単独では政権をとれぬ日本共産党の最大の弱点

日本共産党の革命戦略

日本共産党は日本の社会主義革命を目指す「革命政党(第8回中央委員会総会宣言)」であるが、そのための革命戦略は他の野党や市民団体などとの「共闘」を重視する統一戦線戦略である(党綱領四「民主主義革命と民主連合政府」参照)。すなわち、日本共産党は単独では決して政権をとれないのである。

日本共産党は1973年に他の革新政党、革新勢力や、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、民主的な人々との統一戦線の政府である「民主連合政府」を提唱した(日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年上」1994年新日本出版社)。

しかし、50年以上が経過しても実現の見通しが全く立たないのが現状である。

日本共産党の著しい党勢退潮

それどころか、日本共産党の党勢は近年著しく退潮した。党員数、赤旗購読者数、地方議員数、国会議員数は最盛期の1970年~1980年代に比べ半分以下となっている。その原因については識者により様々な分析があるが、最大の原因は、労働者階級の生活水準の向上にあると筆者は分析している。

現在ではマイカー、マイホーム、電化製品を持ち、家族で海外旅行を楽しむ労働者も少なくない。そのため、革命を遂行するプロレタリアート(賃金労働者)としての「階級意識」(ルカーチ著「歴史と階級意識」1972年未来社)も希薄になった。

評論家蔵原惟人元共産党中央委員会幹部会員もすでに1979年に「現在の労働者は無一物の無産者ではなく、自家用車も持っている。このような変化に共産党も対応する必要がある」(蔵原惟人著「蔵原惟人評論集9巻」1979年新日本出版社)と述べ、労働者階級の生活水準の向上を認めている。

マルクスは主著「資本論」(向坂逸郎訳昭和46年岩波書店)で、資本主義が発達すればするほど資本の有機的構成が高度化し、相対的過剰人口が増え、労働者階級は窮乏化し、階級闘争が激化して、社会主義革命が不可避であると主張した。

しかし、マルクスの予言に反し、先進資本主義国では労働者階級の生活水準が向上したため、社会主義革命は起こっていない。このため、日本共産党のみならず、フランス共産党やイタリア共産党などの西欧共産党はいずれも著しく党勢が退潮している。これは構造的問題である。

単独では政権をとれぬ日本共産党の最大の弱点

このような理由により、日本・西欧の先進資本主義国では構造的に社会主義革命が極めて困難である。その上に、日本共産党は外交安全保障政策として、現在も「自衛隊違憲解消」「日米安保廃棄」(党綱領四参照)の基本政策を堅持している。

このような基本政策はロシアによるウクライナ侵略や中国の覇権主義・台湾有事・尖閣有事の危険性を考えれば、立憲民主党を含む他の野党のみならず、多数の日本国民が不安に感じるのは当然と言えよう。なぜなら、自衛隊や日米安保を否定すれば、日本の核を含む抑止力自体が成り立たないからである。

したがって、日本共産党としては、構造的に社会主義革命が極めて困難である以上は、「共産主義イデオロギー(マルクス・レーニン主義)」を放棄し、漸進的な改革を進める「社会民主主義政党」に脱皮する以外に道はない。そして、「自衛隊違憲解消」「日米安保廃棄」の基本政策を放棄しなければ、立憲民主党をはじめ他の野党との統一戦線戦略としての「共闘」は不可能である。

日本共産党の党勢を考えれば、共産党単独での政権獲得は不可能であり、統一戦線戦略としての他の野党との「共闘」が不可欠である。これは同党の最大の弱点である。

したがって、日本共産党が政権を獲得するためには、共産主義イデオロギーであるマルクス・レーニン主義の放棄と自衛隊違憲解消、日米安保廃棄の基本政策の放棄により、漸進的な社会民主主義政党に脱皮し、立憲民主党をはじめ他の野党との「共闘」による「連立政権」への参加以外にはあり得ない。かつて、イタリア共産党は社会民主主義政党に脱皮し、イタリア中道左派連合「オリーブの木」と連携し1996年の総選挙に勝利して政権に参加した歴史がある。