殺害が横行しているメキシコ
2018年12月に大統領に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(以後、アムロ)の政権下、これまでに15万7000人以上が殺害されるという最悪の記録を更新中だ。1990年から6人の大統領が政権を担ったが、現大統領のアムロの記録には及ばない。
これまで5人の大統領の政権下での殺害された人の数は以下の通りである。カルロス・サリーナ(76,767人)、エルネスト・セディーリョ(80,671)、ビセンテ・フォックス(60,280)、フェリペ・カルデロン(120,463)、エンリケ・ペーニャ・ニエト(156,066)というのが結果だ。(4月23日付「インフォバエ」から引用)。
抱擁と銃弾拒否が大統領の方針だった
アムロは大統領に就任した早々に、殺害事件を起こしている麻薬組織カルテルに対し「抱擁と銃弾拒否」という方針を掲げて、カルテルに理解を求め、彼らが自主的に犯罪防止に協力するように求めた。それは前任者までの弾圧による取り締まりを否定したことになる。しかし、アムロのそれは逆に裏目に出た。カルテルは警察と軍隊そしてアムロが創設した防衛隊からの弾圧が緩まったのを利用して逆に犯罪を多発させたのである。犯罪者に良心を求めても馬の耳に念仏のようなものである。
アムロが大統領に就任して53カ月になるが、毎月3000人近くが殺害されていることになる。即ち、一日に100人が殺害されているということだ。
この悲嘆な事件を巻き起こしているのはカルテルとその下請け的な暴力組織である。彼らが殺しあいをやって縄張り争いをしているのである。更に彼らの犯罪を暴くジャーナリストや政治権力者で彼らの活動を阻止しようとする政治家も殺害の対象にされている。一方、カルテルに協力している軍人や警官もいる。
そして一般の市民も巻添えにさらされたりするのである。市民が行方不明になっても最初は信頼ある仲間同士で解決しようとする。警察に届け出るのは最後の手段だ。なぜなら警察もその犯罪に絡んでいるかもしれないからである。
ジャーナリストは自分の死を懸けて報道に勤しんでいる
殺害事件が最も多い州の2021年度のランキングの上位10州は以下の通りである。
1位:メキシコ自治州(3719人)、2位:グアナフアト(3673)、3位:ミチョアカン(3283)、4位:バハ・カリフォルニア(3207)、5位:ハリスコ(2743)、6位:チウアウア(2384)、7位:ベラクルス(2063)、8位:ソノラ(1968)、9位:オアチャカ(1717)、10位:ヌエボ・レオン(1688)となっている。
例えば、メキシコ自治州だとひと月に310人が殺害されていることになる。即ち、毎日一人が殺害されていることになる。(Statistaから引用)。
一般市民で標的にされているジャーナリストの場合、彼らに護衛をつけたくても予算の関係で十分に護衛できない状態が続いているというのが現状だ。昨年は17人のジャーナリストが殺害された。今年は5月までに既に5人が同じ運命を辿っている。特にカルテルに関係した報道をしているジャーナリストは死を覚悟して仕事に就いているというのが現状だ。(6月1日付「SDPのノティシアス」から引用)。
隣国米国で巨大な麻薬市場がある限り、メキシコでカルテルの犯行にやる殺害事件は止むことなく続くのである。