「ドミノ倒しのように…」巨大地震で日本経済を襲う危機 NHK
政治体制の変化の前の大地震
大政奉還の前に日本を襲った大規模な自然災害というのが最近取り上げられるようになっている。それが大政奉還に影響を与えたというのが理由だ。これが話題になるようになった背景には、最近の日本のマンネリ化した政治にある。多くの国民は今の政治に失望し、新しい政治体制の誕生が必要だと感じるようになっているからである。
次第に迫っている二つの大地震(南海トラフと関東直下型地震)が令和の新しい政治体制の誕生を導くのではないかという期待から大政奉還の前の自然災害のことが今また取り上げられるようになっているのであろう。
しかし、多くの国民が知らねばならないのは、予測されている2大地震が連鎖的に発生すれば、新しい政治体制を生む前に日本という国家そのものの存亡を問われるようになる可能性がある。
先ず、大政奉還に至る前に起きた自然災害について触れることにする。
1854東海と南海地震M8.4、1855江戸地震M7、1856江戸大型台風、1858全国コレラ大流行、1862全国麻疹とコレラ大流行そして1868年の大政奉還に繋がるのである。この5つの大惨事によって常に財政基盤が弱い江戸幕府にさらなる支出をもたらし財政悪化に至り地方から不満が爆発した。
予測されている2大地震
現在予測されている二つの大地震(関東直下型地震と南海トラフ)は2030年から2040年の間に起きる可能性は70%とされている。
関東直下型地震が発生した場合の経済被害は95兆円。この地震地域は東京都、茨城県、千葉県、神奈川県、山梨県までを包括している。死者およそ2万3000人、さらに未治療死が発生から8日で7400人余りと推測されている。未治療死というのは、停電による医療機器が使えなくなる可能性があるからだ。
更に、倒壊、焼失、半壊する住宅は314万戸にのぼるとされている。関東には1713万戸が存在しているが、その18%が住める状態ではなくなるということだ。仮に一つの住宅に平均して4人が住んでいたとすれば、1256万人が住む家がなくなるということになる。仮に地震が東京都内で発生した場合は首都機能は壊滅的な状態になるのは必至である。
南海トラフは東南海(名古屋沖)、東海(静岡沖)、南海(四国沖)と分割されており、それがほぼ同時期か1・2年後に別々に発生するとされている。
全壊する建物は239万戸、経済被害は220兆円。死者32万人、その内の7割が津波にによるもの。被災者6000万人ということで日本の人口の半数が影響を受けることになる。
この3地域を襲う地震は日本の工業に甚大な損害をもたらすことになる。更に、新幹線や高速道路は寸断されるのは必至である。即ち、日本列島の東と西が寸断されて人や物資の移動が遮断されることになる。日本経済に深刻な損害をもたらすことは確実である。
この2つの地震の影響によって富士山が噴火する可能性も非常に高い。1707年に噴火して以来現在まで休火山となっている。マグマが満杯に詰まっているはずだ。東京まで直線にしておよそ100キロだ。噴火すれば火山灰が東京まで届き江戸では5センチ、横浜で10センチ積もったというのが1707年噴火の記録がある。これによってコンピューターは機能しなくなる。また電気設備には火山灰が付着して停電が起きて、水や下水道も使えなくなる。この噴火による被害は2兆5000億円と推定されている。
損害の規模
関東直下型地震による損害95兆円、南海トラフ220兆円、富士山噴火2兆5000億円と甚大な損害をもたらすことになるが、事態はそれだけでは収まらない。それ以後20年間の経済的損失は関東直下型地震で778兆円、南海トラフで1410兆円という巨額の損害をもたらすことになるとされている。
日本のGDPは550兆円。即ち、この二つの大地震の発生は、日本のGDPの4倍に相当する金額までにのぼるということになる。
それに加えて、見逃され易いのが、一旦この大惨事が発生すると日本のGDPも減少するということである。兵庫県立大学の井上教授は南海トラフによる影響で1年で134兆円減少すると指摘している。
即ち、南海トラフが発生するだけで日本のGDPは550兆円から134兆円を差し引いた416兆円になるということになる。
また原子力国民会議によると、GDPと電力供給量は比例関係にあるとして、関東も含まれている。その場合の南海トラフの影響で日本のGDPは160兆円程度になると指摘している。即ち、このGDPの大幅な減少による影響は輸入品のボリュームに脆に影響することになる。例えば、2021年度の輸入総額は84兆7600億円。
仮に、GDPが大地震で大幅に減少してGDPが160兆円となると、輸入品のボリュームも大幅に減少させる必要に迫られる。食料の2021年の自給率は38%。残り62%を輸入に頼っている。その額が7兆3800億円だ。これもGDPが550億円の時と160億円の時とでは、その輸入ボリュームは大幅に削減を余儀なくさせられる。原油は16兆9700億円を輸入している。これも削減が必要となる。即ち、日本で物資不足が目立つようになるということである。
更に、日本は負債大国でもある。GDPの250%が負債で1200兆円。これまで政府は財政赤字分を国債の発行で補って来た。それも容易にはできなくなる。このような時点になっても、MMT理論を振りかざして日本円での国債発行だから破綻することはないといっておられる状況にはなくなる。その意味で日本政府は資金難に陥る。大量に紙幣を刷れば日本円は大暴落する。そしてインフレが高騰する。
対外資産から負債を差し引いた純資産は418兆円あると言っても、それは日本の負債を返済できる額でもないし、手元にない資金など存在しないようなものである。
巨額の資金不足に陥る日本
2大地震そして富士山が噴火すると、その死者、被災者、倒壊した建物、GDPの大幅な減少。政府には災害復興に充てられる資金はない。一部の自治体では真剣になって災害を最小限に食い止めるべく、その為の準備も進めている。ところが、政府に資金が不足すると支援ができなくなる。
更に、日本人は外国からの侵略に武器を持って立ちあがると世論調査で答えた国民の数は世界で最も低い国のひとつだ。このような国の国民が国家の存亡危機に見舞われた時に国民が一丸となって国家を守り、自分たちの苦境からの回復に団結して取り組む意志があるか筆者にはその確信が持てない。
だから、大災害の後に政治改革が起きるなど期待する前に、日本という国家そのものが崩壊するかもしれない。
この大惨事を前に国家の舵取りができるリーダー集団の誕生が必要になっている。