若年成人におけるコロナ感染後とワクチン接種後死亡数の比較

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8月24日に厚労省から、令和8年度までに、コロナワクチンの有効性や安全性を研究するためのデータベースを整備できるように準備を進めていることが発表された。

わが国でコロナワクチンの接種が開始されて2年半が経過し、これまでの総接種回数は4億回に達している。それにもかかわらず、3年後を目指してワクチンの有効性や安全性を評価するデータベースの構築を図るというのだ。

3年後と言わずに、一刻も早く、コロナワクチンの有効性や安全性をすでにあるデータで検証する必要がある。現在入手できるデータで、ワクチン接種後の死亡数とコロナによる死亡数を比較できれば、3年後のデータベースの構築まで待つ必要はないだろう。コロナ感染による死亡数よりも、ワクチン接種後の死亡数が多ければ誰もワクチンを打たないだろう。

コロナによる死亡数は、5月9日までは、厚労省が速報として公表していたが、5類への移行にともない日々の公表はされなくなった。人口動態に記載されたコロナ死亡数は、2ヶ月後にはなるが、死亡診断書に基づく数字であることから、速報値よりも信頼性が高い。

ワクチン接種後の死亡者数は、厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出された資料に記載された数字に頼るほかはない。ワクチン接種後の死亡報告事例は、ワクチン接種後の一定期間に観察された有害事象で、死亡との因果関係が実証されているわけではない。

実際、2023年7月28日の時点で、ワクチン接種後の死亡報告事例は2,180件に達するが、このうち、検討部会で、ワクチン接種と因果関係があるとされたのは2例に過ぎない。99.4%を占める2,167件は情報不足により因果関係は評価できないとして判定とされている。さらに、「ワクチン接種後の死亡例が漏れなく報告されているか」という問題もある。

新型コロナワクチン接種後の死亡例は漏れなく報告されているか?
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以上のような制約はあるものの、現状で入手可能なデータとして人口動態に基づくコロナ死亡数と厚生科学審議会の資料に記載されたワクチン接種後の死亡数の比較を20歳から49歳の若年成人について試みた。

図1には20歳から29歳における男女別のコロナによる死亡数とワクチン接種後死亡数との比較を示す。

2021年は、男性ではワクチン死が23人、コロナ死が13人と、ワクチンによる死亡がコロナによる死亡を上回った。女性においても、ワクチン死が7人であったが、コロナによる死亡はわずか2人であった。2022年は、男性ではコロナ死が22人、ワクチン死が7人、女性においてもコロナ死が13人、ワクチン死が2人であった。

図1 20代若年成人におけるコロナ感染後とワクチン接種後の死亡数の比較

図2には、同様に30歳から39歳における男女別のコロナによる死亡数とワクチン接種後死亡数との比較を示す。

2021年は、男性ではコロナ死が48人、ワクチン死が29人であった。女性では、コロナ死が15人、ワクチン死は4人であった。2022年は、男性ではコロナ死が58人、ワクチン死が5人、女性では、コロナ死が27人、ワクチン死が2人であった。

図2 30代若年成人におけるコロナ感染後とワクチン接種後の死亡数の比較

図3には、40歳から49歳における男女別のコロナによる死亡数とワクチン接種後死亡数との比較を示す。

2021年は、男性ではコロナ死が234人、ワクチン死が34人、女性では、コロナ死が46人、ワクチン死は20人であった。2022年は、男性ではコロナ死が133人、ワクチン死が10人、女性では、コロナ死が86人、ワクチン死が6人であった。

図3 30代若年成人におけるコロナ感染後とワクチン接種後の死亡数の比較

コロナ死、ワクチン死ともに男性が女性に比べて多いが、とりわけワクチン死は20代では男性は女性の3.3倍、30代では5.7倍であった。ワクチン接種後死亡の全てがワクチンに起因するわけでもなく、偶発的死亡も多いと考えられる。しかし、2021年の20代、30代の全死亡数では、男性は女性の1.9倍、1.7倍であった。ワクチン死でみられる男女間の差は、偶発的死亡では説明つかない。

コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎は20代、30代の男性に多いことが知られている。20代では心筋炎と診断された6人のうち5人が男性であった。致死性不整脈と報告された10人についても、9人が男性であった。30代でも心筋炎と診断された11人と致死性不整脈と診断された5人の全例が男性であり顕著な男女差がみられた。

若年成人のワクチン接種後死亡数は男性が女性と比べて多い理由として、この年代に心筋炎・心膜炎による死亡が多いことによると考えられる。

さらに、注目すべき所見は、ワクチン接種後死亡事例が2021年と比較して2022年は著減したことである。2021年の20代におけるワクチン接種後死亡事例が30人であったが、2022年には9人に減少、30代においても33人から7人、40代においても54人が16人に減少した。

図4には、ファイザーワクチンの月別接種回数と、心筋炎・心膜炎と致死性不整脈による死亡例の発生との関係を示す。

2021年の総接種回数が1億7千万回、2022年は1億6千万回と変わらないのに、心筋炎・心膜炎の発生は2021年が14例に対し2022年は1例、致死性不整脈の発生も2021年が14例に対して2022年は2例と著減した。

図4 ファイザーワクチンの月別接種回数と、心筋炎・心膜炎と致死性不整脈による死亡例の発生

コロナワクチンは、ロットによって重篤な副反応や死亡報告の頻度に差が見られる。2021年の5月、6月に納入された20ロットあるファイザーワクチンの死亡報告の頻度は0〜0.0024%に分布し、その中央値は0.0011%であった。12ロットの死亡報告の頻度は0.001%以上であった。

一方、2022年に供給された22ロットの死亡報告の頻度は0〜0.0004%に分布し、その中央値は0.0001%と、2021年の5、6月に供給されたロットの1/10以下であった。

2022年の致死的な心筋炎・心膜炎や不整脈の発生が減少したのは、ワクチンの毒性が減少したことが考えられる。また、ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎の発生は、2回接種後に多くブースター接種後には少ないことも関連あるかもしれない。

致死性不整脈による死亡の男女比やワクチン接種からの発症時期は心筋炎・心膜炎による死亡と一致しており、さらに月別発生数の分布も両者は類似している。心筋炎が致死的不整脈を引き起こすことから、今回、死因として致死的不整脈と報告された症例も心筋炎に罹患していたかもしれない。さらに、心筋炎が心不全や突然死の原因となることも知られている。

2年間に発生した若年成人のワクチン接種後死亡例は149人に達し、そのうち上記の心筋炎・心膜炎、致死性不整脈、心不全、突然死の総計は79人で半数を占める。その意味でも、若年成人におけるワクチン接種後の死因における心筋炎・心膜炎の重要性は看過できない。

2021年と2022年の2年間に若年成人におけるワクチン接種後心筋炎の死亡報告は30人であるが、うち18人が剖検されている。剖検所見により病理医が心筋炎・心膜炎と診断したにもかかわらず、厚生科学審議会の副反応検討部会では、情報不足で因果関係が評価できないとしてすべてγ判定とされている。

判定委員のコメントを記す。

ワクチン接種3日後に劇症型心筋炎を発症し死亡した症例で、剖検で左心室に広範な心筋炎の所見を認めている。心筋炎の診断は確定しているが、ウイルス感染に起因する心筋炎の可能性もあり、ワクチンとの因果関係は肯定も否定もできないと考えた。

心筋炎であることは認めるが、心筋炎はウイルス感染で起こることもあるので、ワクチンが原因とは確定できないという主張である。

普通、心筋炎の原因となる上気道炎や胃腸炎のようなウイルス感染症に罹患していれば、ワクチン接種は受けないであろう。また、心筋炎の発症は、多くの場合はワクチン接種後3〜4日以内である。このようにわずかなタイミングで、心筋炎の原因となるようなウイルス感染症に罹患するものだろうか。

最近、米国から心筋炎とワクチン接種との直接的な関係を示唆するバイオマーカーが報告された。

Circulating Spike Protein Detected in Post–COVID-19 mRNA Vaccine Myocarditis

ワクチン接種後19日以内に心筋炎を発症した若年者16人のうち、13人(81%)において、血中から遊離スパイクタンパクが検出された。一方、ワクチンを接種するも心筋炎の症状が見られない場合には、遊離スパイクタンパクは検出されなかった。

ワクチン接種によりスパイクタンパクが産生されるが、スパイクタンパクが心臓周皮細胞の機能不全や内皮細胞の炎症を起こすことが知られており、スパイクタンパクが心筋炎の原因になることは十分考えられる。

今回、報告された30人の心筋炎・心膜炎による死亡例は2人を除いて接種後2週間以内に発症した若年成人であり、米国からの報告に従えば、その80%はワクチンに起因すると考えられる。

厚労省の発表では、今後3年かけて、コロナワクチンの有効性や安全性を研究するためのデータベースを整備するとのことであるが、データベースを整備する最大の目的は、ワクチン接種を継続すべきかの判断根拠を得ることにあると考える。

今回の検討で、20代においては、2021年には、コロナ感染による死亡よりもワクチン接種後死亡数の方が多かったことが判明した。それでも、ワクチン接種を継続していることを考えると、ワクチン接種を中止する基準を前もって決めておくことが必要と思われる。