アルゼンチンがBRICSへの加盟申請

BRICSの今後の勢力

BRICS(ブリックス)の存在はこれからより顕著になって来るであろう。2001年にゴールドマン・サックスの経済学者ジム・オニール氏が表明した新興経済を代表する国家として同氏が投資家の為のレポートの中でそれを言及。この時点ではまだBRICであった。

それは4か国のイニシアルを集めたもので、Brazil、Russia、India、Chinaの4か国である。2011年に南アがそれに加盟してBRICSとなった。

現在、BRICSのGDPは世界の31.5%を占め、G7の30.7%を上回っている。(4月10日付「エコノミスタ」から引用)。

最終的に18か国が加盟に関心を示していることから、将来的にはBRICSはG7よりも世界で政治経済的に影響力を持つようになるはずである。それに対抗する意味でG7は将来的にGDPランキングで12位、13位、15位を占めているオーストラリア、韓国、スペインを加盟国として増やす必要も出て来るであろう。

現時点だとGDPの世界ランキングで1位米国、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位インド、6位イギリス、7位フランス、8位ロシア、9位カナダ、10位イタリア、11位ブラジル、12位オーストラリア、13位韓国、14位メキシコ、15位スペイン、16位インドネシア、17位サウジアラビア、18位オランダ、19位トルコ、20位スイスとなっている。

1位から11位までG7またはBRICSの加盟国である。そして14位、16位、17位のメキシコ、インドネシア、サウジアラビアはBRICS加盟したい意向をもっている。(世界名目GDPランキングから引用)。

アルゼンチンが6か国目として加盟するであろう

この18か国の中で最初に加盟を果たしそうなのがアルゼンチンである。アルゼンチンはクリスチーナ・フェルナンデス氏が大統領だった時に加盟への関心を既に表明していた。

ところが、その後中道右派のマクリ大統領が政権を担うことになり、またブラジルでも右派のボルソナロ氏が大統領に就任したことで、アルゼンチンのBRICSへの加盟する意向は遠のいた。ところが、ブラジルでルラ氏が政権に復帰すると、アルゼンチンのBRICSへの加盟に支持を表明するようになった。

そこでアルゼンチンは昨年5月に加盟の為の申請を行った。アルゼンチンが加盟を果たせば組織の名称もBRICSAになると、アルゼンチン国内では噂されている。その意向に沿う形でアルゼンチンはBRICSの新開発銀行(NDB)に加入する予定になっている。

これが実現すればデフォルトを繰り返して来たアルゼンチンにとって資金面での扉が開放されることになるであろう。これまでアルゼンチンはIMFや世銀を頼りに資金を調達せねばならず、その為の条件が常に問題になっている。

しかし、アルゼンチンがBRICSに加盟することに国内では反対もある。その一つにイランがBRICSへの加盟に関心を示しているからだ。アルゼンチンで1994年にイスラエル相互協会の建物がテロ爆破されて85人が死亡。このテロ事件の背後にイラン政府が絡んでいたとされているからだ。

その後、クリスチーナ・フェルナデス元大統領はアルゼンチンからの輸入を促進させるという条件でイラン政府を控訴することを退けるという取り決めもあった。また、ロシアがウクライナに侵攻していることにもアルゼンチンは賛成できない立場にある。更に、加盟よりも前にインフレと貧困の問題解決に取り組むべきだという意見でもある。

BRICSの加盟国の拡大と米ドル離れ

アルゼンチン以外に、アルジェリア、サウジアラビア、カタール、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦、メキシコ、インドネシアやイランなどが加盟に関心を表明している。即ち、原油産油国がこれに加盟しようとしているのである。

メキシコについては、G7を構成する米国とカナダとで3か国の貿易協定を結んでおり、メキシコがBRICSに加盟することにはこの2か国から強い反対の圧力が加わるはずである。

BRICSの目的のひとつに貿易決済通貨として米ドルを廃止して行く方向にある。実際、中国とロシアの間では人民元とルーブルで取引が実施されている。しかも、ウクライナ侵攻後はロシアの人民元への依存が大きく増加している。

また、ブラジルはルラ大統領の復帰でアルゼンチンとの取引もレアルとペソで実施されることがつい最近の両国の財務相会談で取り決められた。

今後、アジアでもBRICSに加盟する国が増えて行くはずである。G7の構成国のひとつである日本はBRICSの影響が拡大して行く中で、アジアにおいてどのような姿勢で臨んで行くのか明確なプランをもつべきだ。