インド人は日本に向くか?:日本がその優秀な人材を活用するには

ニュースで報じられているようにカナダとインドの間がぎくしゃくしていますが、バンクーバー郊外のサレー市を中心にバンクーバーのインド系は中華系と共に巨大なコミュニティを形成しており、ビジネスやプライベートでもインド系の方との接点は欠かせないものです。

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タクシードライバーとスーパーのレジ打ちにインド系が多いとされている理由は算数の教育でいわゆる九九が15x15から20x20ぐらいまでやる場合もあり、暗算能力が高く、お釣りが生じるビジネスに向いているからとされます。九九の話はともかく、日本人とそのあたりは似ている部分ともいえましょう。

一方、海外に移住できるようなインド人はそれなりに財力がある人が主流で、かつてホテルの仕事をしていた時、年に1度ぐらいはインド人の結婚式の大パーティーに出くわしました。2-3日の間、数百人の招待客を招き、ほぼ夜を徹してどんちゃん騒ぎをやるのはホテル側にはやや悩みの種でしたが、落とす金額がすさまじく大きく、こんなド派手な結婚式、名古屋の人も腰を抜かすだろうな、と思ったこともしばしばです。

一方で我々が今やっている教科書ビジネスに関してあるカレッジではインド人学生が非常に多く、日本語の教科書がほとんど売れません。先生に「なぜでしょうか?」と聞けば「インド人ですから廻してコピーしているのですよ」と。この「インド人ですから」という言葉にどうも私は引っかかるわけです。「ずるい」「要領がいい」「適当」のどれか、あるいはもしかしたら全部当てはまるのかもしれません。

インドといえば自動車のスズキが開拓者的な存在ですが、個人的にもよくあそこまで基盤を作ったものだと感心しています。その点、鈴木修氏の功績は多大であったと思いますが、日本企業には世界一の人口を誇る同国とのビジネス関係、また日印外交と将来への期待度に対して日本が十分に影響力を持っているとは言えません。

むしろアメリカの巨大テック企業、グーグル、マイクロソフト、IBM、アドビ、マスターカードのみならず、かつてはソフトバンクや旧ツィッターの社長や幹部もインド人でした。20年以上前にアメリカはインドをコールセンターにしたり、インドの理系の学生をテック企業が積極採用してインドと欧米の関係強化が進み、多くのインド人が欧米の大学に進み、そのまま就職して高いポジションを得るというサクセスストーリーが続出しています。

では日本はそのような優秀な人材を活用できないのでしょうか?個人的には直接的には相当ハードルが高いと考えています。

インド人を語るにはその祖先を見ないわけにはいきません。人類学的分類で「インドヨーロッパ語族」という言葉を聞いたことある方もいらっしゃると思います。紀元前2000年頃、中央アジア地区にいたアーリア人は温暖な気候を求め、西に動いたグループと南に下がったグループに分かれました。西に動いたのが欧州人の原型、南が今のインド人の原型とされ、人類学的には同種ということになっています。また古代中国と日本が漢字文化を通した関係があったように欧州とインドもまた言語学的に似た部分が多いとされます。

インド人はどこを向いているか、といえばほぼ確実に西なのです。東ではありません。もちろん、出自的な話もあるし、長い歴史の中でインドと欧州との結びつきもあるでしょう。英国とインドとの歴史的関係も大きく影響しています。インド人は欧米人ととっつきやすい、これがナチュラルな発想に見えます。

アジアに関してみれば仏教という背景はあるものの中国とは国境紛争が絶えません。インドはもともとは英国領インド帝国として現在のパキスタンとバングラディッシュを含む広大な国家でした。が、大戦後、ヒンドゥ教のインドとイスラム教のパキスタン、バングラディッシュが独立、インドとパキスタンとは戦争をしてきた関係だし、バングラはアジア最貧国の一つなのにインドが積極的支援する気配はありません。スリランカが現在のような経済破綻をしてもやはり積極的ではないのはインドとの微妙な距離感を全ての隣国が持ち続けているというのが実情です。

インド人は大きな夢を描き、金持ちになることが大好きなのです。日本は平等主義で社会で大成功することは少ないため、大成するチャンスを求めて欧米に向かうというのがインド人の基本行動だとみています。

よって個人的にはインド人を日本に振り向かせるのは鈴木修氏のような情熱があればともかく、一般企業が日本的ビジネスの背景で仲良くやりましょう、とやればまず無理でしょう。ODAなどで貢献してもそのありがたみはどこまで理解してももらえるかわからないと思います。むしろ、インドには遠慮せずインド人から稼いでやる、ぐらいのスタンスで臨んでよいかと思います。

日本人とインド人の気質もだいぶ違いますのでインド旅行に行った人が良かった、インドと仕事をしたいというレベルとは全く違うもので日本人はそこを間違えないようにしないといけないでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月12日の記事より転載させていただきました。