令和時代に思い出したい「半年ROMれ」

黒坂岳央です。

その昔、「半年ROMれ」というネットスラングが流行った。簡単にいえばネット掲示板において「初心者はいきなり投稿せず、まずは半年読むだけにしてしっかり使い方やマナーを学べ」というものだった。当時の自分は初心者への風当たりの強さに恐怖を感じ、ずっと読む専門だった。

だが、昨今のSNSに絡む諸問題を見ていると、令和の今こそ「半年ROMれ」という暗黙ルールをSNSに復活させるべきではと思っている。

takasuu/iStock

SNSは拡張器という認識を

昨今、誰もがSNSをカジュアルに使用するようになった。上手に使えばこれほど便利なものはない。その一方で、使い方を誤れば自身の身を滅ぼす恐ろしい刃にもなり得る。

若い人の間でSNSを誤用することで学校を退学となったり、時には逮捕や損害賠償請求を受けるものがいる。彼らはSNSに対して正しい理解ができていない場合が多く、「仲間内で盛り上がるためにやったつもりが、世界中に拡散された」という自分たちは被害者という感覚の者もおり、「外部の人間が炎上させないでくれ」という憤りを持つと見られるケースすらある。

SNSを一言でいうと「拡張器」に他ならない。影響力のある人が上手に使えば、短時間で不特定多数の人にメッセージを届けることができる。これをニュースやビジネスに活用することが可能だ。

その一方で、独り言や愚痴や不満、悪ふざけを発信しても不特定多数に伝わる。リアルではどれだけ頑張っても、大勢にメッセージを届けるには限界がある。せいぜい、東京の人通りの多い場所で大声で話し続ける、くらいしかないし、その効果は極めて限定的と言わざるを得ない。

しかし、SNSは自分に都合のよいタイミングで発信できるし、伝搬する数も文字通りリアルとは桁が違う。さらに誰に伝えるか?という属性も選べる。だから投稿する前に投稿内容が他人にどんな感情を抱かせ、結果自分の身にどう返ってくるのかを想像する力が必要となる。

半年ROMる効果

拡張器であるSNSを使うのは注意が必要だと書いた。だから判断能力、少し先の未来を想像する力が欠けている人が使うと大変な厄災が降りかかる。どうすればいいか?結論、半年ROMることである。

筆者は半年ROMる(実際には”数年間”読む専門だったが)ことで、何を書き込むと不特定多数から罵倒されたり炎上するのか?またブラックではなく、グレーのラインを攻めると笑いを誘ったり面白かったりする。この境界線をはっきり理解できた。

SNSは検索性に優れているため、たとえば自分がやろうと考えたことをまず検索して、先人の爪痕を調べることができる。また、SNS由来の炎上理由を知ることで「ここまでやってしまうと社会問題になる」「逆にここまでは悪ふざけの範疇で笑いを取れる」といったことを理解できる。そしてそれはそのままリアルでの人間関係でも応用することができる。

結局、ネットでもリアルでも生身の人間のコミュニケーションの場なので、ふさわしいふるまいの本質が大きく違うことはない。つまり、SNSで半年ROMることは、リアルでの人間関係において問題につながる行動を理解する勉強にもなるのだ。

また、昨今の闇バイトも応募して相手とコミュニケーションを取り始める前に、事前に調べておくことでリスクを回避できる。無知は罪である。知らなかったでは済まされない。気軽に書き込んでしまう前に半年ROMることでコミュニケーションや情報力を鍛えておいて損はないだろう。

筆者も自分の子供が小学生に入り、少しずつインターネット空間へのデビューの日が近づいてきている。我が子を犯罪者や炎上の渦に巻き込まないためにも、SNSデビュー前に「半年ROMれ」を教えたいと思っている。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。