1860万人が貧困者のアルゼンチン:日本と共通している点

アルゼンチンの貧困者数はウルグアイの6倍

今年9月の時点でアルゼンチンの貧困者は1860万人と報じられた。貧困率は40.1%。それは隣国ウルグアイの全人口の6倍に匹敵する貧困者の多さである。この貧困者の中で絶対的貧困者は173万人。これは異常事態である。(9月28日付「エル・パイス」から引用)。

12歳から17歳の青少年の貧困率は59%。チャカオ州レシステンシア市の密集地区グラン・レシステンシアでの貧困率は60.3%、エントゥレ・リオ州のコンコルディア市だと58.3%という非常に厳しい社会となっている。この2州の絶対的貧困者となると前者18.8%、後者18.1%という悲惨な状況にある。(9月28日付「ラ・ナシオン」から引用)。

この4年間のインフレは610%

貧困層がこれから減少する可能性は全くない。何しろ、インフレが今も毎週上昇を続け、この先もおさまる様相はない。

現大統領アルベルト・フェルナンデス氏がこの4年近くの政権下で8月までの累積インフレは610%を記録している。今も毎日のように対ドルのペソは下落を続け物価の上昇を煽っている。今年のインフレは当初の予測を大幅に上回り200%近くまで上昇すると推測されている。だから、貧困者にとって日々の食料を購入できる品数も激減している。

今年上半期の食品の物価上昇率は55.6%。給与は47%上がっただけである。非正規社員の場合は41%の昇給となっている。だから、給与が物価の上昇率に追いついて行けないという状態だ。

10人の内7人が外国に移住を希望

2019年に前大統領マウリシオ・マクリ氏が政権を去る時に、現大統領のアルベルト・フェルナンデス氏はマクリ氏の政権運営を批判し、貧困層を減らすと約束した。ところが、フェルナンデス氏がこの12月に任期満了で政権を終える前の9月時点で貧困者は減るどころか逆に5%増加している。

歴代大統領の中で最悪の大統領だと評価されているアルベルト・フェルナンデス氏は10月の大統領選挙では二期目を目指すことを彼の党の正義党が辞退させたほどである。

このような社会現象を前に、10人の内の7人が出国を希望している。実際ブラジル、チリ、スペインにはアルゼンチンからの移民者が増えている。

また、皮肉にも隣国のウルグアイ、チリ、ブラジルからアルゼンチンに買い物が目的で入国できる道路は渋滞になることがよくある。例えば、ウルグアイだと100ドルでアルゼンチンでは300ドルに相当する品物が購入できるというのだ。

日本もアルゼンチンのようにならないという保障はない

20世紀初頭のアルゼンチンは世界の経済トップ国の一つであった。それが100年余りで、こうまで衰退している姿は悲惨である。それほど遠くない将来日本がアルゼンチンと同じような道を歩まないことを望んでいる。何しろ、今の日本の経済は長期の停滞、企業の飛躍もなく、少子高齢化に対し対策をがあっても実行しようとしない日本の政治に失望しているからである。

その一方で、この2国が共通しているのは、財政赤字を削減する意向はなく、それを補填するのに紙幣を発行して解決しようとしている。そして、長期間同じ政党が政権を担い政治家に有能な人材がいないことだ。