ウクライナからの便り:日本は有事の可能性に備えているのか

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筆者と同じくバレンシアに在住している、ウクライナ出身者の知人の女性がいる。知人(ザッナ)の亡くなった夫は、私と貿易関係の同業者で、私の友人でもあった。8月に首都キエフに住んでいる彼女のお孫さんダイアナがバレンシアに2週間程滞在した。

彼女は大学2年生で法学部に籍を置いている。しかし、戦争で授業はオンラインで行われているそうだ。キエフでは毎日爆音で寝ていても歯ぎしりする毎夜だという。食事は手に入る缶詰などあるものを食べているそうだ。冬は室内にいても厚着で寒さを忍んでいたという。

ザッナのお嬢さんはウクライナ政府クブラコフ副首相の政策ブレーンのひとりだ。また娘婿はウクライナ議会の治安を管理している軍事警察のトップ。いわゆるエリート一家である。が、食料などを手に入れるのが大変だという。一度は彼が食事のパンを手に入れるのに半日歩き回ったこともあったという。

この夫妻のお嬢さんダイアナに、バレンシアに滞在していて一番驚いたことは何かと尋ねると、「街が人で溢れていることだ」と答えた。また燦々と輝く太陽の下でバレンシア市内のビーチを満喫し、僅か2週間の滞在であったが、精神的にリラックスできたそうだ。

ザッナはダイアナが帰国するのに一緒に同行した。2か月くらいの予定で彼女の家族の食事などで手助けするのが目的だということだった。その彼女から9月4日に便りがWhatsAppであった。その便りには次のようなことが言及されていた。

キエフに到着した際、市街に使い古した兵器や、破壊された兵器があちらこちらに放置されているそうだ。また、彼女の家族が住んでいる建物にも軍人が多く住んでいるそうだ。住民が兵役に加わったことによるものであろう。一方で、親戚の一人が数か月前から行方不明、知人の中にも重軽傷を負った人たちがいるそうだ。娘さんの仕事仲間の数人が死亡したという。

この写真は筆者の友人ザッナから送られたものである。
UCRANIA, NOTICIAS DE ZANNA, 05-09-2023.

更に、ザッナは米国に感謝しているとも伝えた。米国からの支援がなければウクライナという国はもう消滅していたというのが理由だ。今ではたくさんの国がプーチンの打倒を望んでいる。しかし、それもウクライナの軍人と民間人の犠牲があってのことだ、とも語っている。

筆者が感じるに、今回の戦争でポーランドが果たしている役目は重要だ。これまでウクライナから160万人余りがポーランドに避難したという。そこで職場も見つけている人もいる。ダイアナがバレンシアにワルシャワ経由で来た時、同地で宿泊したホテルのレセプションで働いていた人は避難したウクライナ人だったそうだ。

この戦争は日本にとって遠い出来事のように感じる人が多いであろう。しかし、仮に台湾有事となった時には、沖縄諸島に台湾人が相当避難するはずである。その時、沖縄諸島の住民は熱心に避難民を受け入れることは間違いない。

ところが、筆者が疑問に感じているのは、依存型の外交しかできない日本政府が、中国からの脅威の前にポーランド政府がやっているような対応ができるか疑問に思っている。また日本の国民全体でも台湾人への支援を十分にする意思があるかも筆者には疑問である。

何しろ、平和ボケが極限にまで達して、国を守る意識も薄れている国民だ。その国民が他国のことまで構うか疑問であり、またそうであれば筆者にとってそれは残念で仕方がない。台湾有事は日本にとって将来的には死活問題に繋がることは間違いないと感じているからである。