賃金と物価:「ゆでガエル」になりつつあった日本

G7諸国は一部の中国製品に対して高関税をかけるなどして規制をかけています。中国はそれを逃れるため、最終生産地を東南アジア諸国に移管しているのです。ベトナムはその一つ。つまり、中国からベトナム向け半製品の輸出が急増し、ベトナムからアメリカなどの先進国向け輸出が爆増するのです。またベトナムはTPP11に入っているし、TPP加盟国ではない対アメリカ貿易は全体の3割弱を占める最大の輸出相手国なのです。その上、韓国のベトナムへの直接投資も非常に多く、同国は急速に発展し、労働者の得る賃金も当然ながら上昇、一部のケースでは日本をしのぐ状態になっているのです。

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今年の春闘は大手企業が賃上げを断行したこともあり、「物価が上がったから賃金が上がる」というサイクルから「賃金を引き上げ、日本経済の基礎体力を強化する」動きが多少見えてきました。ユニクロが大幅な賃上げをした背景には出店先である東南アジア諸国の方が元気がある、と柳井さんが気がついたからでしょう。そう、日本は「ゆでガエル」になりつつあったのです。

岸田さんが新しい資本主義を断行したいなら、一番先に最低賃金を毎年云々するのではなく、向こう5年間のプランをぶち上げてしまったほうがよいでしょう。個人的には5年で3割、つまり2028年には最低時給1300円が必達だと思います。

賃金を上げると税収は増えるのです。また株価なども上昇しやすくなり、最終的には年金の支給額も下支えできるオセロゲームのような状態を生み出すことができます。

以前から申し上げているように日本はお祭りムードになるとイケイケドンドンになるのでこのきっかけをうまく利用すれば2030年に向けて日本に太陽が再び上ることも夢ではないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月5日の記事より転載させていただきました。