中国を巡る国際情勢の行方

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中国を巡る状況

現在、中国を巡って、大きくは次の3つの事が取り巻いている。

  1. ウクライナ戦争が影響した西側離れによるBRICS通貨圏形成の動き
  2. 不動産大手「恒大集団」「碧桂園」破綻危機をきっかけとした中国経済の崩壊
  3. 上記2つにも左右される台湾進攻のタイミング

長引くウクライナ戦争は、中露疑似同盟の紐帯を強めるとともに、西側の支援疲れ、米国の求心力低下等を見たインド、サウジアラビア等も含めBRICSの拡大、結束確認に向かっている。

当面は拡大BRICS+グローバルサウスの緩やかな連携で行く風情ではあり、唱えられて来たゴールド(金)等をベースにしたBRICS通貨圏形成は、先月のBRICS首脳会議では実現はまだまだ遠い事が示されたものの、選択肢として各国リーダーの意識に上り始めている。

その一方で、BRICSの盟主たる肝心の中国については、不動産危機が中国経済全体の破綻に引火しないか注視されている。中国の不動産ブーム自体が不健全でありその収束は必要ではあったが、破綻のタイミング、スピード、やり方は拙劣である。またIT産業等への規制も行われており、これらは習近平の経済音痴と、政敵潰し、独裁体制維持目的の複合作用による所が大きい。

更に中国は米国主導で半導体規制を受けており、日本の福島原発処理水への非難キャンペーンは、その意趣返しだと見られ、規制のダメージがそれなりにあるのを窺わせる。

上記2つの相反する事象により、予てから予想されていた中国による台湾進攻の有無と、それが有るとした場合のタイミングは、一層読み辛くなっている。

素朴に考えれば、BRICS通貨圏形成に近付けば近付く程、習近平は軍事侵攻を選択せず熟柿作戦で、台湾を経済、世論工作、情報戦で屈服させようとするだろう。

逆に中国経済の破綻が近付けば、習近平としては台湾軍事侵攻の博打を打つ可能性が高まる。中国が台湾軍事侵攻をした際には、台湾内の半導体工場を破壊するオプションを米軍と台湾政府とで共有しているようであるが、中国艦隊が台湾を包囲し海上封鎖した上で、「米軍が援軍を差し向けなければ在日等の米軍基地を攻撃しない」旨宣言し米側が呑めば話は付き、台湾半導体産業を丸ごと手に入れられる。

米国大統領選の影響

これらに大きく作用するのが、来年2024年の米国大統領選である。バイデン政権のうち、または民主党が大統領選を制し後継政権であれば習近平としては与し易いだろう。中国に対し半導体規制を行い同盟国と対中国軍事演習を重ねているが、本腰は入っていない。

仮に台湾軍事侵攻が起こり戦闘となった場合にも、「台湾と日本に中国との代理戦争をさせた上で、予め中国と握っておいて適当なところで休戦させ台湾を中国に差し出す。それにより軍産複合体にも利益を落とせる」等の仰天シナリオも、中国にプライベートで弱みを握られていると言われるバイデン、もしくはその後継政権なら有り得ない話ではないと筆者は危惧している。

仮にトランプが大統領に返り咲いた場合にも、半分盟友であるイーロン・マスクが「台湾中国自治区化論」を唱えているのに加え、本人も「deal」の天才を自称しているため、台湾を差し出す可能性は残る。

だがトランプは、中国共産党政府と国内の「ディープステート」(筆者は「ディープ互助会」の様なものと捉えているが)が最大の敵であると考えている事からすると、BRICS通貨圏の出現と米国衰退の後押しに繋がる台湾差出しをする事は無いと思われる。

トランプは公言しているように、返り咲いた場合にはウクライナ戦争の停戦を推し進める。そして敵ではないどころか恋人のように考えているプーチンのロシアと連携し、BRICSをばらしてインド、サウジ等を引き込み中国包囲網の完成を目指すだろう。そして返す刀で彼の言う「ディープステート」と中国との紐帯を斬って前者を解体したいのだと筆者には推測される。

民主党政権の場合には、この逆の事が起きると考えてよいだろう。

その他、2024年に掛けては、パンデミック条約の行方、コロナ強毒化変異株の再流行可能性、中東・アフリカでの大規模紛争・クーデター勃発可能性等々も重なり、更なる複雑系となり読めない状況が続く。

さて、こうした中で国内に目を向ければ、日本は今のままの主体性欠如、付和雷同、平和ボケの様では、乱流に翻弄され存亡の淵にまで立たされかねない。覚醒が必要である。