少子化対策が話題になっているが、政府のやることは、やらないよりまし程度のことが多く、かなりは、いいのか悪いのかすら疑問が多い。
どうすれば本当に効果があるか、虚心坦懐に分析すべきだと思う。その一環として、私は47都道府県の合計特殊出生率とその年代別推移を分析してみた。多様な要素から、傾向を見つけ出して、問題提起しようというものである。
それを、『じつは「イクメン」の多い土地は出生率が低い…日本の出生率が「西高東低」となる本当の理由子どもを増やせる西日本にヒトとモノを移動させよ』に書いたので一読いただければ幸いだが、ここでは、そのエッセンスを紹介するとともに、いくつかの問題を掘り下げたい。
まず、たしかなことは、1位の沖縄は1.83、上位11県が1.50以上である一方、最下位の東京は1.12、下位9都道府県が1.30未満である。これはかなり大きな差だ。そして、2020年時点における上位10県は、沖縄、宮崎、鹿児島、長崎、島根、熊本、佐賀、福井、大分、鳥取である。
全体的に、大都市が低いことと、西高東低が顕著だ。しかし、東北がむかしから西日本より低かったのでなく、戦前はむしろ高かった。それがどうして逆転したかの分析は上記記事でもしているが、高度成長期の出稼ぎも理由だ。大都市の単身赴任も少子化の原因になっているように見える。
そのほかでは、実はあまり相関性のある数字は少ないのだが、子供が可愛いとか将来が楽しみだと思う感情が社会や家族であるかは決め手であるような傾向はある。
一方、男性の家事や子育てへの参加は少子化対策として取り上げられることが多いが、数字を見る限り、男性の子育て参加が少ない都道府県ほど、出生率が高い傾向だ。これをどう評価するかはともかく、イクメン推進すれば、少子化が解決することはあり得なさそうだ。
そもそも、日本の少子化対策がうまくいかない最大の理由は、男女共同参画政策をもって少子化対策だと検証なく代替させているからだ。これらはそれぞれ大事だが、まったく別の問題であって、政治的意図で歪めるのはよくない。
逆にある程度ありそうなのは、初婚年齢年齢だ。私は男女とも早めに結婚し、体力があり、また、祖父母も若いうちに複数の子どもを作り、子育てが一段落したのちに、もっとも職業人として力を発揮できる30~40代で頑張るようなライフサイクルが理想的だと思うし、それを推奨、支援することでこそ子だくさんが多い社会にできると思っている。
最近は、女性が仕事である程度、力を発揮できる30歳を超えてようやく結婚する気になる傾向があるが、こんな子育てでキャリアを中断させられるようなサイクルでは、複数の子を持つのは難しいし、子どもを持つ女性のキャリア形成の支障にもなっている。
これは、男性についても、30歳代後半から40歳代のもっとも仕事で脂がのったときにイクメンは辛い。
また、祖父母の年齢も問題だ。仮に親子の年齢差が25歳なら、50歳で祖父母になるが、30歳なら60歳、35歳なら70歳である。第二子以降ならもっと高年齢になる。祖父母が育児に参加するためにも、現在の晩婚化は非常によろしくない。
つまるところ、少子化対策としてもっとも有効なのは、大都市から地方へ、東日本から西日本への人口移動と、早婚化のように見える。いかなる方法であっても、たとえば、東京から九州に人口を雇用を移動させたら、合計特殊出生率は0.5も上がる。
また、早婚化さえ実現したら、状況は劇的に変わるだろう。たとえば、公共機関や企業で20歳代職員・社員の産休・育休をとりやすくするとか、育児を終わった年齢の女性などの採用を優遇したら、確実な効果が出るだろう。
ちなみに、現在、世界でもっとも活躍している女性のうち、ナンシー・ペロシ前米国下院議長は、23歳で結婚して5人の子どもを育てた後、47歳で下院議員に当選。女性として初めて欧州委員会の委員長になったウルズラ・フォン・デア・ライエンは、27歳で結婚して7人の子どもを産んで、42歳でドイツ・ゼーンデ市会議員として政界入りしている。
専業主婦や比較的軽い仕事をつつ準備をし、子育てが一段落ついたところからアクセルをいっぱいに踏み込んでキャリア形成をしたわけである。男性でも、見習い段階の方が中堅幹部になってからより、よほどイクメンしやすいはずだ。
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