日本で業界再編ブームは起きるか?:多くの変革が一気に進んでいる構図

業界再編は衝撃的な構造変化が起きた時にいやおうなしに進むケースが多く見られます。今、様々な報道を見てもわかる通り、日本が相対的な経済の地盤沈下が指摘される中、業界再編が再度起きる可能性はあるのか、考えてみたいと思います。

いなげやがイオンの子会社にすると発表されました。もともといなげやはイオンが17%程度所有する関連会社でしたが、業績が振るわず、23年3月期の収益も黒字予想が赤字に転落していました。そもそもスーパーマーケット業界はコロナの巣ごもり需要で19年から20年に全体で10%強の売上高の伸びを記録しています。21年以降も更に売り上げが伸びたのはコロナから解放されたら次は物価高に悩まされ、外食を控えているのが一つの原因であるとみられています。

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ならば、いなげやの不振は何なのでしょうか?消費者がより高いレベルのスーパーに向かう傾向が強まったのだろうと考えています。高いレベルとは種類が豊富、店舗が大きく、内装がきれい、レジなどが最新の機器で投資を継続している、スタッフの教育や接客などオールラウンドな面で現れてきます。それが経営の数字に表れてくると体力勝負にならざるを得ないのだと思います。

スーパーマーケットは日本に2万軒あるとされます。1-2店舗経営する企業から数十店舗経営の中小スーパーは商圏を巡る大手との戦いで業界再編は余儀なくされるのではないでしょうか?人口減もあります。コンビニなど小規模店舗との棲み分けもあり、いなげやのような業界再編は当面、続くのだろうとみています。

住宅業界も再編されてもよいとみています。大手メーカーからいわゆる工務店までこの業界も幅広いのですが、大工など専門職の人材確保が難しくなっていること、人口減で住宅需要は確実に下がってくること、アフォーダビリティの問題で住宅購入に手が届かない人が続出し、消極的理由で郊外に転出する第一次取得者が増えていることは懸念材料です。

日本の場合、いわゆるBtoBの業界は再編が進んでいます。それは効率化と経営改善が進めやすいからでしょう。化学や船舶業界、鉄鋼などはその好例です。ところがBtoCになるとなかなか進まないのが現状です。一定のファン層を獲得していること、経営者の負けず嫌いなど割とメンタルな理由が原因だったりします。

その筆頭が自動車業界です。日本は80年代から自動車メーカーが多すぎる、3社程度に収れんするだろう、と言われ続けながら50年経った今でも名目上は変わっていないのです。ただ、実質的にはトヨタグループがダイハツを抱え、スズキや日野自動車、スバルと業務提携をしており、マツダの株も取得するなど業界再編のきっかけはあります。日産が三菱自動車と連携しており、国内だけで見れば独立系はホンダのみとなっています。確かに3社に収れんしつつあるのですが、もう少し効率化させてもよいのだろうと思います。

特に今後、海外勢がいやおうなしに攻めてくるとみています。今はまだ信じられないと思いますが、中国メーカーの自動車が日本の道路を我が物顔で走る日は大いにあり得るとみています。「なぜそう思うか」と聞かれれば私は即座にこう答えます。「では、家電量販店に行ってテレビでも白物家電のコーナーでも行かれたらわかります」と。アマゾンで電気製品を探せば多くが中国ブランドです。あるいは国内メーカーでも中国で作られたものが目立ちます。アイリスオーヤマも主力工場は中国の大連です。

20年前はあれだけ中国製品にアレルギー感を持っていた日本人が普通に中国製の電化製品を買うようになっているのです。ならば自動車を買わない理由もないのです。そうなれば日本の自動車業界はグループ各社の特性を生かした勝負に専念する必要があるとみています。例えば三菱自動車は東南アジア、スズキはインド、スバルはアメリカといった具合でしょうか?

金融機関、特に地銀と信用金庫などの部類も再編があっておかしくないでしょう。まず、銀行と顧客の接点はかつては窓口だったのですが、今は多くのサービスはオンラインで終結できます。事実、オンラインだけの銀行も沢山増えています。また地方銀行の場合、個人の預金に対して企業への貸出先不足という預金と貸し出しのバランスの悪さがあり、それを債券売買を通じた運用で賄うという不健全さがずっと続いています。地銀とメガバンクは棲み分けがあるべきですが、地銀の数は第二地銀を入れると99行、これはいかにも多すぎます。

信用金庫は括りが別ですが、これに至っては254行もあるのです。各都道府県5行平均です。信用金庫と信用組合と共にNPOであって会員資格が前提になる相互扶助がそもそもの発想です。商店街の店舗オーナーなどが数百万円単位の小口融資を受けるなどのビジネスですが私はそろそろ使命を終えたと思っています。

業界再編はあるきっかけが理由で進むことが多いのです。スーパーマーケットはコロナと物価高、住宅は少子化と住宅価格高騰、自動車はEV化と他国製との差別化が難しくなったこと、金融はITとインターネットの進化と言った具合にほぼ全て違う理由なのですが、それが同時並行で起きているのが現在の状況です。かつては金融ビックバンで証券業界が再編されたといった具合に時折それが起きていたのが、今は多くの変革が一気に進んでいるというのが構図です。

今後10年で日本の産業界は大きく変化する兆しが見て取れると思いませんか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月2日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。