1. 一般労働者の産業別平均給与
前回は、産業別の労働者数や平均給与について毎月勤労統計調査の数値をご紹介しました。
今回は、産業別に見た労働者の就業形態別平均給与についてご紹介します。
図1が5人以上の事業所規模における、産業別の一般労働者の平均給与です。
全体で見ると1997年から横ばい傾向が続いています。
労働者全体で見た場合に上昇傾向だった製造業や建設業でもやや横ばい傾向が強いようです。
逆に、減少傾向の強かった医療、福祉でも横ばい傾向となっています。
産業間の差もあまり見られませんね。極端に給与水準の低かった宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業などは平均値にかなり近づいています。
比較的賃金の低いパートタイム労働者の、平均給与への影響がかなり大きい事がわかりますね。
2. パートタイム労働者の産業別平均給与
次に、パートタイム労働者の平均給与を眺めてみます。
図2が産業別のパートタイム労働者の平均給与(年平均の現金給与総額)です。
縦軸範囲を一般労働者に合わせていますので、いかにパートタイム労働者の水準が低いかがわかりますね。
もちろん、労働時間そのものが違いますので、低いのは当たり前ですが、時給換算でも大きな差があることが予想されます。
日本は時給で見ると、パートタイム労働者と一般労働者の間には2倍以上の大きな差があります。
パートタイム雇用率の高いオランダやスイスは、ほとんど変わらない水準というデータもありますね。(参考記事: 日本はパートタイムが多い?)
また、パートタイム労働者では産業間の差があまりありません。概ね100~150万円程度の範囲におさまっている状況です。
3. パートタイム労働者の多い産業
最後に、産業別にパートタイム労働者の割合(パートタイム雇用率)を見てみましょう。
図3が産業別のパートタイム雇用率です。
とても象徴的なグラフだと思います。
圧倒的にパートタイム雇用率が高いのが宿泊業、飲食サービス業で80%近くに達します。続いて、卸売業、小売業、生活関連サービス業、娯楽業が40~50%ですね。
これらの産業はパートタイム雇用率自体は高いですが、推移としては横ばい傾向です。
一方で、調査産業計と同期して推移しているのが、医療、福祉、教育、学習支援業、サービス業(他に分類されないもの)です。
ほぼ平均値と同じくらいで推移していて、2000年には20%弱だったのが、2022年には30%以上に達しています。
これらの産業は労働者数も増えている産業でしたね。
つまり、パートタイム労働者ばかりが、これらの産業で増えている事になります。
その他の産業は比較的横ばいが続いていて、低めの水準のようです。
製造業で13%程度、建設業では10%未満ですね。製造業は労働者の多い産業ですが、労働者数は大きく減少しています。
建設業も同様に労働者自体が減少している産業ですね。
4. 日本の就業形態の特徴
今回は、毎月勤労統計調査の結果から、産業別の平均給与とパートタイム雇用率についてご紹介しました。
労働者数が増え、平均給与が下がっている医療、福祉、教育、学習支援業などでは、パートタイム雇用率が大幅に高まっているという特徴があるようです。
一般労働者の平均給与は、どの産業でも横ばいが続いていて、平均値として減少している産業は、パートタイム雇用率の増加が大きく影響している事がわかりました。
そもそも横ばい傾向の時点で停滞が続いている事になるわけですが、そこに低賃金の労働力ばかりを増やしているような実情が見えてきますね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。