韓国反日活動家の“懲りない”主張

何をいっても分からない人がいる。もう少し厳密にいうと、何を言っても理解したくない人がいるものだ。韓国の文在寅大統領時代(在任2017年5月~2022年5月)には、日本人は隣人の韓国人との関係に常に辟易してきた。先ず、反日ありき、といった絶対命題から事が始まるから、日本側が実際、何を言っても理解されない、といった状況が生じた。

福島第一原発の処理水に関する最終報告書を公表したIAEA(IAEA公式サイトから)

文政権は幕を閉じ、尹錫悦政権時代に入って、ようやく相手側の主張を理解しようとする韓国指導者が登場してきた。慰安婦問題で外相時代に苦い経験をした岸田文雄首相は政権発足後も久しく韓国の政治家との対話を避けてきたが、尹大統領と会談できるまでに日韓関係は改善の兆しが見えてきた。ただし、韓国の歴代大統領の中には、任期の後半になって突然、反日活動に乗り出した保守系の李明博韓国大統領がいたように、尹大統領も任期が終わるまでその言動から目を離せない、というのが日本人の立場だろう。

ところで、日本外務省が22日、東京電力福島第一原発事故で生じた処理水の海洋放出について、韓国のインターネットメディアが「日本政府は国際原子力機関(IAEA)に100万ユーロの政治献金をした」という根拠のない記事を流し、あたかも日本側がIAEAに処理水問題で何らかの圧力を行使していると示唆したことに対し、強く抗議したという。

韓国の聯合ニュース日本語版によると、「東京電力福島第一原発の処理済み汚染水海洋放出に反対する韓国の革新系野党『正義党』の執行部らが22日、日本を訪れて海洋放出計画の撤回を促す抗議デモを行った」という。

同抗議デモに参加した同党の「福島汚染水阻止TF」団長を務める姜恩美議員は、「韓国国民の84%が汚染水の海洋投棄に反対しており、環境団体をはじめ市民社会団体、漁民などが積極的に反対の声を上げているが、これを無視したまま海洋投棄を強行する東京電力に強い遺憾を表明する」と述べたという。

福第島第一原発の処理水問題について、第3者の立場で、核エネルギーの平和利用を促進するIAEAは現地に専門家を派遣してその実態を検査してきた。その結果は最終報告書として先月31日に公表されたばかりだ。それによると、「日本の福島第一原子力発電所から放出される処理済み水の測定結果は正確であり、精度も高いと結論づけられる」という。

IAEAは、福島第一原発の処理水を海に放出する日本の計画の安全性に関して評価するために、独自のサンプリングと分析作業を実施してきた。その結果、先述したように、日本側の対応は正確であり、精度も高いものであったというのだ。本来はこれで「日本側の処理水の海洋放出にOKが出た」と受け取れるわけだが、韓国の野党は依然、不満なのだ。

韓国の野党側は、「日本側はIAEAに100万ユーロの献金をして、日本側の主張を受け入れさせた」という全く根拠のない情報をソース不明のままで流し、日本側に揺さぶりをかけてきたわけだ。ソウル発の反日報道に対しては無視するか、忍耐強く説明するかしてきた日本外務省も今回はさすがに切れたのだろう。「事実無根の無責任な偽情報流布」として強く抗議したのだ。

日本政府は毎年、IAEAには分担金を拠出してきた。同時に、IAEAが計画するプロジェクトに対しては通常の分担金の他に特別資金を拠出することがある。それは「政治献金」といったものではなく、あくまでもプロジェクトへの資金提供だ。

加盟国がプロジェクトを支援することはまったくノーマルであり、国連の各機関は加盟国に分担金だけではなく、必要ならば、追加資金の提供を加盟国に要請する。その意味で、日本側がIAEA側のプロジェクトに支援金を提供したとしても通常なことだ。それを「政治献金」だとか、「何らかの目的が隠されている」といった穿った解釈することは間違っている。

実際、韓国政府は22日に開いた汚染水に関する記者会見で、IAEA元幹部の韓必洙氏が、「これまでにさまざまなIAEA調査報告書が発行されたが、専門性と客観性が論争になったことはなかった」と強調し、「最終報告書の信頼性はIAEAのステータスに直結するため、単語ひとつのミスもないよう弁護士と専門家が(作成に)加わっている。専門的で客観的、妥当性のある結果を出すためIAEAは多大な努力を傾けている」、「最終報告書作成の過程では15~20人の専門家が協議を行うため、日本側が望む論理だけが反映されることはないといえる」と説明している(聯合ニュース日本語版)。

IAEA原子力安全・セキュリティ局ALPS安全審査ディレクター兼コーディネーターであり、タスクフォース委員長のグスタボ・カルーソ氏は、「この報告書とそれに含まれる分析結果は、IAEAの安全審査における重要なマイルストーンだ。このデータは、透明性のある厳密な科学的プロセスを通じた東京電力の分析パフォーマンスを示している」と述べている。

具体的には、①東京電力は、測定と技術的能力において高いレベルの精度を実証した。②東京電力のサンプル収集手順は、代表的なサンプルを入手するために必要な適切な方法基準に従っている。③東京電力がさまざまな放射性核種に対して利用した選択された分析方法は適切であり、目的に適合していた。④IAEAも参加している第三者研究所も、重大なレベルの追加の放射性核種を検出しなかった。

【参考】IAEA Report Finds Japan’s Measurements of the Treated Water to be Discharged from Fukushima Daiichi Accurate and Precise

ちなみに、韓国には原子力発電所は4カ所だが、各原発は4基以上の原子炉を備えている。主に、加圧水型原子炉だ。尹政権は文政権の脱原発政策を放棄し、新しい原発建設に積極的だ。同時に、原発の処理水の海洋放出は世界各地の原発で行われている。韓国の場合も例外ではない。

古里原発は毎年、50兆ベクトルのトリチウムを海洋に放出しているが、韓国国内で処理水の海洋放出で問題となったことはない。にもかかわらず、韓国の野党指導者、反日活動家は、IAEA側が問題ないと宣言し、古里原発より以下のベクトルを放出する福島第一原発の処理水海洋放出問題に抗議しているのだ。韓国の野党、反日活動家は懲りない人々だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。