日本衰退の元凶とは何か?

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政治家の低い能力が日本後退の元凶だ

「政府の信頼度と国をリードする政治家の能力の相関」という世論調査がある。OECDと一部それ以外の国を含めたものである。筆者の手元にあるのは2007-2008年のものであるであるが、こと日本について言えば、この調査内容は現在も通用すると思う。この調査から日本の政治家リーダーたちの能力は30%に届かない、また政府への信頼も20%を少し超える程度でしかない。

これはG7の中で最も低い率である。イタリア、英国、フランスもリーダーたちの能力は40%を満たさないが、信頼度は40%から50%の間にある。政治家のリーダーが最も優秀なのはドイツで60%近い、信頼度も50%。また政治家の能力そして政府への信頼度が高いのはカナダで60%である。

日本よりも政治家リーダーの能力が低いとされているのはアイルランド、ギリシャ、チェコ、エストニア、アイスランド、ハンガリーとなっている。しかし、政府への信頼度となると、この6か国の中で唯一ハンガリーだけが日本とほぼ同等の信頼度でしかない。他5カ国は日本より僅かではあるが信頼度は上である。

隣国の韓国はリーダーたちの能力は40%近く、政府への信頼度は30%に近い。

筆者が在住しているスペインは政治家の能力は40%を超え、政府への信頼度も40%を超えている。スペインは独裁国家から民主化になった1978年当時を回顧してみると、この二つの点について当時は恐らく70%近いレベルに達していたと想像する。しかし、それから45年経過した現在の政治家はレベルも小粒になっている。

日本は首相が駅弁首相とでも言えるように、首相の交代が余りにも多すぎる。戦後の吉田茂から始まって岸田現首相まで34人の首相が誕生している。一人の首相の平均任期は2.2年ということになる。これでは政府が一貫性のある政策を立案し実行に移すのは不可能である。スペインだと1976年の初代首相から現在まで7人の首相だけである。一人の首相が平均して6.7年政権に就いていたことになる。

長期に亘って経済を成長させない自民党が今も政権を担っている不思議

日本で1990年からバブルが崩壊した以降、現在まで日本経済が立ち直らずにいるのも特に政治家リーダーたちの能力が低いということを証明している。政策の立案、決定、実行までに至る過程の遅さは良く知られたことである。

例えば、1980年から2020年までに日本のGDPは僅か2倍に成長しただけである。米国とカナダは7倍、フランスは5倍、ドイツは4倍、イタリアは8倍、英国は9倍にそれぞれ成長した。

国の債務を見ると、1980年代から現在に至るまでにほぼ5倍近い債務の増加で、GDPの250%にも相当する負債にまで膨れ上がっている。特に、安倍政権がその増大を促進。その安倍政権での平均成長率は僅か0.9%でしかない。経済成長も果たしておらず、しかも負債を極度に増加させた安倍氏が国葬されたというのは正に国民の間で政治家への不信が起きるのは当然である。

更に、指摘するなら、一人当たりのGDPを見ると、2021年には世界で26位まで後退している。その一方で、自民党やメディアは日本は経済大国で、GDPで世界3位というのを強調して来た。GDPは消費+投資+政府支出+貿易収支ということから、日本のように1億人を超える人口が多い分、その消費が大きく、高いGDPを維持できるということだ。その一方で、労働生産性は低く、給与も1997年以降減給となっている。

このように長期間に亘って日本経済に伸展がないというのは政治家が無能であること以外何ものでもない。

貧困層がG7で2番目に多い日本

その一方で、国民の税金の負担率は年々上昇している。だから相対性貧困率もOECDの中ではメキシコ、トルコ、米国に次いで4番目に貧困率の高い国である。相対性貧困率というのは、国民所得の平均値以下の人々の割合を示したもの。だから、G7の中では日本は米国に次いで2番目貧困層の多い国なのである。

1985年の相対的貧困率12%から日本のそれは次第に増えている。例えば、260万人の子供が貧困者なのである。それに対して政府は何もして来なかったということになる。貧困者への取り組みは政治家にとって最も重要な課題のひとつであるべきだ。

自民党は企業の為の政党

これまで日本のメディアは政府と主要外国の為のメディアであって、国民の為のメディアではないので、このような日本の現状を真剣に報道することを怠って来た。

しかも、日本の政界は自民党に代わって政権を担える政党は皆無。その上、自民党の議員は企業の政治献金で成り立っているので、企業に不利な政策は取らない。

例えば、円安で輸出が伸びて企業は儲かった。企業の2021年の内部留保金は516兆円もあった。その一部でも社員の昇給分に充てることもできたはず。しかし、企業はそれをやっていない。また政府も企業にそれを敢えてさせようとしなかった。例えば、内部留保金に課税をするという法案を政府が決定すれば、企業もそれを給与の増加に充てていたであろう。そのような策は企業の政治家への圧力もあって、政府はそれを保留にしたままで現在に至っている。

また仮に政府が内部留保金に課税する法案を決議しようとしても時間がかかる。何しろ、日本の官僚システムは調整という過程を通過しないと何もきまらないのが現状だ。政府が決めても、献金を貰っている与党議員は企業からの圧力があってそれに反対する。政府と与党議員との間での調整が必要になって来る。それを官僚が請け負って調整しようとする。首相はトップダウンで決定することは避けて、調整の結果を待とうとする。結局、最終的には決定に時間がかかり、企業にとって不利にならないような結論になってしまうのである。

だから、自民党があたかも一党独裁制であるかのように長期政権をこれからも担って行く限り、日本はこのまま後退を続けるのは必至である。

今の日本の政治に必要なのは政治献金に依存しない過半数の議席を持つ新しい政党を誕生させて首相を輩出し、首相が独裁的にトップダウンで政策を実行する。このような政治を築き上げない限り日本の後退はこれからも続き、回復することはないであろう。