米韓首脳会談
バイデン米大統領とユン韓国大統領は、4月26日ホワイトハウスで会談し、北朝鮮の核攻撃に対し「米国の核兵器を含め、米韓で迅速かつ断固とした対応をとる」ことで合意した。
米韓両首脳は、韓国を北朝鮮の核攻撃から守るため、拡大核抑止の強化を具体化した共同文書「ワシントン宣言」を発表した。
バイデン大統領は、北朝鮮が米国や同盟国に核攻撃をすれば直ちに圧倒的な核反撃により北朝鮮は終焉すると警告した。これに強い衝撃を受けたであろう北朝鮮は何らの反論もせずに沈黙を守っている。
今も「韓国武力統一」を放棄しない北朝鮮
そもそもユン韓国大統領が訪米したのは、近時における北朝鮮の核ミサイル開発の加速や頻繁なミサイル発射による軍事的脅威を抑止するためである。北朝鮮は金日成主席以来の「悲願」ともいうべき究極的な「祖国統一」すなわち「韓国武力統一」の方針を放棄していないと見られる。
したがって、北朝鮮が核ミサイル開発を加速する目的は、米国の核攻撃に対する核抑止力を獲得することと、究極的には「核恫喝」によって韓国を屈服させ「韓国武力統一」を実現するためと考えられる。
防空能力が脆弱な北朝鮮
北朝鮮が核に執拗に依存するのは、通常戦力では到底韓国には対抗できないためである。北朝鮮には日本のようなイージス艦やパトリオット迎撃ミサイルのようなミサイル防衛システムがなく、戦闘機も多くは旧式で、軍事偵察衛星や高性能レーダー網もないため、北朝鮮の防空能力は極めて脆弱であり、制空権・制海権の確保は困難であり丸裸に近い。
このように韓国に比べて通常戦力が著しく劣り、防空能力が極めて脆弱な北朝鮮にとっては、経済力を含め、長期戦には到底耐えられないのであり、有事となれば「攻撃される前に先制攻撃する」短期決戦しか生きる道はない。北朝鮮指導部が有事における「核の先制使用」をたびたび公言するのもそのためである。
韓国の米原潜発射型事実上の「核共有」政策
今回の「ワシントン宣言」では核弾道ミサイルを搭載できる米戦略原子力潜水艦の韓国派遣が明記された。そして両国は核戦力につき協議機関を新設し、核抑止のための合同演習や訓練を強化することも合意された。米攻撃型原子力潜水艦3隻あれば、台湾有事の際には魚雷攻撃やミサイル攻撃により台湾海峡のすべての中国艦船を撃沈できる威力があると言われている(米軍事戦略専門家・国際政治学者エドワード・ルトワック博士)。
「ワシントン宣言」に基づく核搭載米原潜の韓国派遣や核協議機関の新設などは、韓国の対北朝鮮核抑止力を格段に強化する米原潜発射型の事実上の「核共有」であり、北東アジアにおける最初の画期的な核戦略と言えよう。
今回、このような安全保障上の大きな成果を得たユン韓国大統領の外交戦略は注目に値する。「ワシントン宣言」による核搭載米原潜の韓国派遣や核協議機関の新設などは、北東アジアで最初の米原潜発射型の事実上の「核共有」として、韓国にとって単に北朝鮮のみならず中国に対しても強力な「核抑止力」となることは言うまでもない。そのため中国は今回の「ワシントン宣言」を強く非難している。中国にとっても脅威だからである。
日本も米原潜発射型事実上の「核共有」検討を
核保有国ロシアの国際法違反のウクライナ侵略、核保有国中国の台湾有事、尖閣有事など力による現状変更、核保有国北朝鮮の核ミサイル開発加速などの脅威に対応するために、日本も、安全保障上、核搭載米原潜寄港や核協議機関設置など、米原潜発射型の事実上の「核共有」体制を含め、ユン韓国大統領による今回の韓国の安全保障政策を教訓とし他山の石とすべきである。
米原潜発射型の事実上の「核共有」は、地上配備型と異なり、他国の攻撃目標とはならない利点がある。