旧統一教会問題:オウム真理教への規制は参考にならない

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解散命令発令後、任意団体化した旧統一教会の活動を防止する立法が一部弁護士によって提唱されている。

上記のように旧オウム真理教(現アレフ・山田らの集団・ひかりの輪)を対象に制定された団体規制法の例を挙げているが、ミスリードと言わざるを得ない。

団体規制法は「宗教団体としてオウム」ではなく「テロ団体としてオウム」を規制している。これを混同している人間があまりにも多い。

団体規制法は「テロ団体としてオウム」を「例えばサリンを使用するなどして、無差別大量殺人行為を行った団体」と表現し、「その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置」を定めた、要するに違法行為の防止のための措置法である。

無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律

団体規制法が再発防止を目指す「無差別大量殺人行為」とは例示としてサリンが挙げられたように毒ガスのような殺傷能力が高い武器でしか実現できず、また、このような武器の製造・保管は大規模な施設を要する。

言うまでもなく個人でこのような施設を保有することは困難であり、アレフ等の統制から外れた信者の個人的活動を同法は想定していない。

団体規制法に基づき公安調査庁職員はアレフ等の所管施設に立ち入り調査を実施しているが、治安系公務員が所管施設を定期的に出入りすればアレフ等は組織として「無差別大量殺人行為」を実現するための殺傷能力が高い武器の製造・所持が不可能になる。

どんなに故麻原彰晃への帰依が深くでも、どんなに過去の旧オウム真理教への捜査が教団に向けられた陰謀だと歴史修正しても所管施設を治安系公務員が出入りする環境ならば、サリンを再製造しようとしてすぐに通報、逮捕されるだけだろう。

団体規制法は重大な違法行為の防止を目的としている事実は強調されるべきだ。

これを踏まえると団体規制法を例に旧統一教会への規制立法を唱えることはおかしいと容易に気づく。何故なら統一教会問題で批判される高額献金・霊感商法は全て合法行為だからだ。

合法行為の防止を目的に規制立法を制定せよとは尋常なことではない。

仮に旧オウム真理教と同じように公安調査庁職員が旧統一教会所管施設に立ち入り調査したところで意味がない。

立ち入り調査に入った施設内で旧統一教会信者による高額献金・霊感商法が実施されていても公安調査庁職員は何もできない。

公務員に合法行為を止める権限はない。極端な話、信者達が公安調査庁職員の目の前で高額献金・霊感商法のやり取りがあったとしても、それを止める権限は職員にはない。合法行為なのだから当たり前だろう。

公安調査庁職員は旧統一教会信者から「なんの権限があって献金を止めようとするのか」と言われたら反論できないはずである。

公安調査庁はかつて旧統一教会を同庁発刊「内外情勢の回顧と展望」において「特異集団」と記載したが、理由は不明だがそれは削除された。

削除理由として安倍元首相による圧力であるといった陰謀論が流されたが、おそらく削除の理由は公安調査庁が監視しても何もできないからだろう。掲載した理由も自己PR程度のことと推察され、積極的な理由はないと思われる。

話を戻すが高額献金・霊感商法が問題でなんらかの規制が必要だというならば、その犯罪化を主張すべきである。

団体規制法のように治安系公務員よる監視で規制せよと主張は、監視の負の面である「威圧」「威嚇」を期待していると言わざるを得ない。

昨年来の旧統一教会報道を見る限り、仮に規制立法が制定されれば30~40年以上前の出来事を根拠に任意団体化した旧統一教会が官憲の規制対象になる可能性が高い。

2世信者は自分が生まれる前の出来事を根拠に公安調査庁職員や警察官の「威圧」「威嚇」の対象になる。もちろん、これは許されない人権侵害だ。国家による差別そのものである。

任意団体化した旧統一教会を規制する立法は宗教弾圧そのものであり、これに筆者は強く反対し、筆を置きたい。