キューバ革命と社会主義の末路:昨年30万人が国を離れたキューバ

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キューバ革命の末路

もうキューバに未来はないとして昨年は30万人が出国した。彼らの多くは若者だ。首都ハバナにある大学のテクノロジー学部の教授は、授業に出席する学生の数がこの2年間で30%減少したことを指摘している。同様に、首都の著名レストランでもそこで働いてくれる人を頻繁に募らねばならないという。

それが意味するのは、人口1110万人のキューバから毎年市民が国を離れているということだ。特に、それが若者の間で顕著である。その一方で60歳以上の高齢者が人口に占める割合が増加している、。それが現在21%を構成しているが、2030年には30%になると予測されている。(2022年11月13日付け「エル・パイス」から引用)。

生活するに必要なすべての物が不足

発展する余地のないことを示す現象として以下のようなことが指摘されている。国の電力消費の20%に匹敵する700メガワットが10月には不足することをビセンテ・デ・レビー電力・鉱山相が指摘した。(9月29日付「エル・パイス」から引用)。

即ち、頻繁に停電が発生するということだ。同様にディーゼル燃料の不足で運送サービスも悪化している。コーヒー、ミルク、豚肉などすべての食料が不足している。輸入したくても外貨が不足していて輸入できない。

生産面においても後退が目立っている。その一番としてサトウキビによる砂糖の生産が80年代には150か所の生産工場から年間で800万トンが生産されていたのが、現在は生産工場は36か所に減少し、昨年の生産量は僅か48万トン。そして今年は23か所の工場で45万トンが生産される予定であったのが、その41%しか生産されないであろうと予測されているという。(昨年11月13日付同紙から引用)。

毎日の食事ができない人が増加

キューバの人権高等弁務官事務所(oacdh)によると、88%のキューバ人は一日に1.9ドル以下で生活しているという。その内の48%の人は一日に決まった食事を取ることを止めたそうだ(9月29日付同紙から引用)。

物価の上昇を示すものとして、キューバで心臓専門医の給料は6000ペソ(250ドル)。それに対して450グラムのトマトは13ドル、1カートンのたまご67ドル、4.5キロの鶏肉105ドル、植物油29ドルといった具合であるから、一般の市民にとって容易には手の届かない価格なのである。

だから、米国などに移民したキューバ人が国にいる家族に仕送りする送金が、キューバ政府にとっても重要な外貨獲得源となっている。何しろ、キューバでその受け取りは政府の公的企業ガエサ(gaesa)が一括して担っているからである。これによってガエサは手数料を稼ぐことができる。ガエサが入金する年間総額はGDPのおよそ3%に相当するという。

しかし、この総額はパンデミックの前の2019年と比較して現在まで凡そ45%減少しているという。例えば2019年の入金総額は37億1600万ドル。2020年は23億4800万ドルと現在まで入金総額が減少している。(9月28日付「ABC」から引用)。しかし、1993年から現在までの外国からの仕送り総額は522億5000万ドルという多額に達している。

キューバの社会主義体制が国の発展を阻んでいる

キューバの経済成長には民間事業の発展しか救いの道はないと政府も知っている。ところが、政府が経済成長に干渉しようとする社会主義体制のシステムから離れることができないのが現状だ。

それを裏付けるかのように、アレハンドロ・ヒル経済相は国民を前にして、「政府を信頼し、唯一の解決への道は改革と社会主義だ」と時代錯誤なことを述べているのである。

また同時にキューバの経済が置かれている現状は米国の制裁が理由だとも表明して政府の責任を回避しようとしている。

唯一キューバを悲惨な状態から救い出すには現在のキューバの政治体制を変えるしかないのであるが、現在もカストロ体制化の現状では不可能であろう。