日本という「世界最高の楽園」はもうすぐ終わる

赤坂見附のサイゼリヤに行ってみました。グラスワインは税込100円。ワイン3杯とグリルドチキン(写真)などのお料理を4品注文して、会計はわずか1600円。今や新興国よりも安い価格です。

サイゼリヤは極端だとしても、円安によって日本国内の価格優位性が高まっています。

ファストフードのマクドナルドから高級フレンチレストランのロブションまで、グローバルに展開している飲食店の価格を比較してみると、先進国では日本の安さが際立っています。

しかも、日本は安全と清潔という生活のクオリティも極めて高いのが特徴です。

夜中に街を歩いていても危険はないし、都市部であれば公共交通で便利に移動できます。財布を落としても、お金を抜かれることなく翌日に届けられることは珍しくありません。

繁華街にある公衆トイレも清潔で、街自体が綺麗に清掃されています。お刺身やお寿司のような生ものを食べても安心ですし、水道の水だって飲むことができます。

さらに医療も充実しており、健康保険制度によって低負担で高い医療技術を享受することができます。

飲食店はチップを要求されることもないのに、接客は極めて丁寧。職人気質の料理人のこだわりの料理が低コストで提供されています。

四季折々の自然を楽しむこともでき、東京にいても1時間ほどで温泉に出かけてのんびり寛ぐことができます。

住む場所としては日本は「世界最高の楽園」です。

しかし、この楽園は残念ながらもうすぐ終わるのではないかというのが私の予想です。

人口減少による人手不足でサービス業の水準はこれから下がり、人件費の上昇から価格も上昇していくことでしょう。サービス業はなり手が少なくなり、外国人や機械化で代替されていき、味気ないものになっていきます。

円安が更に進めば、外国人にとっては更に割安な観光地となって訪日客が増加し価格が上昇。高級ホテルや人気の高級飲食店は、一般の日本人には手が届かないものになります。

健康保険をはじめとする社会保障も財政赤字によって賄われているものですから、持続性はありません。いずれ、社会保障制度の抜本的改革が必須となり、医療サービスは高コスト化していきます。

財政赤字削減のために公共サービスは質が低下し、街はゴミだらけになり、建物や道路のメンテナンスも充分にできなくなります。

「タコ足」という言葉があります。お腹が空いたタコが、食べるものがなく仕方なく自分の足を食べるという話です。

財政赤字を垂れ流しながら、コストに見合わない社会保障を国民に提供し続ける日本政府。やっぱり足を食べているタコと同じなのかもしれません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。