黒坂岳央です。
The EconomistにOn average, men can expect to spend 20 years kicking backという記事が掲載された。フランスのマクロン氏が「62歳から64歳へ」年金受給開始年齢の引き上げを決定したことが怒りを引き起こしたのだ。同記事によると、1970年から2020年で退職年齢での平均余命年数が各国でどれだけ引退後の生活が伸びたか?を取り上げている。中でもフランスとスペインが大きく伸びている事がわかる。
1970年代にはすでに55歳が定年で60歳へと延長が議論されており、2025年から65歳が定年へと延長される。過去50年間で10年ほど働く期間は長期化したが、世界的に見て定年後の人生はそれよりはるかに伸びた。伸び続ける引退後の生活はどうすればいいか?
定年のある仕事、ない仕事
現在はあまりにも変化が早い時代のため、この予測は筆者が定年を迎える年代では大きくヒックリ返っている可能性は高い。そのため、あくまでChatGPTなどの先端AIテクノロジーによる影響を抜いた予測に過ぎないが、世の中には定年のある仕事、ない仕事がある。これで大きく引退後の生活は分かれることにあるだろう。
定年のある仕事の筆頭はサラリーマンである。本人に強く働きたい意欲があっても、サラリーマンは終わりが決まっている。さらに「その人でなければ務まらない仕事」はサラリーマンの世界にはない。むしろ経営者は属人化しないオペレーションの構築と安定化がミッションであるため、代わりは常にいるという前提になる。再就職などを考慮すると、65歳で仕事は終わる。その後はアルバイトや単発の仕事もなくはないが、フルタイムは難しい。
そして定年のない仕事は経営者や個人事業主である。会社経営者は比較的やりやすい。年齢的に難しくなった仕事は社員や外注で済ませ、自分は年をとってもできることに集中すれば70代、80代でも現役でやっている人はいくらでもいる。個人事業主の場合は農家や酪農、その他ライターやデザイナー、漫画家などクリエイティブや高度専門職があげられる。
ブルーカラー系は難しい。筆者は地方に住んでおり、実際に高齢の野菜や果物の生産者を多数知っているが、年齢的に無理が来て引退を余儀なくされたり、不運にも事故にあってしまうことがある。デスクワーカーならスキルの需要がある限り、ずっと働き続けることができる。もちろん、経済状況が許す場合で仕事をしたくなければやめてしまえばいい。
まずは引退後に働けるか?働けないか?を考えた上で長い人生戦略を構築する必要があるだろう。一生働きたい人は、早めにその備えが必要だ。
仕事の引退後の生活は長い
そして考えておかないといけないのは、仕事の引退後生活は想像以上にとても長いということだ。
日本人の平均寿命は84.62歳(2020年)、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)なので、リタイア後の生活は大体10年ちょっとから20年くらいの計算になる。若い頃と違って、この10年、20年は体にがたが来ている上に、貯金も絶対に枯渇させることが許されないシビアなものだ。
そのため、ファイナンシャルリテラシーに優れた人物でなければ、老後は結構厳しい。日本人は死ぬ直前、人生史上最もお金持ちになる人が少なくない。長い引退生活で実入りがなければどうしても精神的に困窮、閉塞感がある。
仕事を続ける
引退後の長すぎる生活をどうするか?を早めに考えておくべきだ。社会とのつながりがなくなれば、人は一気に老け込む。筆者の知っている人で、仕事をやめて家でテレビの番人をスタートさせたら、ほんの数年で一気に痴呆行動が噴出したという人は何人も知っている。
生きがいとボケ防止のためには仕事を勧めたい。ある高齢女性は定年退職後、英語を勉強して近所の子供に英語を教えるようになったら、ものすごく人生が輝き始めたといっていた。お金も貰えているが、それ以上に子供や親が喜び、感謝の言葉をもらえるのが嬉しくて毎回喜んでもらおうと必死に準備をするといっていた。とても理想的だろう。
もちろん、人生は仕事だけではないから夢中になれる趣味があるならそれをやればいい。ただ、過去記事で何度もいってきたことだが、人間の最大の敵は「退屈」であり、受動的な娯楽はあっという間に飽きる。どれだけ好きな作品があっても、寿命を迎えるまで必死に追い続けられる熱情家は見たことがない。
感情を動かすには、やはり仕事を通じて社会とつながるか?もしくはリスクを取るのが一番いい。引退後に投資で資金を溶かすわけにはいかないので、そうなるとやはり仕事で誰かを喜ばせるのが一番健全で確実だろう。
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定年後の人生はこれからもっと長くなる。日本人だけの課題ではない。世界全体で起きている現象だ。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」というガンジーの言葉を今こそ思い出す時だろう。
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