ウクライナ降伏 or 核戦争:ウクライナ戦争という無理ゲーの帰趨

核使用の条件

NATOが直接参戦したら核を使う」

鬩ぎ合うウクライナ戦争に於いてプーチンは予てからこう仄めかしている。現況は、NATO側は武器供与だけでなく、ウクライナ軍の訓練等を一部行っているのに加え、CIAの衛星がウクライナ側にドローン攻撃の標的用データを提供している模様だ。

Ukrainian special forces getting military targets from CIA satellite – Times

プーチンはこれらを基に、条件は既にクリアしていると主張しかねず、その場合「NATOが直接参戦したら核を使う」というのは、プーチン的には「ロシアが負けそうになったら核を使う」という意味になる。

このため価値判断を抜きにして、批判を恐れず粗っぽく言えば、この戦争にウク側の勝利はなく、戦争の構図としては、長引けば長引くほど、ロシアが核使用に踏み切るか、ウクライナが実質降伏してより不利な条件でロシアと停戦するかの、どちらかの顛末に近づいて行くだろう。

ウクライナへの支援については、独仏はじめEU諸国は既に疲弊しているが、米英政権はいまだに意気軒高だ。これに日本が追随している。

人道的見地に加えて、独仏等にとってはルッソフォビア(ロシア恐怖症)、米英にとっては軍産複合体の利益、伝統的なヨーロッパの分割統治戦略、北海原油とシェールガスのマーケット拡大等が、ウクライナ支援の原動力の一部と言えるのかも知れないが、それらは明らかではない。

ほんとうの停戦はいつになるのか ゼレンスキー大統領SNSより

今後のシナリオ

プーチンが戦術核使用に踏み切るのか、踏み切った場合にその後の展開はどうなるか、シナリオは概ね下記の3つだ。

  1. 国際的非難と報復を恐れ、そもそもプーチンは核を使えないだろう
  2. プーチンが核を使えばロシア国内に反乱が起き政権が倒れ、そのままウクライナ側に有利な停戦が締結される
  3. NATOとの核報復合戦が起き、第三次世界大戦に突入する

米英の政権、軍中枢の発言からは、概ね①、最悪でも②を念頭に置いているのが窺われる。しかし、③を現実的なものとして想定しないとすれば、それは正常化バイアスと言える。(中には③も止む無し、若しくはウェルカムというマッドマンもいるかも知れないが)

英国がウクライナに劣化ウラン弾を提供し、プーチンはベラルーシに戦術核を配備する方針を表明する等、事態は奈落に向かっている風情がある。

だが、ここに来てもう1つの選択肢が浮上してきた。サウジ=イラン国交回復の仲介に成功した中国が、ウクライナ戦争の仲介に名乗りを上げている。

今の所、この仲介案は西側からは一顧だにされていないが、第三次世界大戦か、中国の仲介かの究極の選択になった際には、世界の首脳と国民は後者を選ぶだろう。そしてそれは中国の国際的政治力を高め、電脳監視独裁国家による世界覇権の完成を大きく引き寄せる。

筆者は、市場大国の中国が資源食料大国のロシアを属国化し、グローバルサウスを抱え込み、域内共通通貨圏を確立すれば西側は詰むと観ていたが、西側の金融不安も伴いその流れは早まったようだ。

こうして詰将棋のようにつらつら考えて行くにつれ、改めて筆者には、中国を介入させずに一日も早い停戦交渉が行われるべきと思える。

だが今の所その兆しは無い。