なんで女性議員団のフランス視察って大炎上したの?と思ったときに読む話

先日、自民党の女性議員団がフランス視察の際にSNS投稿した写真が「昭和の海外視察みたい」と大炎上しました。

【参考リンク】今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物

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若い人のためにフォローしておくと、昭和には大企業の偉い人や政治家が大勢で海外視察という名の慰安旅行にいって羽目を外すというのが広く行われていました。

企業に余裕がなくなって今ではすっかり影を潜めましたが、まさか令和の世に38名という規模で大々的にパリまで繰り出したのはビックリですね。

しかもやってるのが自民党女性局って……どちらかというとそういう古い因習を先頭に立って駆逐する側じゃないんですかね。やってることまんま昭和のオッサン丸出しなんですが。

とはいえ、本人たちはもちろん、多くの人もここまで炎上するとは思ってなかったはず。

なぜ「一昔前だったらなんてことなかったであろう一枚の写真投稿」がここまで炎上してしまったんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。

きっとそれは、今後何が起こるのかを示唆してくれることでしょう。

なぜ、今までだったらなんということもない海外視察ネタが大炎上したのか

意外と気づいてない人が多いんですが、今の日本円は50年ぶりの実質円安状態にあります。

【参考リンク】日本の株と不動産はなぜこんなに値上がりするのか。それは「半世紀ぶりの実質円安」だから…

日本の株と不動産はなぜこんなに値上がりするのか。それは「半世紀ぶりの実質円安」だから…
日本株はバブル崩壊後の最高を更新、不動産は首都圏で新築マンション価格が過去最高を1年で1000万円以上更新するなど異常事態が続いています。この状況、「実質実効為替相場(REER)」の視点から読み解くと、本質が見えてきます。

結果、インフレがすごい勢いで進展中で、つい先日はとうとう日米の物価上昇率が逆転したことが話題となりました。

【参考リンク】日本の物価伸び率、米国を8年ぶり逆転 賃金上昇は鈍く

日本の物価伸び率、米国を8年ぶり逆転 賃金上昇は鈍く - 日本経済新聞
日本の6月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品も含む全体の指数が前年同月比3.3%のプラスとなり、3.0%の米国を追い抜いた。およそ8年ぶりの日米逆転だが、賃金の伸びは見劣りする。岸田文雄政権が目指す「物価と賃金の好循環」は遠い。賃上げが進まないと消費が冷え、成長に響きかねない。総務省が21日発表した6月の消費者物価指...

ガソリンや牛肉、小麦といった輸入に依存したものはもちろん、国内で作っている農作物、鶏卵といったものまで値上げはとどまるところを知りません。飼料や肥料は輸入しているし輸送コストも上がるから当然ですね。

でも、円安の破壊力をもっとも痛感できるのは海外旅行でしょう。

ちょっと前までは夏休みは海外で過ごすのが当たり前だったけど、ここ数年は国内で~という人たちは多いんじゃないですかね。

ちなみに筆者は大学生の時に中国からシルクロード通ってエジプトまで行くという世界半周旅行を3か月くらいでやったことがあります。

別に金持ちだったわけじゃなくて、90年代は3か月くらいバイトすればそれくらい普通にいけましたから。

今の学生を見てるとバイト代で海外旅行なんてどだい無理な話ですね。「最近の若者は内向きだ」みたいな意見はまったくナンセンスでしょう。

さて、そうなってしまった原因ですが、言うまでもなくアベノミクス以降の異次元の金融緩和にあります。

「日本の停滞の原因はデフレであり、デフレさえ脱却すれば全部うまくいく」というアレですね。
念願のデフレ脱却で本当にうまくいっているのかは「?」ですが。

フォローしておくと、アベノミクスにもいいことはいっぱいあります。それは以下のようなものです。

・都市部の不動産価格や株価が上がった
・インフレになったので企業は賃金据え置きで実質賃金を下げられるようになった
・インフレになったので消費税、所得税等の税収が増えた(あと社会保険料も)

実際、筆者の周囲でも、それなりの資産持ってる人、会社経営者やその大株主といった人たちは大変潤ってるしインフレを歓迎してます。

あと将来世代のために財政再建を気にかける人も高齢者や無職からも幅広くインフレ税を徴収できるようになったことは喜んでます(笑)

でも、資産なんて持ってなくて、「賃上げしないんだったらいつでも辞めてやるよこんな会社!」って上司に言えないような人にとっては、単に物価が上がって払う税金が増えただけなんじゃないでしょうか。

いや、実質賃金が下げられるようになったことで経営が安定するというのは長い目で見ればすべての労働者にとってメリットだし、インフレ税がっつり取れるようになったことも真面目に働いている勤労世帯にとっては凄く有意義なんですけど、実際問題として日常生活でそれらのメリットを意識している人は多くはないでしょう。

重要なのはアベノミクスの良し悪しではなく、有権者が今どういう心情なのかということなんです。

筆者のざっくりした印象ですが、9割くらいの人はインフレにメリットよりデメリットを多く感じているはず。

要するに、社会全体にやり場のない鬱屈したガスが充満している状態だったわけですよ。そこでこんな写真投稿するのは、火にガソリンぶっかけるようなものでしょう。

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筆者自身は、別に議員が何人でどこに行こうが気にはしないです。そんなもん、高齢者の社会保障給付に比べれば髪の毛みたいなもんですから。

筆者がショックを受けたのは、どうやら自民党の議員は自分たちが何をしてきて、日本がどういう状況に陥っているのか、まったく理解していないらしいという事実ですね。

38人もいて「いや今こういうのはオープンにしちゃまずいでしょ」みたいな声が一人も出てこなかったというのは衝撃的です。

そんな初歩中の初歩すら理解できてないんだから「高齢者の社会保障給付で現役世帯が死にかけている」とか「とりわけサラリーマンが4割も天引きされていて、さらなる負担増のリスクが高まっている」なんてことは想像すらしていないと思いますね。

たぶん「バラマキで子育て世帯を全力応援♪」とか言って笑顔でサラリーマンの天引きを上げようとしてくるでしょう。

バラまくんなら最初から取るなとか、10天引きしても中抜きで子育て世帯に回る頃には3くらいになってるとかいった発想は、残念ながらこの人たちは全く持ち合わせていないと思われます。

その悲しい現実をばっちり思い知らせてくれたことが、炎上の背景にあったように思いますね。

以降、
いっぱい取っていっぱいバラまくのが自民党
維新の支持率がじわじわ伸びている背景にあるもの

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2023年8月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください