「偉大な国の、親愛なる偉大な人々よ」:復活祭の教会にロケット弾を撃ち込むロシア

16日は東方正教会の復活祭だった。ウクライナ正教会でも同日、各地の教会で復活祭を祝ったが、ロシア軍は正教会の復活祭の日曜日、ウクライナ正教会にロケット弾を撃ち込み、破壊した。

復活祭の挨拶するゼレンスキー大統領(2023年4月16日、ウクライナ大統領府公式サイトから)

ウクライナ正教会が明らかにしたところによると、ロシア軍の砲弾は16日午前2時半ごろ、ザポリージャ地方オリヒフ近くの村の教会を破壊した。幸い、1906年に建設された正教会にはまだ誰もいなかった。復活祭は同日午前5時に開始される予定だった。正教会の建物は砲撃で完全に破壊されたという。

キーウの「宗教の自由」研究所によると、ロシア軍がウクライナに侵攻した2022年2月24日以降、ロシア軍はウクライナで500を超える宗教的建造物を破壊、ないしは損傷させた。破壊された宗教的建物は主にウクライナ正教会に属する礼拝所だ。ウクライナにはモスクワ総主教のキリル1世を支持するウクライナ正教会(UOK)があったが、昨年5月27日、全国評議会でモスクワ総主教区から独立を決定している。

ウクライナ国民は16日、ロシア軍の侵攻後、2度目の復活祭(イースター)を迎えた。正教徒のウクライナ国民は、年で最大の教会祝日の復活祭を家庭や各地の教会、バンカー(防空壕)で迎えた。戦争勃発直後の昨年の復活祭とは異なり、今回の復活祭を迎えるに際し、ウクライナ側からもロシア側からも「イースター停戦」といった声は聞こえなかった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、国民に向かって復活祭の挨拶をしている。その内容は感動的だ。それを抜粋して掲載する。

ゼレンスキー大統領は「偉大な国の、親愛なる偉大な人々よ」と呼び掛けて復活祭のスピーチを始めている。

「昨年の冬の終わりに、ロシアは私たちの土地に戦争をもたらした。それに伴い、死、痛み、そして闇が襲ってきた。2月24日の朝、太陽は昇らず、夜明けは来なかった。2月24日の朝、暗い夜が始まった。同時に、私たちの目覚めが始まった。私たちの戦いだ。暗闇は、私たちの精神、自由への欲求、祖国への愛、それを守る心構えを覆い隠すことはできなかった。私たちは自分の中に光を保ってきた。私たちはパニック、恐怖、確執、喧嘩を克服し、団結した。何百万ものウクライナの心の何百万もの火花が、1つの大きなかがり火になった。この火は私たちの希望と信仰を失わせなかった。全世界はこの火を見た」

「そして、今日、私たちは主の復活の祝日を祝う。その主なシンボルは勝利だ。善の勝利、真実の勝利、人生の勝利だ。私たちは、これらの勝利の不可逆性に対する揺るぎない信念を持ってイースターを祝おうとしている。1年前のこの日、私たちは皆、ウクライナの存続のために祈ったが、今日はウクライナの勝利のために祈る。私たちはただ待っているのではなく、自ら立ち上がり、勝利を勝ち取るのだ。戦いが始まって今日で417日目だ。私たちは既に長い道のりを歩んできた。おそらく、最も困難なピークが私たちの前にある。私たちはそれを克服する。そして私たちは一緒に夜明けを迎える」

「天は私たちの信仰と不動を見ている。世界は私たちの勇気と無敵を見ている。敵は私たちの強さと決意を見ているはずだ。ウクライナは勝利の光を見るだろう。それを信じることが私たち全員を団結させる。復活祭は、暖かさ、希望、そして偉大な団結の日だ。戦争は、私たち、私たちの価値観、伝統、休日、それらが象徴する最も重要なものを消すことはできない。どこで祝おうと、私たちは常に一緒にイースターを祝うのだ」

「ウクライナのために命を捧げ、もう私たちと一緒にいない人たちを思い出し、彼らの魂が慰められるように神に願う。私たちは祖国を守り続けている全ての人を信じており、神に彼らを守ってくださるようお祈りする。私たちは力を尽くして国のために戦いますから、天よ、私たちを助けて下さい」


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。