セキュリティ・クリアランス未開国、日本

Orhan Turan/iStock

日本はセキュリティ・クリアランス未整備国です。これは自分の国がインテリジェンスに無関心な間抜けな未開国だと告白しているに等しいしですし、外国からも信用されません。それが長年放置されてきたのは自民党にもその意識がなかったわけで、そんな政党が長年与党だったということです。

当然米国のイコールパートナーなんぞとは思っていません。

第一に、国会で秘密会議ができない。クローズの会議でやった内容が、夕刊にでちゃう国です。これも理由に外交や国防では議員か関連省庁にも防衛省は秘密を隠します。
だから防衛外交員会なんて機能していないわけです。

それに政治家の多くが問題だと思ってこなかった。

機密扱う資格制度、「G7唯一の未整備国」返上なるか

セキュリティー・クリアランス制度、「G7唯一の未整備」返上へ - 日本経済新聞
政府は経済安全保障の分野で新たな法整備を急ぐ。機密情報にアクセスできる人を決めるセキュリティー・クリアランス(適格性評価)と呼ぶ制度だ。「主要7カ国(G7)で唯一の未整備国」。日本の不名誉な称号の返上へ詰めるべき論点はまだ多い。とりまとめ役の高市早苗経済安全保障相は21日の記者会見で「秋にも与党などと調整が始められるよ...

日経はこれを夕刊の記事にしています。同紙がどのようにインテリジェンスを考えているかよく分かります。

政府は経済安全保障の分野で新たな法整備を急ぐ。「主要7カ国(G7)で唯一の未整備国」。日本の不名誉な称号の返上へ詰めるべき論点はまだ多い。

2024年通常国会への法案提出をめざしているものの、順風満帆とは言い難い実情も浮かぶ。

セキュリティー・クリアランスとはそもそもどういう制度か。例えば米国はまず機密情報の重要度をトップ・シークレット(機密)、シークレット(極秘)、コンフィデンシャル(秘)に分けている。

その上でそれぞれにアクセスできる人を審査し資格を与える。情報の重要度によって審査の内容や資格の有効期間に差をつけており、連邦政府職員のほか幅広く民間人にも付与してきた。

内閣府によれば米国での資格取得者は400万人を超え、官が7割、民が3割のバランスという。民間だけで120万人いる計算だ。

日本で14年に施行された特定秘密保護法には「似て非なるしくみ」がある。同法は情報保全の対象を防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止という4つの分野に絞った。米国と同じように見えても結果、情報にアクセスできる大半は国家公務員に限られる。21年度末時点での資格取得者は13万4千人ほどで、民間人は3%弱の3400人程度にとどまる。

ビジネスの観点からは日本の出遅れた対応を世界は待ってはくれなかった。

資格制度が未整備であるがゆえの弊害も出ていた。海外企業から技術協力の依頼があったものの「資格がないために調整に時間がかかり、契約にも至らなかった」。政府の有識者会議に参加した電機メーカーが明かした実話だ。

国際会議に参加できなかったり日本の研究者らが排除されたりした事例も相次ぐ。資格制度の有無が企業の競争力はおろか選別の基準になった。こうした事情を踏まえ高市氏も「日本企業がみすみすビジネスチャンスを失うとの危機感が強い」と語る。

政府の有識者会議は6月に中間論点整理を公表した。保全すべき情報としては①経済制裁に関する分析②経済安保上の規制制度の審査③サイバー分野での脅威や防御策④宇宙・サイバー分野などの重要技術――を挙げた。

波乱の芽はむしろ誰に情報の取り扱いを委ねるかという点に潜む。米欧は「バックグラウンドチェック」と呼ぶ個人への調査を実施する。犯罪歴や精神疾患の有無、借金の状況に至るまで踏み込んで調べている。

日本では特定秘密保護法の規定にならって「本人が同意した場合のみ審査を実施する」という案を軸に検討が進む見通しだ。それでも企業の担当者に限らずプライバシーの侵害にあたるとして身辺調査を嫌う人は多い。

罰則も明記しなかった。特定秘密保護法は故意に漏らした場合は最高で懲役10年とする処罰規定がある。高市氏はかねて「10年以下の懲役はマストの要件」との立場だ。

機密を扱う資格制度で米国は身辺調査などに年1兆円程度を投じてきたとされる。相応の費用をかけるのは何かを失ったときの代償のほうが大きいと考えるからだ。コストの問題も含め議論に手間取る状況が続けば「自分の国は自ら守る」という理想には一向にたどりつけない。

問題なのは海外のセキュリティー・クリアランスは属人的なものです。これ対して我が国は機密保持の規格は社員とか官僚という組織内の身分に与えられます。公的な記者証もそうです。それは記者個人に与えられます。会社を移ってもいいわけです。

対して記者クラブ制度だと、素行調査も行わず、会社の辞令で全くの素人を防衛省担当になったりするわけです。素人だから何が機密だかもわかならないし、共同通信の記者だから悪いことをしないだろう、という性善説で記者クラブに入って記者証も発行されます。

これは文化的な物が大きいです。海外では軍から防衛企業に移転し、また戻ることもあります。また同業他社に転職も多いわけです。

例えばKMWのPR担当者が、気がついたらエアバスヘリのPR担当者だったりします。会社内で畑違いの部署に配属は普通されません。本人もその道のスペシャリストとして経験を活かして仕事をしようと思うし、そうしないとビジネスの世界で生き残れません。ですからもっと活躍できる、条件の良い企業に転職するのが普通にあるわけです。

対して我が国は一生同じ会社に務めることが「偉い」とされてきました。それは退職金の問題もあるかと思います。

このような組織文化のもとに、属人的なセキュリティ・クリアランス制度を取り入れるのは大変抵抗が大きいと思います。ですが、抵抗が大きいからと先延ばしや骨抜きにすれば、まずます外国からは信用されなくなりますし、安全保障や国防、インテリジェンスの面でますます不利になっていきます。

記事ではアメリカ大好き日経様のためか米国の例しか挙げていませんでしたが英国やオーストラリアなどでは同様ですが、違ったシステムで運用しています。我が国はこれらの国の制度を参照にすべきだと思います。

無論兵器の国際開発でもセキュリティ・クリアランスが整備されていないと大変不利になります。
これを整備しないで、輸出を増やすのだ、共同開発を増やすのだと騒いでいるいるので、頭がおかしくなりそうです。

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陸上自衛隊に装備の開発・調達する能力はない

ネット、紙に関わらず既存メディアでは色々と制約が多いと感じることが増えてきました。そんなわけで、独自に記事を公開してマネタイズする方策を探り始めました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年7月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。