社会主義国家キューバにとってメーデーは重要な日だ。ところが、今年5月1日の労働者の祭典は実施されなかった。キューバ革命から現在まで、この祭典が行われなかったのは2度しかない。最初はコロナ禍による感染危機で中止となった。そして2度目は今年の祭典が中止となったことである。理由は全国規模の深刻なガソリン不足からである。ガソリン不足で交通手段が完全に停止している。
「これは我々にとって地獄だ」と言っているは車の所有者だ。およそ1年前から長い行列がガソリンスタンドの前に出来ているという。一日かけて車にガソリンを給油することが頻繁にあるそうだ。ひと月前からそれがさらに深刻になっている。
例えば、首都ハバナではガソリンスタンドで営業しているのは僅か4か所だけ。その影響で長蛇の列はますます長くなり、その近辺で料理をしたり、ドミノゲームをして時間をつぶす人が増えているという。
運転手同士で殴り合いも発生するようになっているそうだ。外国の大使館や領事館の車にはガソリンの供給が優先的に割り当てられているが、異なった国の外交官同士の間でも争いが生じているという。
政府はこの混雑を和らげるために車の所有者の身分証明や車のプレートナンバーの提出を求めている。それによって長蛇の列を解消させ、当人にガソリンを供給できる時点になった時にそれを通知するというものである。
現在のところ、一人当たり最高40リットルまで給油できるとしている。しかし、次の給油には3日間待たねばならない。ガソリンスタンドでは日毎7000から9000リットルを給油に充てているそうだ。しかし、これも地方になるとガソリン不足はさらに深刻になっているという。
キューバはいつもベネズエラから安価で原油が提供されている。その前はソ連からであった。しかし、今年4月は3月と比較して日量6000バレル少ない4万5000バレルが同国から送られて来た。またそれは2月分と比較しても2万7000バレル少ない量だ。即ち、毎月贈られて来る量が減少しているということである。
ベネズエラ国内でもガソリン不足が生じてることからキューバに充分な原油を提供できないのである。キューバ政府はロシアとメキシコにも原油の供給を要請。この2か国の原油はベネズエラのそれに比べ重質が軽く精製するコストも比較的安く済む。コストも安い。それ以外の産油国にも供給を依頼しているが、応じられていない。一方、ベネズエラの原油は重質が重く精製コストも余計にかかるという問題もある。(以上5月10日付「エル・コンフィデンシアル」から引用)。
ところが、このガソリン不足には政府が背後から操っている可能性があると4月20日付の電子紙「ラジオテレビシオンマルティー」が指摘している。
というのは、政府はベネズエラから十分な原油を輸入しているというのである。それを裏付けるかのように、3月中旬から下旬には巨大オイルタンカーノーランが150万バレルを積んでキューバに入港しているというのだ。実際、3月13日付けロイターが今年1月に日量4万バレル、2月5万2000バレル、3月7万6000バレルを入手していると報じたことを同紙は指摘。
それでもキューバ国内でガソリンが不足している背景にあるのは、政府が巨額の外貨を必要とする為に国民を犠牲にして精製したガソリンを外国に売っている。これが真相だというのである。
キューバ国民の悲劇はカストロ兄弟によるキューバ革命から始まった。この革命がなかったならば、現在のキューバは米国の影響下のもと少なくとも現在国民が置かれているような貧困と物資の不足はなかったであろう。因みに、フィデル・カストロ氏自身は私腹を肥やし富裕者として亡くなっている。