他人のことより自分に詳しくなりなさい

黒坂岳央です。

記事を書く着想を得るため、Yahooニュースの記事アクセスランキングを見ている。見るたびに思わされることがある。それは芸能人や有名人などのスキャンダルがあると、必ずといっていいほどランキング上位に来るという事だ。時には1位に一次情報としてのある人物の報道記事、2位に二次情報としてのその人物評価についてのオピニオン記事が来ることもある。

これは日本に限った話ではない。世の中には他人の動向を熱心に追う人が少なくない。だがこうした記事にまったく興味がない自分からすると「なぜまったく赤の他人にこれほど強い関心を持つ人が多いのか」と不思議になる。別に否定はしないがもっと有意義なことはあるのではないだろうか?

あくまで個人的には、赤の他人の情報をひたすら追いかけたり分析するゴシップに消費するより、自分自身の価値観や人生論、哲学に消費したいと思う。自身の視点から思うところを取り上げたい。

kazuma seki/iStock

他人を羨む必要はない

どこまでいっても自分は自分で、他人は他人、全く別個体の生命体という絶対的な事実がある。どれだけ強く憧れたり、思いを馳せても自分がその人物になることは絶対にできない。そして時折「あの人は羨ましい。つい比較をしてしまい、嫉妬すらしてしまう」という投稿が見られる。だが、そういう意見を見るたびに思うのは、いかに相手を真に理解できていないかということである。

世の中で悩みのない人など誰一人いない。金銭的な悩みが解決した人には、次は金銭的に解決できない悩みがクローズアップされるものである。承認欲求段階を乗り越えた人は、次に自己実現欲求段階で試行錯誤することになる。

つまり、すべての人は永遠に悩み続ける。そして他の人間の真の悩みは他人からは永遠に理解できない。「そんな小さなことで悩んでいるのか!」と一笑に付すような話でも、本人にとってはまさしく死にたくなるほど悩んでいたりする。だから隣の芝生は青く見える的な嫉妬をすることにはまったくの意味がない。その相手は自分が悩んでいない別の問題で死ぬほど悩んでいるからだ。他人を見て羨ましいと思うことには本質的に意味がないのだ。

あるスタートアップ経営者が会社をバイアウトして数十億円を手にしたが、手にした資金が理由でビジネス、投資、人間関係、将来、税金などあらゆることで悩み抜いて鬱に近い状態になった。しかし、精神科医に相談にいってもあまりに内容が高度すぎるため、悩みの本質の理解が得られず、結局周囲に相談できないままだという話を人伝いに聞いた。

他の人からすれば「数十億円を手にしたなら人生の悩みなどなにもないでしょう」と返したくなりそうな話だが、本人からすればこれまでの人生にない解決が難しく苦しい悩みを得たという話だ。

他人より自分に詳しくなろう

個人的に人生は「どれだけ自分自身に詳しくなれるか?」を探求する冒険のような要素があると思っている。

灯台下暗し、という言葉通り誰しも自分自身のことは驚くほど理解できていない。たとえば他人から見て「あなたにはこの分野で才能がある」と感じられても、当の本人からすると「いえいえこのくらい誰でもできるのだから」とアッサリ他人から見た才能を否定してしまうものだ。

また、「人生でやりたいこと」を掲げる人は多いがその願望は本当に自分が心から絶対にやりたいものか? と問われると疑問符がつくケースは少なくない。大体は原始的な欲望に火を付けられた借り物の欲求に過ぎない。

「高級車を乗り回し、人からモテて、高級料理を食べ歩いてすごいと言われたい!」みたいな話を願望と考える人は少なくないが、実際に高級体験をしてみると「なんだ、高級といってもこんなもんか」と拍子抜けするものである。つまり、真の自分の願望を正確に理解できている人は本当に少数派ということだ。

他人のゴシップを消費する時間や労力を、自分の内面の探求にリソースを向ける方が人生はより豊かになるし、偽の願望を追いかけるムダをしなくて済む。やりたいと思ったことを1つ1つ実践して、「これはよかった/よくなかった」と評価するプロセスでしか、自分自身を理解することはできないと思っている。つまり、生きる中で踏み出した歩数分、自分自身を理解することにつながるのである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。