人口減少で消滅するかもしれない(と言われている)自分の「まち」の未来について考えてなくても、自分の関心がある身近なテーマについて質問してみよう。議員候補はしっかり回答する責任がありますから。

地方自治は奥深いものなのだ。裁量性が少ないという批判もあるが、それは地方分権が進んでいないから。京都府が空き家税を提案したり、逆に名古屋市のように減税をすることも可能である。デジタル田園都市国家構想や地方創生など国からの交付金もあるし、やりようはある。

その前に主権者が問うべきなのは首長・議員候補の考え方である。今後、短期連載で統一地方選の論点を提起していく。