読売新聞社がデジタルと社会に関する全国世論調査を実施した。有効回答数2055だが、29歳以下11%、30代12%、40代17%、50代19%、60代18%、70以上23%と高齢者に偏っている。それでも、デジタルの社会的受容性を探るのに役立ちそうだ。
マイナンバーカードと健康保険証との一本化は「賛成」が56%で「反対」は42%。運転免許証との一体化は賛成50・反対47で、マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載は賛成30・反対67。
高齢者にはデジタルに対する不安感や警戒心がある。「社会のデジタル化が今後さらに進んでいくことについて、期待と不安では、どちらの方が大きいですか」という質問に対しては、期待が43%で、不安が55%と不安が上回った。「デジタル化が進んだ現代は、幸せな社会だと思いますか」についても、思う36・思わない55だった。
ChatGPTがはやり言葉になっているが、理解はむずかしいから不安が高まってもおかしくない。それが、回答比率に表れている。「マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載って何?」という疑問から不安が募っていく。
不安感や警戒心を解くには、一体化や機能搭載の意義を政府は繰り返し説明しなければならないが、メディアも重要である。保険証については何度もメディアで取り上げられたし、すでに利用されている。一方、免許証はメディアがあまり扱わず、スマホへの機能搭載はもっと少ない。朝日新聞の記事件数では保険証が63件、免許証が48件、スマホ搭載が25件である。毎日新聞では56件、36件、7件。メディアに取り上げられていくにつれて賛成が増えていく。
この世論調査に不安感や警戒感を誘導する設問があったのは気になった。「広告収入を増やすために、正確さよりも、注目や関心を優先した情報が目立っていることは、問題だと思いますか」「インターネットで流れている偽の情報が日本の有権者の投票行動に、影響を与えていると思いますか」
一方で、回答者の前向きな期待も記事に書かれていた。記事は自由回答欄で「日常生活や仕事、行政の手続きなどでデジタル化を進めてほしいこと」を尋ねた結果に言及している。
兵庫県の40歳代女性は「マイナンバーカードを通じて投票ができるようになれば、投票率が上がりそう」と期待を込めた。「投票所に行く必要がなくなる」(60歳代女性・神奈川県)などの声もあった。
社会的な理解が進めば、これらの人々が求めるネット投票も実現するだろう。そのためにも、プレインランゲージの原則に基づく丁寧な説明が求められているということを再認識した調査結果であった。
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