中小企業の「人事ごっこ」は組織崩壊のきっかけである(横須賀 輝尚)

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会社が危なくなると、必ず社長や組織に変化が現れます。例えば、社長の表情そのもの。例えば組織の運営方法。特に中小企業ともなれば、それはダイレクトにみえてきます。

今回は、そんな潰れそうな会社のシグナルについて、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

人事偏重、会社「ごっこ」が始まるのは危険のシグナル

まずは人事偏重、会社「ごっこ」ということなのですが、これは何かというと経営の本質から離れていってしまっているということ。典型例が、中小企業の経営者の「秘書」ですね。

まあ、男性経営者の中には、一度は若くて美人の秘書を置いておきたいと思う経営者もいるのです。そして、取引先にその美人秘書を見せびらかしたい、自慢したい。

スケジュール調整なんかも自分じゃなくて秘書にやらせたい。でも、ハッキリ言って中小企業の経営者の予定なんて、自分で決めたほうが早いわけです。

でもでも、秘書に何かやらせたい。その結果、一回必ず予定が秘書を通るので、タイムロスが出る。非効率でしかありません。

そもそも秘書というのは、どうも日本では「社長の小間使い」みたいなイメージがあるのですが、本来秘書の役割というのは、「経営者のパフォーマンスを最大化させる存在」であって、ビジネスを理解して、優先順位の高い予定調整を自ら行える存在なのです。

よくドラマや映画で「きみ、次の予定は?」「はい、社長。次の予定は◯◯◯◯社のCEOと会食です」みたいなやりとりがありますが、これは秘書が会社のためにこの会食を入れたほうがいいから判断して予定を入れているということ。

だから、社長が次の予定を知らなくても良いわけです。なので、中小企業で経営者に無駄な秘書がいて、会社ごっこが始まっているというのも、ちょっと危険な兆しといえます。まあ、かわいがっている秘書が社長の愛人だったりすることもありますが……。

それから、潜在的な危険を示すのが「共同経営者」なる立ち位置の人がいる場合。一応、いまの社長が代表。でも、同じくらいの権限を持っている人がいる場合、リーダーシップが割れる場合があります。

「船頭多くして船山に登る」の言葉のとおり、リーダーが多い組織は危険性を孕はらんでいると見ることができます。

社長の「表情」が変わる

これ、そんなことあるの? って思われるかもしれませんが、これは実際にあります。税理士や社会保険労務士など、定期的に社長と顔を合わせる機会がある士業はこれによく気付きます。

本当に、会社がヤバくなると、社長の表情って変わるんです。好調なときは笑顔ですからね。悪いほうに向かっていると表情も悪いほうに向かいます。これは人それぞれなのですが、一番多いのが「顔が浅黒くなる」です。

なんでしょうね、 血流が悪くなるのでしょうか……もしくは、「血の気が引いたような白い顔になる」という人もいますが、圧倒的に「黒くなる」が多いのです。

それは表情が暗くなるってこともあるのですが、要は違和感ですね。「これまで社長ってこんな表情していたっけ?」「社長って、こんなこと言う人だっけ?」みたいな違和感を感じたら、それは変化の証拠。

とても抽象的で申し訳ないんですが、やはり社長は業績に応じて表情を変えていきます。稀にポーカーフェイスの社長もいますが、そこは人間。表情、顔って変わるんです。

例えば、政治家なんかわかりやすいですよね。時の首相の就任時と退任時の表情、ネットで検索して比較してみてください。ぜんっぜん違いますから。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年10月3日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。