スタートアップ企業を決めるのは「ビジネスモデル」ではなく「人」

Jirapong Manustrong/iStock

私が主宰するインナーサークル資産設計実践会は、個人投資家が集まるコミュニティーとして第17期9年目に入りました(第18期は2023年11月から開講です)。

今期は受講者数が160人となり、過去最大の規模まで増えています。

それとともに、投資情報が紹介されることも多くなりました。投資を実践したいという富裕層がこれだけ集まっているコミュニティは他にはありません。

投資案件は、国内外の不動産だけではなく、アート、アンティーク、コイン、ワイン、ウイスキー、ヴィンテージカーなど様々です。

そんな中で最近増えているのが、スタートアップ企業の紹介です。

とんでもないビジネスモデルの会社を紹介され、丁重にお断りすることもあります。その一方で素晴らしい可能性を持った企業との出会いもあります。

私がスタートアップ企業を判断する基準は、展開するビジネスモデルの可能性ではなく、リーダーとなる人の魅力です。

例えば、10代20代を対象とするような新しいビジネスのプレゼンテーションをされても、正直私にはもはや理解できません。

だから、ビジネスの内容を評価をするより、そのビジネスを展開する人のポテンシャルに注目する方が正しい評価ができると思っています。

その評価においては、収益へのコミットももちろん大切ですが、それだけではありません。

企業としての中長期の成長には、ターゲット顧客へのメリット、従業員に対するモチベーション、社会に対する貢献といった大きなビジョンが必要となります。

単に成長するマーケットに参入すれば儲かるといった理由で、起業しても長期的な成果にはつながらないと思っています。

また、新規ビジネスは思った通りにいかないことがほとんどです。

厳しい環境の中で、粘り強くあきらめない精神力、ビジネスモデルを現実に合わせて変えていく柔軟性、社会にインパクトを与えるという強い目的意識があれば、何とかサバイブすることができます。

スタートアップ企業への資金供給は、ベンチャーキャピタルが担っています。しかし、彼らがターゲットとするのはテクノロジーに特化したユニコーン(時価総額10億ドル)を目指すような企業が中心です。社会的に価値があっても、規模が伴わない会社にはご縁がありません。

資産設計実践会が、ベンチャーキャピタルが相手にしないようなスタートアップ企業と向き合い、個人投資家をつなげるプラットフォームの役割を果たす。それができれば、起業家と投資家の双方にメリットを提供できるのではないかと思っています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。