黒坂岳央です。
「アメリカやヨーロッパはとっくにコロナ騒動は過去のもの。日本はいつまでマスクをしているのか?」SNSではこうした意見をよく見る。日本のマスコミも「マスク着用率」を騒々しく取り上げ「マスク着用は個人の裁量になったのに皆さん全然外しません!」とばかりに煽ってくる。あたかも海外が素晴らしく、日本だけが世界からポツンと取り残されていると言わんばかりの報道だ。
だが、印象と事実は往々にして異なる。コロナ騒動についても同じことが言えるかもしれない。
New York Timesでは「The School Where the Pandemic Never Ended(パンデミックが終わらない学校)」という記事が取り上げられている。アメリカ・ロサンゼルスの学校でコロナに苦しむ人の実態が取り上げられている。
At this elementary school in LA, 94% of students live in poverty; many parents work essential jobs and suffer from chronic illness. As other schools "return to normal," teachers here are left to manage their students’ grief — and their own. https://t.co/KIIKqJIJPr
— The New York Times (@nytimes) April 8, 2023
未だ終わらないパンデミックの爪痕
記事の冒頭は「2023年時点でほとんどの人はコロナパンデミックは過去のもの(thing of the past)という扱いになった」という出だしで始まる。アメリカの学校は次々と日常へと戻っていく。だが全部ではない。ロサンゼルスのある学校では、生徒の94%が貧困に苦しみながら生活を送っており、その両親はエッセンシャルワーカー職についている。
多くの子の親はまだまだコロナの脅威に苦しんでおり、「我が子は学校でちゃんとマスクの着用をしているか?」と教師に確認する。コロナで亡くなった痛みに耐えながら、「コロナはまだまだ恐ろしい」と警戒を解けないでいる様子が描かれている。「アメリカではもう誰もマスクはしていない。日本だけが同調圧力で続けている」という人を見るが、実態はこうである。
アメリカ人は3億人の人口を抱えており、様々な住環境、経済環境や事情があり、決してアメリカ人全員がパワフルにパンデミックを克服したわけではないということが分かる記事だと感じた。
あまりにも異なるコロナへの認識
これは日本に住んでいても感じることだ。筆者は先日、長男の入学式に参加してきた。子供たちはマスク無し、親もマスクの着用は個人の裁量におまかせするという対応にホッとした。黙食、リモート授業、リモート遠足などが取り上げられていた2020年とくらべて、状況は大きく変化したことを感じた。
しかし、全部がそうではない。学校でも対応のゆらぎは大きく、外を歩けば余計にそう感じる。親戚にも常にマスクをつけっぱなしで、こちらが外して会話すると明らかに嫌そうな顔をする人もいる。
先日チラシでたまたま見かけた店は「マスクの着用は個人の裁量となりましたが、当店入店時に着用しないお客様はお断りします」と書いてるところもあるし、スーパーの入り口で置かれている消毒液で熱心に手に吹きかける利用客もいまだ多い。その逆に3月13日から一度もマスクをせず、快適な日常が戻ってきたと喜ぶ人もいる。
世界はパンデミックを完全克服したわけではない。未だ人々の心の中で大きな認識の違いが残っている。それは実際の感染状況は問題ではなく、むしろ心の問題だろう。2023年のコロナは体ではなく、人々の心に感染するのだ。
◇
考えるべきはコロナ対応の緩和が続く中で、誰に合わせるべきか?である。まだまだコロナに脅威を感じている人に合わせるべきか?個人の権利を謳歌するべきか?自分も未だにこの結論が出せないでいる。
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