円安とインフレで変わる国内観光地

時間がポッカリと空いたので、サクッと熱海に出かけてきました。夏休みということもあるかもしれませんが、平日にも関わらず駅前には観光客がたくさんいて、予想外の混雑に驚きました(写真)。

外国人観光客もいましたが、多くは日本人の家族連れのようなグループです。

コロナ禍が終焉して、リベンジ消費などと言われています。旅行に関しても、今までの移動規制のフラストレーションを晴らすかのように、たくさんの人が出かけています。

しかし、日本人の旅の目的地は随分変わったように思います。

円安によって、日本人にとっては海外旅行が高嶺の花となりました。特にヨーロッパに出かける日本人の数が減ったように思います。

また、給与水準が上がらない中の物価高もあって、節約志向からいわゆる「安近短」の旅行を選択する人が増えています。

一方で、外国人は入国審査の緩和に伴い、円安メリットを享受できるため観光客が国内に大量に流れ込んでいます。彼らも東京、京都といったありきたりな観光地だけではなく、地方にも出かけるようになりました。

これらの環境変化の結果、日光、箱根、熱海、鎌倉といった東京近郊の手軽な観光地が人気となり、日本人、外国人ともに観光客が殺到しているのです。

このような観光パターンの変化は、これからも当面続くことになりそうです。

熱海の駅前商店街は、かつての干物とかまぼこの寂れた街のイメージが薄くなり、熱海プリンに代表されるスイーツ系のお店が増えています。なんだか原宿の竹下通りに来たような気分です。

雑多なお店が密集するいかにも日本らしい猥雑な情景ですが、賑やかな街になるのは地元の人には良いことなのかもしれませんが、昔の温泉街の風情が消えていくのは寂しくもあります。

多くの日本人が海外旅行もヨーロッパではなく、近場で安いアジアに出かける。国内旅行も日帰りや1泊で行けるようなあまりお金のかからない近場を選ぶようになる。

熱海の人気は日本人の没落の裏返し。そう思うと、街の賑わいが何だか哀しく見えてきました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。