米8月ADPから7月求人件数まで、労働指標は弱含みが優勢

米8月ADP全国雇用者数は前月比17.7万人増と、市場予想の19.5万人増を下回りました。前月の37.1万人増(31.2万人増から上方修正)から大幅に減少し、5カ月ぶりの低水準。ただし、2021年2月以降の増加トレンドを維持しています。

チャート:米8月ADP全国雇用者数、5カ月ぶりの低水準


(作成:My Big Apple NY)

その他の労働指標を拾っていきましょう。

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▽米8月チャレンジャー人員削減予定数は前月比3倍増、採用者数は2016年2月以来の低水準

米8月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で約3.5倍増の7万5,151人と、15ヵ月ぶりに減少した前月から増加に転じた。前月比でも約3倍増と、3カ月ぶりに増加した。

チャート:米8月人員削減予定数は、3カ月ぶりの高水準


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チャート:過去4年間と比較しても、人員削減予定数は2021年以降で単月最多


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年初来の人員削減予定数は前年同期比でほぼ3倍増の55万57人で、2009年以降でみれば過去3番目の高水準だった。30業種のうち。25業種で人員削減予定数は増加した。減少した5業種は、自動車、政府、娯楽・レジャー、資本財、公益となる。

チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「求人件数は減少するように、労働市場はコロナ禍を経て積極的に採用していた熱が冷めつつある」と指摘。その上で「技術の深化とコスト削減のアプローチを踏まえれば、人員削減の増加は驚くべきことではない」と結んだ

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。8月は配送大手のフェデックスのほか、食肉大手のタイソン・フーズ、自動車大手GM、電子タバコのジュールなどで人員削減計画が発表された。なお、前月は1位がテクノロジー、2位がヘルスケア、3位が教育、4位が製薬、5位が金融だった。

1位 倉庫 3万2,123人、前年同月は292人
2位 ヘルスケア 7,688人、前年同月は951人
3位 小売 6,262人、前年同月は1,724人
4位 通信 5,273人、前年同月は0人
5位 食品 3,597人、前年同月は215人

年初来では、以下の通り。前月は1位と2位は変わらず、3位が金融、4位がヘルスケア、5位がサービスだった。

1位 テクノロジー 14万9,452人、前年同月は1万4,408人
2位 小売 5万5,755人、前年同月は8,940人
3位 ヘルスケア 4万8,635、前年同月は2万1,292人
4位 金融 4万3,341人、前年同月は1万3,118人
5位 倉庫 4万2,768人、前年同月は7,689人

採用予定者数は前年同月比49.9%減の7,744人と8カ月連続で減少した、前月比でも6.3%減と、年初来で5回目の減少となった。水準自体は5月を下回り、2016年2月以来で最小だった。

チャート:採用予定者数、過去4年間と比較しても極めて低い


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年初来の採用予定者数は前年同期比82.6%減の13万5,980人で、少なくとも、2016年以降で最低となる。

セクター別では、単月で以下の通り。前月は1位が航空・防衛、2位がヘルスケア、3位がエネルギー、4位が食品、5位が政府だった。

1位 金融 1,915人
2位 エネルギー 1,345人
3位 自動車 1,150人
4位 食品 330人
4位 資本財 314人

▽米7月求人数は前月比で3カ月連続で減少、求人数/失業者数は2021年9月以来の低水準

米7月雇用動態調査によると、求人数は882.7万人と市場予想の946.5万人を下回った。前月の916.5万人(958.2万人から下方修正)に届かず、2021年3月以降で最低に。求人数は27ヵ月連続で失業者数を上回りつつ、その差は再び縮小した。

チャート:求人数は3カ月連続で減少し、2021年3月以来の900万人割れ


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チャート:求人数と失業者数の差は、再び縮小


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求人数の減少ペースが失業者を上回り、求人数は失業者の1.51倍と2021年9月以来の低水準だった。

チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者に対し1.51倍と一段と低下


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採用者数は前月比2.8%減の577.3万人と2カ月連続で減少し、2021年1月以来の低水準だった。

離職者数は548.3万人と前月比2.7%減で、2カ月連続で減少した。こちらも、2021年1月以来の低水準となる。今回、定年や自己都合による自発的離職者数が同6.7%減の354.9万人と2カ月連続で落ち込み、離職者数を押し下げた。なお、自発的な離職者数は、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合がある。逆に、解雇者数は同0.3%増の155.5万人と、小幅ながら2カ月連続で増加した。

チャート:離職者数、7月は2カ月連続で自発的離職者数が減少も解雇者数は増加


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▽米新規失業保険申請件数は3週連続で減少、5週ぶりの低水準

8月26日週までの米新規失業保険申請件数は22.8万件と、市場予想の23.5万件を下回った。前週の23.2万件(23.0万件から上方修正)以下となり、5週ぶりの低水準となる。

8月19日週までの継続受給者数は172.5万人と、前週の169.7万人(170.2万人から下方修正)を超え、米新規失業保険申請件数と反対にゆるやかな増加をたどった。

チャート:米新規失業保険申請件数は低水準で推移、継続受給者数も大幅増を回避


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――その他、オンライン求人広告大手インディードのリアルタイム求人動向は、8月もゆるやかな下向き、2021年5月以来の水準で低迷しています。

チャート:インディードのリアルタイム求人広告動向、2021年5月以来のレベルに落ち込んだ後は小康状態


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肝心の米雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、労働市場のひっ迫を表すかのような堅調なペースを維持してきました。しかし、年次のベンチマーク改定では、2023年3月までの12カ月間に30.6万人、下方修正されています。これまでのNFPが起業・廃業モデルでかさ上げされていたとすれば、2024年2月のベンチマーク改定で再び下方修正される可能性も。こうした状況を踏まえれば、仮に米雇用統計でNFPが上振れしても、年初来で全て下方修正されている事実もあり、割り引いて受け止められてもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年8月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。