養殖ブリ日本一の鹿児島県長島町に地方創生のヒントを見た

田原総一朗です。

7月3日、僕は鹿児島県長島町を訪れた。地方創生について調べていると、ある方に「とても前向きで、面白い町がある」と教えてもらった。その町が鹿児島県の最北端の町、長島町だったのである。人口は約1万人。

まずは雄大な島の自然にびっくりした。そしてすばらしい産業があることを知った。長島町は養殖ブリの生産量が日本一。僕も食堂でブリの刺身をいただいたが、脂がのってとても美味しかった。もう一つ、長島町は、日本の温州みかん発祥の地なのだ。約500年前、中国から温州みかんが伝わったのが長島町だったという。

温暖な気候のもと、柑橘類の栽培、そしてジャガイモやサツマイモ、米など他の作物の栽培も盛んだ。経済の根幹である、第一次産業は大事だ。漁業、農業、2つの柱がしっかりあるのが、とてもすばらしいと思った。

その柑橘類の不知火(デコポンの名で知られる柑橘類)の農家山上農園の山上博樹さんにもお会いした。山上さんは「家庭教師のトライ」の元執行役員だ。実家の不知火の味を絶やしてはならないと長島町にUターンし、今は農業をしながらトライで実践してきた経験を活かし、長島町の教育問題にも取り組んでいる。90年代に出来た柑橘類を広めるための建物の中にコミュニティの場を作ったりとても前向きな取り組みをしている話を聴けた。

そして、川添健町長と話をした。川添町長は、2005年、旧東町町長に就任。2006年東町と長島町が合併、長島町の町長となった。約18年にわたって、町民を見守り続けている。

川添町長は全町民の名前を、ほぼ憶えているという。そして、町民の方々の困りごとや願いごと、苦情や相談、何でも直接聞く。スピードが大事だから、聞いたらすぐに対応する。役人にありがちな、「できません」は一切言わない、ときっぱり語った。

産業があって、政治に柔軟さとスピード感がある。だから町に活気がある。Uターンはもちろん、移住者も増えているそうだ。今はオンラインでできる仕事も多い。この自然に囲まれて暮らしたいと思う人は、東京や大阪にもたくさんいると思う。

何より、町民のみなさんが自分の町に、自信を持っていることがすばらしかった。地方創生を考えるうえで、とてもいい刺激をいただいた。地方にいくと、まだまだ自分には知らないことがあると思う。これからもどんどん、多くの自治体を訪ねてみたい。


編集部より:この記事は「田原総一朗 公式ブログ」2023年7月14日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。