子どものゲーム障害(ゲーム依存)を予防する --- 半田 一郎

ほとんどの家庭には家にゲーム機があり、ゲームをしない子どもはほとんどいないと思われる。毎日、数時間以上もゲームに没頭している子どもも多いようである。また、「ゲーム障害」という言葉もあり、保護者にとっては、子どものゲームは頭の痛い問題である。

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ゲーム障害とは

「ゲーム障害」は、世界保健機関(WHO)の「疾病および関連する健康問題の国際統計分類」(ICD-11)で定義されている国際的に認められた病気の一種である。次の4つの内容が全て当てはまっている状態が1年以上続いている場合、「ゲーム障害」と判断される。

  • ゲームをする時間をコントロールができない。
  • ほかの生活上の関心事や日常の活動よりゲームを優先する。
  • ゲームによって問題が起きているにもかかわらずゲームを続ける。
  • 学業や仕事、家事などの日常生活に著しい支障がある。

要するに「ゲーム障害」とは、他に大事なことがあるにもかかわらずゲームが止められない状態だと言える。

なお、「ゲーム障害」は、医学的な診断であるため、周囲の者が勝手に決めつけることはできないことは留意しなければならない。「ゲーム障害」が疑われる場合は、専門医などの支援を受けることが望ましいだろう。

ゲーム依存とゲーム障害の違い

ところで、「ゲーム依存」という言葉もよく見かける。多くの子どもは楽しいからゲームをやっているのだが、子どもの中にはゲームをあまり面白いと感じていないのにやり続けている場合もある。学校や対人関係のストレスが強い場合に、そのイヤなことを頭の中から追い払うために、ゲームがやめられないのである。

ゲームには強い刺激があり、ゲームをしている間は他のことを考えることが難しい。そのため、イヤなことや不快なことを頭の中から追い払うのには最適なのである。

このように、様々なストレスから生じる不安や落ち込みなどのマイナスの感情を避けるために、何らかの手段から離れられなくなっている状態は「依存」と呼ばれている。単にゲームをしている時間が長いと言うことではなく、それによって不快を避けてるというメカニズムに注目した言葉が「ゲーム依存」である。

それと対比すれば、「ゲーム障害」とは他に大事なことがあるにもかかわらずゲームが止められないという状態に注目した言葉である。

【参考】ゲームのやり過ぎ(ゲーム障害・ゲーム依存)への対応

そもそもゲームのやり過ぎは良くないことか?

一方で、ゲームをすることは、子どもにとっては意味のある体験となっている場合もある。子どもがゲームの攻略法を考えて、工夫したり、練習したりしながらゲームを楽しんでいることは非常に多い。それは、試行錯誤しながら自分で考える知的な活動だと言える。

また、チーム対戦のゲームも子どもには非常に人気があるが、仲間と作戦を話し合って、協力したり、相手チームと駆け引きをしたりするなど、人間相手の複雑なやり取りを楽しんでいることも多い。そういったゲームを楽しむ中、達成感や充実感を味わうことも多いだろう。反対に、悔しい思いをしたり、我慢したりなど気持ちの上でも意味のある経験をしていることも多いと考えられる。

こんなふうに、子どもたちはゲームをする中で意味のある体験を重ねているため、ゲームを良くない物であると決めつけることはできない。

以上のことをまとめると、次のようになる。楽しんでゲームをやっていて、意味のある充実した体験をしている場合は子どもの成長にもつながるため、あまり心配をする必要はないかもしれない。

一方、ゲームをやりすぎてしまって、勉強や生活に支障が出ているのに止められない状態は「ゲーム障害」かもしれない。必要に応じて医療などを利用することが望ましい。また、イヤなことを忘れるためにゲームに没頭している場合は「ゲーム依存」の状態かもしれない。

「ゲーム障害」や「ゲーム依存」を予防するには

どんなことでも、問題が大きくなってから対処するのではなく、問題が生じないように予防する方が重要であり、コストも低くなるものである。そこで、「ゲーム障害」や「ゲーム依存」の予防について考える。

第一に重要なことは、子どもの不平不満に耳を傾けることである。イヤなことが上手く処理できずに、それを避けるためにゲームを使用するような場合に「ゲーム依存」に陥ってしまう。そうであれば、子どもがイヤなことに対処できる力を育てていくことが重要であろう。そのためには、子どもが不平や不満を話してきたときに、話をよく聞いて、一緒に考えることが大切である。それがゲームを使ってイヤなことを避けるのを予防することになると考えられる。

第二には、ゲーム以外の活動を楽しめるように関わることである。ゲームを止めさせることに気持ちが向きがちであるが、子どもはゲームを通して意味のある活動を楽しんでいる場合も多い。そのため、単に止めさせるだけでは、子どもが成長する機会を奪うことにもなりかねない。だからこそ、ゲーム以外の活動で、子どもが楽しめて充実できる活動を見つけてそれに取り組めるようにサポートしてあげることが大切である。

ごく一般的で当たり前のことだが、子どもと、色々なことについてコミュニケーションを深め、様々な活動を一緒に楽しむことがゲーム障害やゲーム依存を予防することにつながると言える。

半田 一郎
子育てカウンセリング・リソースポート代表カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)。
スクールカウンセラーとして50校以上の学校で活動。著書は、『スクールカウンセラーと教師のための「チーム学校」入門』『子どものSOSの聴き方・受け止め方』など多数。