東京から消えていく「カオスな楽しさ」

東京という街の最大の魅力は、近代的な高層ビルの隣に昔ながらの商店街があったりして、無計画に開発されたことによって「カオスな楽しさ」が生まれていることです。

友人の投稿で知り、今週出かけた大森駅前も、まさにそんなカオスな街でした。

京浜東北線で品川駅からわずか2駅。JRの駅ビルもあり利便性の高い住宅地らしく、たくさんの乗降客がいました。

整然とした駅前から歩いてわずか数分で、昔ながらの飲食店が密集している雑然とした商店街が現れます。ネオンを見ただけで、ワクワク感が高まる何とも魅力的なエリアです。

清潔感はあるものの無機質な駅ビルと、お世辞にも綺麗とは言えない飲食店エリアの無計画なモザイクが何とも不思議です。

その中にあるお目当ての有名居酒屋に入りました(写真)。夕方4時からの営業で早い時間から地元の人たちで満席。

もつ煮込みからお刺身盛り合わせ、ニラ玉、焼きそば、馬刺しまで何でもあり。街並みもカオスですが、店内もカオスです。

接客担当の2人の女性店員がテキパキと注文をさばき、大量のメニューから出来上がったお料理を手際よく運んでいます。ここには食券の販売機もなければ、クレジットカードも使えません。

商店街の並びには他にもお店がたくさんあって、スペインのサンセバスチャンのバルホッピング(バーのはしご)ように、居酒屋のはしごが可能です。

23区のあちこちで急激に進められている再開発によって、このような昔ながらの街並みが破壊され、無機質な高層ビルが立ち並ぶ風景に変わっています。

私が良く行くことがある八重洲や虎ノ門も、お気に入りのお店は再開発で移転したり廃業したりと、利便性は高まったかもしれませんが、味気ない街になってしまいました。

来年引っ越しをする予定の晴海フラッグも、電柱が地下に埋め込まれ、整然とした清潔で秩序のある街並みが整備完成する予定です。しかし、そこには昔ながらの居酒屋もなければ、家族経営の八百屋さんもありません。

きっと大手の飲食チェーンと大手の流通チェーンばかりが集まった、均一化され面白味の無い街並みになってしまうと想像します。

カオス好きな私が、整然とした計画都市に果たして馴染むことができるのか。引っ越す前から心配です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年8月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。