第9波に備えて6回目ワクチンを接種すべきか?

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7月に入り新型コロナ感染が急増し、第9波が始まったとする報道が続いている。とりわけ、沖縄の感染者数は突出しており、第8波のピークを凌ぐ感染者数である。政府コロナ対策分科会の尾身茂会長は、沖縄の感染者の急増は、ワクチン接種率の低いことが影響している可能性があるとコメントしている。

5月8日から、高齢者や医療従事者を対象に6回目ワクチン接種が開始されたことにともない、感染症の専門家は9波に備えてのワクチン接種を勧めるが、6回目ともなると躊躇する高齢者も多いと思われる。しかし、7月4日現在、ワクチン接種が始まって8週になるが全国の高齢者の接種率は40%と、1回目、2回目の接種率が接種開始8週目の時点でそれぞれ29%、32%であったことと比較すると減ってはいない。

図1は、ワクチン接種が始まった2021年以降におけるワクチン接種開始日とコロナ感染者数、コロナ死亡者数と超過死亡数との関係を示す。ワクチン接種を開始すると例外なく、感染者数が増加し、続いてコロナによる死亡者数、超過死亡のピークが見られる。今回も同じパターンをとると予想される。

図1 ワクチン接種とコロナ感染者数、コロナ死亡者数、超過死亡の関係

図2は、北海道、秋田県、東京都、大阪府、沖縄県の第7波と第8波におけるコロナ感染者数の推移を示す。

図2 第7波と第8波におけるコロナ感染者数の推移

第7波と第8波では、各県の感染状況が全く異なる。第7波においては、沖縄県は人口10万人あたり全国で最多の感染者数を記録した。一方、北海道や秋田県におけるピーク時の感染者数は、沖縄県の1/4程度であった。

ところが、第8波では、沖縄県の感染者数は全国で最も低く、北海道や秋田県の1/8程度であった。今回、沖縄県の感染者数が第8波のピークを超えたことが強調されているが、沖縄では第8波の流行が軽微であったことに注意する必要がある。

図3には第7波と第8波におけるワクチン接種率とコロナ感染者数の関係を示す。第7波では負の相関が見られ接種率の低い沖縄が最大の感染者数であったが、第8波では正の相関となり接種率の低い沖縄が最小の感染者数となった。

図3 ワクチン接種率、抗N抗体保有率とコロナ新規感染者数

筆者は以前、各県の新規感染者数に関わる因子として、ワクチン接種率、抗N抗体保有率が関与することをアゴラに報告した。

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新たに、2023年2月19日から27日における各県の抗N抗体の保有率が公表されたことから、今回、同様の検討を行った。

新規感染者数は第8波の全期間における人口10万人あたりの感染者数を、県別の5回目ワクチン接種率は首相官邸ホームページに公開された値を用いた。図3に示すように、前回の検討と同様に、ワクチン接種率は相関係数が0.90と正の相関、抗N抗体保有率は-0.79と負の相関を示した。

ワクチン接種率と抗N抗体保有率のどちらがより強く感染者数に影響を与えるかを、以下のデータを用いて重回帰分析で検討した。

  • 目的変数Y:2022年10月1日〜2023年2月28日の人口10万人あたりの新規感染者数
  • 説明変数X:5回目ワクチン接種率(%)
  • 説明変数X:抗N抗体保有率(%)

図4に重回帰分析の結果を示す。有意F値が0.0079なので有用な回帰式が得られたと判断した。ワクチン接種率のP値は0.028と有意であった。また、説明変数の影響度をみるにはt値で判断するが、接種率のt値が2.87と2.0以上であることからワクチン接種率が新規感染者数に強く影響したことが示された。

図4 重回帰分析によるコロナ感染者数に関わる要因の検討

図5には、第7波から8波にかけてのわが国の追加ワクチン接種率と新規感染者数の世界における立ち位置を示す。ワクチンの接種率も新規感染者数も世界でもダントツで、今回得られたワクチンを打てば打つほど感染者数が増えるという結果に一致する。

図5 2022年後半におけるワクチン追加接種回数とコロナ感染者数の推移

第7波と第8波で、ワクチン接種率と感染者数の関係が一変した理由はなんであろうか。

第7波と第8波の主流変異株はBA5で、流行株が変わったわけでもない。重回帰分析の結果では、抗N抗体の保有率は新規感染者数に大きな影響を与えていない。

わが国では、オミクロン対応2価ワクチンによる5回目接種が10月から開始されたが、ワクチンの頻回接種により免疫能の低下を示す報告が続いている。3回のワクチン接種により、武漢株、アルファ株、デルタ株に対する抗体結合反応、中和抗体の産生、メモリーB細胞の頻度、T細胞免疫能の増強が見られたが、オミクロン株に対しては、かえって、抑制されることが示されている。

ワクチンを3回接種するとオミクロン株に対する免疫能が特異的に抑制されるようである。マウスにおける実験でも、組み換えワクチンを追加接種すると、中和抗体のみでなく、オミクロン株に対する細胞性免疫も抑制されることが示された。さらに、ワクチンの頻回接種はIgG4を誘導し、抗ウイルス効果を減弱させることも明らかになった。5回目接種以降に見られたワクチン効果の逆転現象については、頻回接種が免疫能に与える影響についても考慮する必要がある。

日本は、世界の潮流とは反してワクチンの6回目接種を推進する唯一の国である。ワクチン接種を中止した国の状況については情報を入手できるが、6回目接種の効果については海外の情報をあてにするわけにはいかず、自ら生み出すほかはない。わが国には、ワクチンの効果を科学的に評価するシステム、さらには、悪い結果となった場合に責任を取る体制はあるのだろうか。